研修やトレーニングを実施した際、その効果を測る方法として、有名な評価方法がある。アメリカの経営学者のカークパトリック博士が1959年に提案した教育の評価法のモデルが最も使われている。教育の評価は、教育プログラムの改善や教育品質、効率向上のために重要であり、カークパトリックの4段階評価法が世界的に定着している。
・レベル1:Reaction(反応)
受講直後の参加者の反応があるかないかを把握する。アンケート調査が一般的であるが、学習者の研修に対する満足度の評価を行うと反応のレベルが把握できる。
・レベル2:Learning(学習)
反応のレベル、学習者が満足であったとしても、単に良かった、面白かったではなく、よく理解できた。気付きがあったなど筆記試験やレポート等による学習者の学習到達度の評価。
・レベル3:Behavior(行動)
面白かった、よく理解出来たとしても、学んだことを実際に行動に移したかどうかで効
果は把握できる。学習者自身へのインタビューや他者評価による行動変容の評価。
・レベル4:Results(業績)
最も効果あるのは、行動した結果、成果や業績に結びつけた場合であり、研修受講による学習者や職場の業績向上度合いの評価。
この評価モデルは研修評価として一般的に最も浸透しているといって良いだろう。提唱されてから50年以上も前に発表されたのにも関わらず、今でもこの手法は使われている。しかし、昨今このモデルの活用を新たな切り口で表現されるようになってきた。
そもそもレベル1から順番にレベルを上げてゆくという使い方ではない。まずレベル4から考えてみてほしい。研修によりどのような結果を出したかであるが、この結果とは何のための結果かを考える。そもそも、成果は組織成果に繋がっているはずである。つまり、レベル4のさらにその先には、組織目標があるという意味だ。
このモデルを活用する新たなアプローチは次のように考える。
1.組織目標を考える
まず、はじめに、組織の目標は何かを考える。大きな目標もあれば具体的で定量的、定性的どちらでも良いが、組織には目指している目標がある。例えば、「5年以内グローバル展開を果たす」というような目標があったとする。
2.成果を考える
次にその目標から研修や教育に関わる定量的成果を考える。どのような結果を出さなければならないかである。これがカークパトリックの評価モデルのレベル4である。例えば、「5年以内にグローバル展開を果たすには、3年以内に多様性に対応できるリーダーを育成する」などの目標指標が考えられる。
3.行動を考える
2で考えた結果を出すための行動は何か、どのような行動をとれば結果がとれるのかを考える。例えば、「多様性に対応できるリーダーは、コーチングスキルを熟知して日々の行動に応用している」という行動が期待される。
4.学ぶことを考える
3の行動を起こすために必要な身に付けるべき知識や学習すべきことを考え、そのための研修を設計する。例えば、「日々の行動で使えるコーチングスキルを学習させる」。
5.研修を行う
4で考えた研修を、効果的に行われるように開催する。例えば、「実務の中で応用できるコーチングスキルの研修」となる。
このように、効果的な研修を行うためには、まず組織の目標から最も効果的な研修をつくり実行するというプロセスである。研修は本当に効果的だったのか評価することが検討されるが、このモデルの考え方のように、効果的な研修を組織目標から作り出すという逆からの視点である。
HR総研 客員研究員 下山博志
(株式会社人財ラボ 代表取締役社長/ASTDグローバルネットワーク・ジャパン副会長)
受講直後の参加者の反応があるかないかを把握する。アンケート調査が一般的であるが、学習者の研修に対する満足度の評価を行うと反応のレベルが把握できる。
・レベル2:Learning(学習)
反応のレベル、学習者が満足であったとしても、単に良かった、面白かったではなく、よく理解できた。気付きがあったなど筆記試験やレポート等による学習者の学習到達度の評価。
・レベル3:Behavior(行動)
面白かった、よく理解出来たとしても、学んだことを実際に行動に移したかどうかで効
果は把握できる。学習者自身へのインタビューや他者評価による行動変容の評価。
・レベル4:Results(業績)
最も効果あるのは、行動した結果、成果や業績に結びつけた場合であり、研修受講による学習者や職場の業績向上度合いの評価。
この評価モデルは研修評価として一般的に最も浸透しているといって良いだろう。提唱されてから50年以上も前に発表されたのにも関わらず、今でもこの手法は使われている。しかし、昨今このモデルの活用を新たな切り口で表現されるようになってきた。
そもそもレベル1から順番にレベルを上げてゆくという使い方ではない。まずレベル4から考えてみてほしい。研修によりどのような結果を出したかであるが、この結果とは何のための結果かを考える。そもそも、成果は組織成果に繋がっているはずである。つまり、レベル4のさらにその先には、組織目標があるという意味だ。
このモデルを活用する新たなアプローチは次のように考える。
1.組織目標を考える
まず、はじめに、組織の目標は何かを考える。大きな目標もあれば具体的で定量的、定性的どちらでも良いが、組織には目指している目標がある。例えば、「5年以内グローバル展開を果たす」というような目標があったとする。
2.成果を考える
次にその目標から研修や教育に関わる定量的成果を考える。どのような結果を出さなければならないかである。これがカークパトリックの評価モデルのレベル4である。例えば、「5年以内にグローバル展開を果たすには、3年以内に多様性に対応できるリーダーを育成する」などの目標指標が考えられる。
3.行動を考える
2で考えた結果を出すための行動は何か、どのような行動をとれば結果がとれるのかを考える。例えば、「多様性に対応できるリーダーは、コーチングスキルを熟知して日々の行動に応用している」という行動が期待される。
4.学ぶことを考える
3の行動を起こすために必要な身に付けるべき知識や学習すべきことを考え、そのための研修を設計する。例えば、「日々の行動で使えるコーチングスキルを学習させる」。
5.研修を行う
4で考えた研修を、効果的に行われるように開催する。例えば、「実務の中で応用できるコーチングスキルの研修」となる。
このように、効果的な研修を行うためには、まず組織の目標から最も効果的な研修をつくり実行するというプロセスである。研修は本当に効果的だったのか評価することが検討されるが、このモデルの考え方のように、効果的な研修を組織目標から作り出すという逆からの視点である。
HR総研 客員研究員 下山博志
(株式会社人財ラボ 代表取締役社長/ASTDグローバルネットワーク・ジャパン副会長)