「専業主夫」という家族形態に見る社会保障制度の“男女逆差別”

最近は、妻が外で働き、夫が家事・育児に専念するという夫婦が増えている。夫婦としての在り方についての価値観が変容してきたことや、女性活躍が称賛され、その支援や配慮が不十分ながらも整えられてきたことなどが主因であろう。

「専業主夫」は社会で受け入れられているか?

一方で、いわゆる「専業主夫」を取り巻く環境は厳しい。私たちはその実情をあまりにも知らな過ぎる。すでにこの社会が進歩的で寛容で、従来からの性に基づく役割を乗り越えているかに思っているかも知れないが、それは全くの事実誤認である。

特に「育児」を抱える「専業主夫」は、さまざまな差別的取扱いを受けている。未だに、子育ては母親、という旧来の固定観念が男女問わず色濃く残っているのだ。

「パパ友」ができることも稀だし、「ママ友」グループに受け入れられることも少ない。多方面からのバッシングも酷いものだ。専業主夫に対してぶつけられる「何で君が彼女の仕事を奪うの?」、「結婚後の夫婦の主導権はどちらが握っているの?」などという非難は、果たして進歩社会で発せられる言葉と言えるだろうか。

遺族厚生年金の男女逆差別

「専業主夫」であることに関する国の社会保障制度も酷い。まず、年金制度を見てみよう。

経済的な大黒柱たるサラリーマン・ウーマンが亡くなってしまった時には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」が、生計を維持されていた遺族へ支給されることがある。いわゆる「遺族年金」と呼ばれるものだ。

2014年3月末までは、「遺族基礎年金」の支給対象は「子どものいる妻」か「子ども」に限られ、「子どものいる夫」には受給資格がなかった。この男女差を解消するために、対象が「子どものいる妻」から「子どものいる配偶者」に変更され、2014年4月からは、要件を満たした父子家庭にも「遺族基礎年金」が支給されるようになった。

一方、「遺族厚生年金」については、亡くなった人の配偶者が「妻」の場合は、無条件に支給されるが、それが「夫」の場合には、55歳以上という年齢制限がかかり、しかも年金を受給できるのは、60歳に到達してからとなっている。つまり、若年層の「専業主夫」には、「遺族厚生年金」は支給の対象とされていないのである。

その上、「遺族厚生年金」の場合、「中高齢の寡婦加算」でも男性は差別されている。遺族が一定の要件を満たす40歳以上65歳未満の「妻」であれば、「中高齢の寡婦加算」として「遺族厚生年金」に年額585,100円(2019年度の額)が上乗せされるが、それが「夫」の場合は全く蚊帳の外なのである。

著者プロフィール

HRプロ編集部

採用、教育・研修、労務、人事戦略などにおける人事トレンドを発信中。押さえておきたい基本知識から、最新ニュース、対談・インタビューやお役立ち情報・セミナーレポートまで、HRプロならではの視点と情報量でお届けします。

HRサミット2019/HRテクノロジーサミット2019 アフターレポート公開中