◎組織の中核を担う40代社員の問題とは

今、多くの企業ではバブル期に入社したミドル世代(40代社員)がボリュームゾーンとなり、組織の中核を担い始めている。この世代の人材育成の課題を考えるための参考データとして、当社が2013年7月に実施した「40代社員の意識調査」の結果をご紹介したい。調査対象は、従業員1000人以上の企業の人事ご担当者および40代社員だ。
 まず、この調査で「人事担当者が抱える40代社員の問題は何か」をお聞きしたが、回答の上位3つは「成長の鈍化」、「環境への認識不足」、「若手・後輩の育成不足」。次に、「人事担当者が抱える今後の人事上の課題」をお聞きしたところ、回答は「社員の高齢化に伴う人件費増」、「社員の高齢化に伴う管理職のポスト不足」、「会社全体の停滞感」が上位3つだった。
一方、40代社員自身の意識はというと、管理職と比べ、一般社員ほど「手詰まり感、環境認識不足、役割認識不足、あきらめ感、閉塞感、評価への不満、自己効力感不足、意欲不足」を感じているという結果が出た。たとえば、「これから新しい自分に変われるか」という質問に対し、「難しい」と回答した40代一般社員は45%ほどと半分近くを占めている。現在、所属している企業・組織で定年まで高いモチベーションで仕事を続けられそうかどうかについても聞いたが、結果は「続けられそうだ」という回答が40代一般社員で20%弱と残念な結果だった。少なくない40代の方々がネガティブな状態で仕事をされているのなら、問題だろう。

◎キャリア開発支援で自律型ミドル社員をつくる

「ミドル世代のキャリア開発支援の処方箋」~人事担当・ミドル世代への調査結果から~
では、自律型ミドル社員をつくるにはどうすればいいか。そのためには、社員の方々が70歳雇用時代に向けた生涯雇用能力、つまり、企業側から見れば組織貢献能力を形成していけるように支援することが必要だ。当社では、生涯雇用能力形成のポイントは3つあると考えている。
 1つ目は「自律意識の醸成」。主体的な仕事・キャリア価値観を持っていただくということだ。50代に比べて、40代は定年までの将来指向の意識をまだ持てる年代だ。そこで、40代中盤位までは、職位昇進を目指す意識を強化し、上に上がっていこうという仕事・キャリア価値観を持っていただくが、それ以降は「出世」型よりも「やりがい」型、「自己成長」型の仕事・キャリア価値観に変えていけるよう働きかけることがポイントになる。
 まず、人事担当者が40代社員に変化を促すために実施してみたい施策は、「人事制度の改定」、「職種転換・再配置」、「キャリアカウンセリング」が上位3つだった。また、40代社員の問題を解決するにあたって、約6割の人事担当者は、「キャリアカウンセリング」、「人事や管理職の面談」が有効だと回答している。さらに、キャリアカウンセリングを導入している企業では、未導入の企業と比べると、人事担当者が40代一般社員について「定年までの働くビジョンが明確」、「定年までの将来の見通しが明るい」と感じていた。
 次に、40代社員自身はどう考えているのか。40代社員の中でも特に一般社員は、キャリア形成行動やキャリアリスクへの準備行動が総じて高くない傾向があるが、その一方で、40代社員は、キャリア形成支援、研修、キャリアカウンセリングを求めている。たとえば、40代社員の6割は、「定年を迎えるまでの期間、どのように働くのか、明確なビジョンを持ちたい」と思っている。また、40代社員の同じく6割は、「自分自身の職業能力について今後も能力開発をしたい」と思っており、そのうちの6割は「会社でキャリアカウンセリングを実施するなら受けてみたい」と思っている。現状ではできていなくても、機会があれば50代、60代を見据えたキャリア形成に取り組みたいと考えている40代社員の方々がかなりいらっしゃるのではないか。

◎生涯雇用能力形成の3つのポイント

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