名ばかりの労働者代表が実は多い?

新たに就業規則を作成したり、現行の就業規則を見直したりする際には、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合に、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者から意見を聴くこととなっている。これは労働基準法第90条に規定されている。
 人事・労務に携わる者にとっては、よくよく理解しているところだと思う。ただ、実態の運用はどうであろうか?もちろん意見は聴いていると思うが、誰の意見を聴いているかが問題である。

 中小企業では、労働者の過半数で組織する労働組合はないことが多いので、「労働者の代表」から意見を聴いていることがほとんどだと思うが、果たしてその意見を聴いている代表とは、本当の意味での労働者の代表なのか?もしかすると、労働者代表とは名ばかりで、「とりあえず、君やっておいてくれー!」と会社や上司から頼まれたいわゆる形式上の労働者代表ではなかろうか。少し自社に置き換えて考えてみてほしい。あなたの会社の労働者代表とは、真の労働者代表なのか?
 労働基準法施行規則によると、いわゆる管理監督者でないことや選挙による投票、全従業員が集まる朝礼で挙手などの手続きにより選出された者である必要がある。

 さて、あなたの会社では、どうであろうか? 馴れ合いで何年も同じ人が形式上代表をやっていたり、会社から指名された人が代表の意味も分からず仕方なく代表になっていたりと、、、そのようなことはないだろうか。自社点検してもらいたいものだ。
 代表の選出方法は、たとえば投票や挙手の方法以外でも、回覧や話し合いによる信任でも構わない。ポイントは労働者の過半数が支持しており、民主的な手続きが踏まれていることだ。この手続きを怠ると、労働者代表の行為そのものが、無効扱いされる可能性もあるので注意してほしい。

 最近では、このようなニュースがあった。
就業規則絡みの労働基準法違反で刑事告発され、一旦検察から「不起訴」処分された事案について、検察審査会から労働者代表の選出方法の周知不備を理由に違法性を指摘され、「不起訴不当」と議決されたニュース。今後の検察の再捜査の行方がとても注目されるところである。

 いずれにしても、労働者代表の選出は民主的な手続きを経て、真の代表を選出できる仕組みが必要であろう。そのためにも労働者代表の選出手続きについて規定化することもよいだろう。労働者代表の任期、役割、選び方などをルール化するのである。また、代表自体が何かの事情で休職して、その役割を全うできないことも考えられるため、万一の場合に備えて代表を代行する副代表まで決めておくことが望ましい。

 労働者代表について考えるよい時期に今きていると思う。経験豊富な人事・労務担当者の方々ほど、ともすると「今さら、改まって代表なんて決められないよ!」と愚痴をこぼしたくなるかもしれないが、逃げてはいけない!あなたの会社の従業員はそれほど信頼できない人材なのか?それほどギクシャクしている労使関係なのか?このコラムをご覧になっているあなたの会社のことである。従業員としっかり向き合える土壌はあるのではないだろうか。

 名ばかりのなんちゃって労働者代表を作ることは簡単だ。でも、従業員はそれを見ている!その姿勢を見ている!コソコソ決めるのはもうやめて、正々堂々と労使関係を築いていこうではないか!


e-人事株式会社 代表取締役・社会保険労務士 牧 伸英

著者プロフィール

HRプロ編集部

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