企業側からお客様の気持ちへの共感や心情を察した言葉がないからこそ、他人に共有してもらいたいという気持ちが生まれ、ネットやSNSへの書込みへとつながっていくのであろう。会社経営のパフォーマンスだけが重視され、お客様の心情理解を欠き、お客様視点のクオリティが蔑ろにされている状態では長期繁栄は難しい。だからこそ、対話を和訳して、お客様への共感と心情理解を示すことが不可欠である。これは、社員に対しても同様である。
「コミュニケーション」とは人間性そのものを相手にすること

お客様は「神様」ではなく、「素人様」なのである

素人だからこそ、本当に心からその商品やサービスが好きで、絶対の自信でお勧めしてもらいたい、という本物のコミュニケーションを求めているのである。また、お客様の不安を聞き出し、その不安を払拭する会話が必要にもなってくるのである。しかし、不安を聞き出すことは、ハードルが高い。お客様に「どんなことが不安でしょうか?」とストレートかつ素直に聞いてみる価値はあるが、唐突感が拭えない。やはり、世間話を通じて、質問を投げかけたり、話に耳を傾けたり、共感したりを繰り返すプチインタビュアーになってみるのが近道であろう。なぜなら、「不安」⇒「私の話を分かってくれたという安心」へと心理的変化が生じてくるからである。そうすると、
・そう言えば、○○サービスについても知りたいのですが、
・併せて、○○の資料もほしい
・実は、これも確認したい
など、ホンネの部分に迫ることができるわけである。
小さいホンネかもしれないが、積み重ねによって大きなホンネとなり、お客様満足へ直結するサービスの提供につながってくるのである。

また、プチインタビュアーになると、心理学でいう「返報性の原理」が働く。「不安解消できた」⇒「お返ししよう」⇒「商品買おう」・「サービスを使おう」とお客様の心理が変化するのである。義理堅い日本人の特徴でもある。短時間ですぐ結果が出るわけではないが、お客様の心理は必ずプラスへ変化してくる。
相手の話、一言一句をお客様は気にしているのである。なぜなら、本当に効果があるか、価格に見合っているか、他にも良いものあるのではと「不安」を抱えていらっしゃるからである。そして、その不安を少しでも速く、解消したいと考えているのである。

不当要求者から社員を守ることが、顧客満足につながる。

「コミュニケーション」の観点から、お客様満足を達成する上で避けて通れないのが、不当要求者への対応である。これはクレームと混同される場合があるが、全く違う。クレームは会社にとって改善のきっかけになる財産である。しかし、不当要求は違う。不当な金品を暗に要求してくる、やり場のない不満やストレスをもつ「輩」に無防備なまま不用意な言葉を発すると、相手の思うつぼになり、問題を大きくしかねないのである。

不当要求者の餌食になる人は大抵が真面目で、誠実で組織への忠誠心も高い、優良社員だったりもする。だからこそ、いたずらに不要なダメージを社員が受けないように守り、お客様へベストなサービスを提供できるようにしておく必要がある。つまり、不当要求者への対応をしっかり行うことで働く社員を守るのである。なぜなら、ES(社員満足)を高めることで、優良顧客へより良いサービスを提供し、増収増益という流れが生まれるからだ。
一方、不当要求やクレーム対応は多くの時間もかけられず、「待ったなし」の判断が求められる。では、時間をかけず、適切に判断するには、どうすればいいのだろうか?過去の事例を追体験しておき、直観的な判断力を磨くことである。温故知新、歴史から学ぶとも言える。まったく同じ事例が起きることはないが、似ている事例はどこでも発生する。歴史は繰り返すものだ。

欲に対する人の本性は今も昔もさして変わらない。人間性そのものを相手にするのがクレーム対応であり、サービス業である。それは、士業も変わらないだろう。


アーネスト・ハート
社会保険労務士 竹内 元宏

この記事にリアクションをお願いします!