株式会社Works Human Intelligence(以下、ワークスHI)は2021年6月9日、従業員規模500名以上の企業の経営者・役員および人事・教育担当者に実施した「人的資本」に関する意識調査の結果を発表した。調査期間は2021年5月7日~10日で、合計1,075名から回答を得た。これにより、人的資本経営の認知度や、取り組み状況などが明らかとなった。
7割弱の経営層・人事が「人的資本を重要視する潮流」を認知。「ISO 30414」に基づく指標化の進捗は?

「人的資本経営」は経営者・役員でより認知が高い傾向

企業価値の決定因子が有形資産から「人的資本」を含む無形資産に移行しつつあるなか、企業の認識はどのような状況なのだろうか。

はじめに、「経営戦略において、人的資本を重要視する潮流があることを知っていたか」と尋ねた。すると、全体では「知っていた」(詳しく知っていた/少し知っていたの合計値)が66.4%となった。属性別では、「知っていた」の合計値は役員・経営者(73.8%)の方が、人事・教育担当者(62.1%)より11.7ポイント高かった。すでに「人的資本経営」の考え方は、企業内において一定の割合で認知されており、特に役員・経営者の意識が高いことがわかる。
人的資本経営に関する認知状況

約6割が「経営戦略と人事戦略を連動」と回答

続いて、所属している企業において「経営戦略と人事戦略が連動しているか」を尋ねたところ、「連動している」が16.7%、「ある程度連動している」が40.8%だった。日本においても、「経営戦略と人事戦略を連動させる潮流」は浸透してきているようだ。
経営戦略と人事戦略の連動状況

人材価値向上のため、「満足度調査の実施」や「自主的な学びの支援」に取り組む企業が多い

また、「人的資本の価値向上に向け、検討または実施している取り組み」を尋ねた。すると、「従業員満足度調査の導入」(53.2%)と「従業員の自主的な学びの支援」(52.9%)の2項目で半数を超えた。一方で、「HRテクノロジーによる異なる部署間のデータの一元管理」(12.6%)や「CHO/CHROの配置」(11%)などは、1割程度にとどまった。人材価値向上への取り組みは進んでいるものの、その価値を可視化・開示するのに重要なテクノロジーを活用したり、経営体制を整えていたりする企業はまだ少数のようだ。
人的資本の価値向上のために検討・実施中の取り組み

「ISO 30414」に基づく、人的資本価値の指標化はどの程度進んでいるのか?

さらに、人的資本開示の国際規格のひとつである「ISO 30414」で定められている11領域のうち、「指標化を実施している」項目を尋ねた。すると、回答が多かったトップ3は、「コンプライアンスと倫理」(47.9%)、「人件費」(44%)、「採用、異動、離職」(42.5%)で、いずれも4割を超えた。一方、少なかった項目は「後継者育成計画」(21.4%)、「リーダーシップ」(23.3%)などであった。

指標化がある程度進んでいる項目はあるものの、いずれの回答も半数以下にとどまった。人的資本価値を可視化するには、指標化(数値化)から進める必要があるだろう。
人的資本価値における指標化の状況

「人的資本開示を積極的に行う予定」は4割超に

最後に、「今後、人的資本開示を積極的に行っていく予定があるか」と聞くと、「積極的に行っていく」は10.7%、「おそらく積極的に行っていく」は35.7%で、計46.4%とだった。今後、人的資本開示への意識はますます高まると予測される。
今後、人的資本開示を行うか
「自社で働く人の価値」を高めることは、企業価値を高める上でも欠かせない要素である。今後、「人的資本情報の開示」が義務化されていく流れにあるが、国際規格と照らし合わせるなどして、「自社の現状と実現過程」を確認してみてはいかがだろうか。

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