プラントメンテナンス事業を展開し、建設業を営む有限会社柳井工業は2021年3月2日、「在籍型出向」により他社人材を受け入れる「ES(エキスパート・シェア)採用」を開始すると発表した。新型コロナウイルス感染症拡大の影響から、業績不振に悩む企業に雇用継続の機会を創出すると同時に、人手不足に悩む同社の労働力を確保したい考えだ。
コロナ禍で余剰となった他社人材を「在籍型出向」により受入れる「エキスパート・シェア採用」を開始、柳井工業

即戦力となる人材を、業績不振に悩む企業から一時的にシェア

新型コロナウイルス感染症拡大の長期化から、業種を問わず経営不振に陥る企業が増えている。総務省統計局が発表した「労働力調査」によると、2020年12月現在での就業者数は、前年同月比で71万人減少している。特に「宿泊業」、「サービス業」、「製造業」での減少が顕著だ。一方、「建設業」では2020年9月~12月の間も就業者数が増加傾向で、現場では人手不足が続いている。柳井工業もまた、労働力の確保が必要な状況にあるという。
「労働力調査」の図表1
同社は、製造業等で整備士や工場での管理経験がある人材について、工場勤務の基本的知識をすでに身につけているため、同社の業務とも相性がよく、異なる業界でも即戦力になり得ることに注目。そこで、「在籍型出向」を活用し、即戦力となる人材をシェアする採用制度「エキスパート・シェア採用(以下、ES採用)」を導入した。「在籍出向」とは、出向元企業の雇用を維持したまま、別の企業に従業員を出向させる仕組み。出向元企業には「出向させることで従業員の雇用を守れる」、出向先企業には「必要な労働力を確保できる」というメリットがある。柳井工業はこれにより「即戦力人材をシェア」し、出向元・同社とも実益がある仕組みを構築する狙いだ。
「労働力調査」の図表2
厚生労働省は2021年2月、新型コロナの影響を受けた企業が、雇用維持のために在籍型出向を実施する場合、「出向元企業」と「出向先企業」のそれぞれを支援する「産業雇用安定助成金」を創設した。また、「出向元企業」と「出向先企業」を結ぶマッチング支援も行っている。人材不足の企業、業績不振の企業とも、この「在籍型出向」の支援を活用してみてはいかがだろうか。


【参考】
厚生労働省:在籍型出向支援
HRプロ:厚労省が在籍型の出向を助成する「産業雇用安定助成金」を新設。雇用維持を図る事業主を支援

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