ワーク・ライフ・バランスで必要不可欠なこと|採用、育成・研修、労務・人事に関する情報ならHRプロ

人事にプロのサポートを―新卒採用、中途採用、人材育成、研修、人材マネジメント、労務、人事システム、適性検査ならHRプロ

  • 第3回HRテクノロジー大賞<締切2018.6.14>

ワーク・ライフ・バランスで必要不可欠なこと

HRプロ編集部
2018/01/24

「ワーク・ライフ・バランス」という言葉が世に出て久しい。最近は、働き方改革大合唱の中で再び脚光を浴びている。ただ、心地よい言葉の響きとは裏腹に、負の側面も目立つようになってきた。これは、ワーク・ライフ・バランスそのものが悪いというより、その捉え方や運用に欠落している部分があることに起因しているように思えてならない。

ワーク・ライフ・バランスが成立するための前提条件

内閣府によると、ワーク・ライフ・バランスとは「国民一人ひとりがやりがいや充実感を持ちながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる」ことと定義されている。もう少し簡単に言えば、「仕事と家庭生活の調和で得られる好循環」ということになろうか。あるいは、「仕事と家庭生活双方の充実感・達成感によるシナジーの獲得」と言えるかも知れない。

しかしながら、この着地点に至るプロセスがほとんど議論されないため、現状を本質的に変えることなく「仕事の定時退社」「家事の平等な分担」に取り組んでいれば、自然とワーク・ライフ・バランスが成立するかのような誤解を生んでいる。これでは、昨今の「イクメン病」や「マタニティ・ブルー」といった現象が頻発するのも当然だろう。

具体的な例で考えてみればわかりやすい。

従前の「夫は外で働き、妻は専業主婦の世帯」では、妻が家事労働をほぼ100%担っていた結果、夫が会社での長時間労働に耐えることができた。夫は家事をしなくて良い分、夜遅くまで働くことができる。仮に朝9時から21時まで仕事をしたとすれば、11時間分の労働力を社会に提供したこととなる(休憩1時間分を除く)。妻の家事労働が6時間だとすれば、世帯としての合計労働時間は17時間だ。

しかし、昨今の経済低成長下での典型的な「夫婦共働き世帯」の場合、夫婦の労働時間は各々8時間(実際はもっと多いだろう)、それに相変わらずの家事労働6時間が加わる。すると、世帯の合計労働時間は22時間にもなる。

「夫は外で働き、妻は専業主婦の世帯」並みの合計労働時間とするためには、夫の労働時間8時間、妻の労働時間5時間(育児介護休業法に基づく短時間勤務及び労働基準法に基づく育児時間を使った場合)、家事労働時間4時間とする必要がある。

これには、夫の労働時間の短縮(定時退社)と家事労働時間の短縮が含まれているから、双方の労働生産性が向上しなければ、「夫は外で働き、妻は専業主婦の世帯」の労働レベルには比肩しないことになってしまう。つまり、ワーク・ライフ・バランスが成立しないのだ。

ワーク・ライフ・バランスの前提条件を構築するヒント

まず、夫が労働時間を短縮し定時に退社できるようにするためには、概ね10〜20%は労働生産性を向上させなければならない。果たして、このミッションを労働者個人で達成できるだろうか? 一般的には難しいだろう。これには会社総体として取り組まなければならない。

一つの方法として考えられるのは、「労働時間の徹底管理」だ。ここでいう労働時間の管理とは、社員を定時に帰すという形式的な管理ではなく、業務の廃止・見直し・再配分等を含んだ意味での管理である。ワーク・ライフ・バランスの効果を求めるには、各人が担っている業務が毎日完結し、やり切り感で充足されなければならない。決して中途半端な毎日にしないことが鉄則だ。そのような意味で、会社及び管理職層は、社員の定時退社を無目的に急ぐことだけは慎まなければならない。

次に家事労働についてだが、これにはドラスティックな改善が必要となる。キーワードは、「手抜き」と「アウトソース」だ。毎日の家事労働を、時間をかけて丁寧にやっていては日が暮れてしまう。比較的簡単に導入できる決めごととしては、例えば、食事の準備には火を使わない、毎日洗濯するのは子どもの分だけ、掃除は2〜3週間に1回、などなど。夫婦間で話し合った「手抜き」家事を共有価値化していくことが肝要である。さらに、経済的余裕の範囲内で家事をアウトソース化していくことも有用だろう。

カリスマ専業主婦の「完璧で丁寧な家事」などを真似ようものなら、たちどころに破綻してしまうに違いない。そうならないためには、夫婦が自分たちのワーク・ライフ・バランスをカスタマイズしていくことが重要である。特に、家事労働の役割分担にあたっては、何も考えずに半々にするなどと、杓子定規な考え方をしてはならない。

