平成27年12月1日より、労働安全衛生法の一部を改正する法律が施行され、その中で企業には従業員に対してストレスチェックの実施が義務付けられることとなった。ストレスチェックを実際に導入したものの、なかなか社員が受けてくれないというのはよく聞く話である。私は、法改正でストレスチェックが義務化される前からストレスチェックの導入に携わってきたが、ストレスチェックの受検率を向上させるにはいくつかのポイントがあると感じている。それらを5つ、あげてみる。
【経営者向け】ご存知でしたか? マイナンバーの次はストレスチェックです。Vol.3

ストレスチェック受検率アップのポイント

①プライバシー保護がきちんと担保されていること
個人のストレス状況というのは、高度なプライバシーであまり会社に知られたくないという人が多く存在する。自身の状態が悪いことを会社に知られてしまうと、今の仕事から外されたり、なにか不利益な取り扱いをされるのではないかと心配することが多くあるからだ。そのような人でも受検してもらうにはきちんとプライバシーが確保されていることが大切である。また、「会社は同意なく結果を知ることができない」ということや、「不利益な取り合い使いをしない」ということをきちんと伝えておくことも大切である。その意味では、ストレスチェック導入に当たって、衛生委員会の審議できちんと労使でプライバシーについてはよく議論しておくことが大切だ。今回の法改正でもプライバシー確保はかなり厳格に求められている要件となっているため、ストレスチェック実施に当たって必須事項と言えるであろう。

②従業員と使用者との信頼関係がきちんとあること

いくらプライバシーは大丈夫。不利益な取り扱いはしません、と表明していても最終的にこの信頼関係がないとなかなか難しいと感じている。信頼関係はすぐに形成できるものではないので難しいが、ここがすべての基本であると考える。


③ストレスチェックが何か特別なことではなく、当然のように定着していること

定期的にストレスチェックを実施していると、そのうちストレスチェックが何か特別なものではなく、当然のものとして定着してくる。このようになるまで繰り返し、繰り返しストレスチェックを実施していくことが大切である。多くの企業では、1回目のストレスチェックよりも2回目、3回目以降のストレスチェックの方が受検率が高くなっている(逆に低くなっている場合は何らかの問題が発生しているので、対応が必要)。繰り返し当たり前のものとして実施し続けるというのが案外大切なポイントとなる。


④ストレスチェック後の施策(相談窓口や面接等)がきちんと周知され理解されていること

ストレスチェックは単に実施して終わりということではなく、きちんとその後の施策とリンクさせることが大切ある。そのためにきちんと自身のストレスチェックの結果が悪かったときに気軽に相談できる窓口を設置したり、ストレスチェックの結果の読み取り方研修を実施したりすることが大切である。自分自身のストレスが高いと気付いても、それでおしまいでは何の意味もないのである。要はストレスチェックをやりっぱなしにしないことが大切なのである。


⑤事業主が一貫して社員の健康に気を付けている、ということを表明している

②の信頼関係と近いのだが、事業主がきちんと社員の健康問題について考えている会社ではストレスチェックの受検率が高い。例えば「安全なくして経営なし」と社員の安全を社是にしている会社では、メンタルヘルス対策に対しても労使ともに真摯に取り組んでおり効果も高い。普段から事業主の考えを表明しておくことが大切で、一貫性がある取り組みであることを伝える努力が必要である。

以上が5つのポイントとなる。しかしながら目的がストレスチェックの受検率の向上だけになってしまうとまた目的と手段が入れ替わってしまう。ストレスチェックはやるだけでは、何も会社は変わらない。あくまでもメンタルヘルス対策の、あるいは人が辞めない生産性の高い職場づくりの第一歩として導入するという考え方が大切である。

今回もストレスチェック制度についてお伝えした。新しい法改正ですので理解の一助になれば幸いである。

Office CPSR(オフィス シーピーエスアール)臨床心理士・社労士事務所 植田健太

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