連合総研が、2013年10月、首都圏ならびに関西圏の民間企業に勤める20~64歳の2,000人に対して行ったアンケート調査(第26回勤労者の仕事の暮らしに関するアンケート調査)で、自分の勤め先が「ブラック企業」にあたると思うと回答した人が17.2%という結果があった。
20代の4人に1人が「ブラック企業」に勤務と認識

残業時間別「ブラック企業」の認識率

 この割合は若い世代ほど高く、20代では23.5%、ほぼ4人に1人が勤め先を「ブラック企業」と認識しているという。厚生労働省が、今年9月から、若者の「使い捨て」が疑われる企業等への取組を強化し、ブラック企業への取り締まり開始というニュースになったが、この調査からも、いわゆるブラック企業に勤めている若者が多い可能性があることが伺える。

 この回答を労働時間別に見ると、1か月の所定外労働時間が60時間以上の人の4割以上が自分の勤め先はブラック企業にあたると思うと回答しており、自社をブラック企業だと思う人の割合が急激に高くなっている。
 また、過去6か月間に長時間労働で体調を崩した経験があるかどうかの質問でも、全体では15.9%のところを、1週間の平均実働時間が50時間以上60時間未満の層では22.9%、さらに60時間以上の層では35.9%が体調を崩したことがあると回答している(1週間の平均労働時間が60時間以上ということは、一般的な1週間の所定労働時間は40時間なのだから、週の所定外労働時間は20時間以上、月の所定外労働時間は80時間以上ということになる)。

 厚生労働省では、労働時間と、脳・心臓疾患との関係の目安として、
(1)発症前1~6か月間平均で45時間以内の時間外労働は業務と発症との関連性が弱い、
(2)月45時間を超えて長くなるほど業務と発症との関連性強まる、
(3)発症前1か月間に100時間又は発症2~6か月間平均で月80時間を超える時間外労働は業務と発症との関連性が強い、
としている。実際の労災判定は、労働時間以外の要因も加味されて総合的に判断されるが、前出の調査ともリンクすると言える時間数になっている。
 また、平成24年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」のまとめによると、平成24年度に脳・心臓疾患の労災の支給決定がされた人の1か月平均の時間外労働数は、すべて60時間以上となっており、実際は時間外労働60時間以上から過重労働と判断される可能性が高いと考えられる。

 60時間と言えば、大企業では1か月60時間を超える時間外労働についての割増賃金が50%になっており、猶予されている中小企業への適用も今後検討される可能性がある。時間外労働60時間は、企業の過重労働対策としても、残業代削減策としても、社員にブラック企業と言われないためにも、意識しておきたい上限の数字なのかもしれない。
 前出の調査では、過去1年間の職場の問題状況の認識についての設問もあり、職場で何らかの問題状況があるとの認識は6割にのぼった。具体的な回答は、上から順に
 「仕事により心身の健康を害した人がいる」 36.5%
 「長時間労働が日常的に行われている」   30.6%
 「短期間で辞めていく人が多い」      26.9%
 「パワーハラスメントが行われている」   21.1%
という結果となっており、昨今の企業の労務管理にとって重要なテーマが並んでいる。これらは複合的な原因がある場合も多く、簡単には解決できないかもしれないが、ブラック企業という言葉の影響を考えると、これからの企業にとって、放置できない問題と言えるのではないか。これについては、今後機会があれば個別に取り上げたい。

 なお、この調査では、「明らかに法律に違反するようなことをあなた自身が経験した場合に、どのように対応するか」という設問もあり、「何らかの行動を起こす」との回答が44.6%にのぼっている。
 そして、その場合の行動については、「職場の上司・経営者に相談する」が最多の47.8%だが、「労働基準監督署に申し立てる」36.4%、「行政の労働相談を利用する」27.0%など、行政機関への相談を選択する人も多かった。また、比較的少数ではあるが、弁護士に相談する、NPOに相談する、裁判所に訴える(労働審判を含む)、勤め先以外の労働組合に相談するなど、インターネットでの情報の充実もあいまってか、外部の相談先も多様化していると思われる。
 実際には、まずは会社内部の人に相談し、それでだめなら外部に相談と考える場合も多く、そもそもの法令順守はもちろんのこと、会社内部で相談・解決ができる体制を作ることも重要である。

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