例えば、各々の仕事の負担の軽重に応じた役割分担とする。分担にあたっては各々の得手・不得手を考慮し、かつ担った役割は完全に当人に任せる、といったマネジメントが絶対に必要である。加えて、日頃から密なコミュニケーションにより、夫婦・家族としてのライフプランを共有しておくことも必要十分条件となろう。

まとめ

以上のことから、ワーク・ライフ・バランスの効果を最大化するために必要なことは、会社サイドからの労働生産性向上対策、及び家庭サイドからの家事労働効率化対策ということになる。もちろん労働生産性向上を図れば、それは雇用の減少に直結してしまうから、潜在需要の開拓と併せて行われなければならない。同時にまた、こうした家事労働効率化対策を進めれば、いわゆる「丁寧な暮らし」は、夢物語で終わってしまうことも覚悟しておかなければならない。
株式会社WiseBrainsConsultant&アソシエイツ
社会保険労務士・CFP(R) 大曲義典

プロフィール

HRプロ編集部

「採用」「教育・研修」「労務」「人事戦略」など、人事がイマ知りたい情報をご提供します。 押さえておきたい基本知識から、最先端のニュース関連情報、対談・インタビューやお役立ち情報・セミナーレポートまで、HRプロならではの視点と情報量でお届け。

関連リンク

  • 「マインドフルネス」を新入社員向け研修で実践〜リプトン ポジティブアクション

    ユニリーバ・ジャパンの紅茶ブランド「リプトン」は、2018年4月16日、株式会社ガイアックス、株式会社モバイルファクトリー、株式会社オールアバウトの3社が合同で実施する新人研修の一環として、仕事の集中力を高める「マインドフルネス」のセミナーを開催。この合同新人研修は、次世代リーダーの育成を図る複数のベンチャー企業が、2012年から実施しているものだ。一方、リプトンは、紅茶を通じて前向きに頑張る人を応援する「リプトン ポジティブアクション」を2017年から展開。3社の合同新人研修の趣旨に賛同し、セミナーを開催する運びとなった。

  • 副業と残業代・通勤災害の関係

    「副業解禁で生活はどう変わる?」「複業を解禁しなければ人も企業も成長しない」「副業から始める起業のすすめ」…このように巷では、“副業“をキーワードとしたニュースで溢れかえっている。これまで副業は、本業に集中できない等のネガティブな部分が強調されがちであったが、昨今では、副業によって新しい気づきがある等、ポジティブに捉えられているのではないか。終身雇用制度が崩れかけている(すでに崩れているかもしれないが)現在、副業を含め、働き方を自分自身で選択していく時代になったのではないだろうか。ここで、副業(複数の会社で雇用契約を結ぶ場合)の労働法の適用はどのようになるのか、よく問題になりうる「労働時間」と「通勤災害」について整理する。

  • 職場作りのヒントは法律にあり?安衛則のユニーク規定あれこれ

    社長「新年度にあたり、職場の大掃除を実施する!新人を気持ち良く迎えよう!」 社員A「はい!(納期が近いんですけど…)」 社員B「いいですね!(やれやれ、また社長の思いつきが始まった…)」 社員C「やりましょう!(掃除なんて仕事じゃないよな…) 「社内清掃」と聞くと、皆さんはどのような印象を持たれるだろうか。自発的にするものだろうか。それとも仕事の一部だろうか。後述するが、実は、社内清掃の実施は労働安全衛生規則という法律上の義務とされている。この労働安全衛生規則(以下、安衛則)では、この他にも、職場に関する意外な義務が色々と定められており、興味深い法律の一つといえる。今回は、そのうちのいくつかを紹介したい。

  • 全国で一斉にテレワークを実施する「テレワーク・デイズ」が 今年も始まる

    2018年4月20日、昨年に引き続き総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、内閣官房、内閣府、及び東京都関係団体が連携して展開している、働き方改革の国民運動「テレワーク・デイズ」の参加企業・団体の募集が始まった。本年度のテレワーク・デイズは7月23日(月)〜7月27日(金)の間に実施され、参加企業・団体は7月24日(火)を含む計2日間以上で一斉にテレワークを行う。

  • 経済産業省、理工系人材需要状況に関する調査結果を発表

    経済産業省は、2018年4月20日に理工系人材需要状況についての調査結果を発表した。この結果からわかった「5年後、技術者が不足すると予想される分野」に対する各企業の採用動向についての最新情報と傾向は次の通り。

  • 大学生低学年のキャリア意識調査 8割がインターンシップ経験を希望

    2018年3月、株式会社マイナビは、「マイナビ 大学生低学年のキャリア意識調査」の結果を発表した。同調査は、2018年2月14日〜2月21日、大学1、2年生の男女1,059名を対象に実施されたもの。調査結果からは、大学生低学年のキャリア観に影響を与えているものや、学生が求める企業説明会・インターンシップの在り方などが浮かび上がった。同結果を見ながら、今後の採用活動の在り方について考える。