ここ数年、多様な働き方の推奨により、「ワークライフバランスの実現」など様々な取り組みが推進されている。そのような中、新型コロナウイルス感染症拡大により、テレワークが急速に普及した。本稿を執筆している2021年11月末日現在、1日あたりの新規感染者数は減少し、緊急事態宣言も解除されている。こうした状況下で、テレワークを導入している企業においては、「継続するか否かを検討する」、もしくは「頻度を減少させる」といった動きがあるようだ。今後、企業が「テレワーク」をどう扱うべきなのか、改めてその「メリット」と「デメリット」を考えてみたい。
企業は新型コロナ後も「テレワークを継続」すべきか。「採用」や「コスト」、「コミュニケーション」などの観点から是非を探る

「テレワークのメリット」とは何か

まず、テレワークのメリットについては、主に以下のものがあげられる。

(1)優秀な人材の採用がしやすい
(2)オフィス賃料、通勤費用の削減
(3)地域に限らず採用が可能
(4)DX化や業務改善が推進されやすい


上記を踏まえた上で、特に「採用」と「コスト」におけるメリットを詳しく見ていこう。

採用について

「労働者の高齢化」や「人手不足」といった問題が今後も続くであろうことを考えると、テレワークによって「通勤可能エリア」に限らない採用活動ができることは、企業にとって大きなメリットではないだろうか。また、「テレワークを経験した従業員」にとって、テレワークを選択できない企業で、モチベーション高く働き続けることは難しいかもしれない。他にも、子育てや介護など、テレワークによって「仕事」と「プライベート」の両立がしやすくなるのは間違いないだろう。

コストについて

テレワーク普及率の高い大企業においては、「常時出社する社員数」が大幅に減少したことで、本社オフィス売却の動きもある(出社人数の減少だけが理由とは限らないが)。大企業に限らず、テレワークの普及によって、「社員数に比例したスペース」は必ずしも要さなくなり、一人ひとりのデスクも不要となるかもしれない。その結果、オフィス面積の縮小によって賃料を削減できるだろう。

「テレワークのデメリット」も考える

テレワークのデメリットについては、主に以下のものがあげられる。

(1)コミュニケーションの不足
(2)勤怠管理が難しい
(3)マネジメントが難しい
(4)情報漏洩リスク


上記のデメリットのうち、「コミュニケーション」と「勤怠管理」に関して、詳しく見ていこう。

コミュニケーションについて

オンラインのコミュニケーションツールを利用することにより、テレワークにおいても業務自体は問題なくこなすことができるだろう。しかし、「直接会うことでこそ生まれる価値」もあるのではないだろうか。それは、「新たな発想」や「新たな気づき」、「他者からの刺激」などだ。目に見えるものではないかもしれないが、決して些細なことではない。テレワークでは、そうした「価値」を得る機会が失われてしまう。

勤怠管理について

テレワーク中は、従業員の出退勤を対面で確認することができないため、勤怠状況の正確な把握が難しい。その結果、企業としては、「未払い残業代の発生」など、意図しないリスクを抱えてしまうこともあるだろう。
新型コロナウイルス感染症拡大の状況は、2021年11月現在は落ち着きを見せているが、依然として予断を許さない状況だ。感染収束後、もしくは新型コロナとの共存を前提としたこの先の働き方について、現実的には「テレワークとオフィス出社をバランスよく組み合わせること」が、企業と従業員の双方にとって望ましいのではないだろうか。そうした働き方を実行していくにあたり、改めて「テレワークの意義や目的を従業員と共有すること」や、「テレワーク時の評価を、客観性や公平性への十分な配慮の上で行うこと」などが必要となるだろう。

テレワークは、新型コロナがきっかけで普及が早まったに過ぎず、決して特別な事態ではない。テレワークの活用による大きなメリットに目を向け、なおかつデメリットを把握した上で、前向きに取り組んではいかがだろうか。
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