「フィードバック」は適切に行うことで、社員のモチベーションやエンゲージメントの向上につなげることができる。また生産性向上や組織開発など多くのメリットが生まれることから、近年フィードバックを重要視する企業が増えている。本記事では、面談や育成の場面で失敗しないようにフィードバックのやり方やNG例、効果が現れないときの対処法などを解説していく。

「フィードバック」とは何か?

「フィードバック」とは何か。またどんな効果があり、なぜ近年注目されているのか。まずは簡単に定義やメリットについて説明していこう。

「フィードバック」の定義

「フィードバック」とは、“目標の達成に向けてアクションを起こした結果”に対する評価を相手に分かりやすい言葉で伝え、より良い行動へと導いていくことを意味する。どこが良かったかはもちろん、時には相手にとって耳の痛いこともしっかりと伝えなければならない。目的は行動を軌道修正したり、動機付けによって相手の成長・育成を促したりしていくことだ。そのためのアドバイスが前提であることを忘れてはいけない。一般的には、上司と部下との間での「フィードバック」を思い浮かべるかもしれないが、それ以外にもチームやプロジェクト内、顧客・消費者と企業との間など、さまざまな場面で展開されている。

「フィードバック」の効果や近年注目されている背景

「フィードバック」で期待できる効果は、大きく分けて5つある。「人材育成」「社員のモチベーションやエンゲージメントの向上」「仕事の質の向上」「信頼関係の構築」「組織の目標達成」などだ。

近年、「フィードバック」は個人の成長促進や組織開発にもつながるということで、脚光を浴びている。その背景としては「人材の多様化」「管理者層の若年化による指導力の低下」「業務量の増加に伴う部下育成の欠如」「プレイングマネージャーの増加」「価値観の変化による育成難易度の向上」が挙げられる。これらの要因により、人材育成が上手く進まなくなってきているのだ。そうした状況を打破する有効な手段として「フィードバック」が期待されている。

面談の前におさえておきたい「フィードバック」のやり方

ここからは、フィードバックのやり方を押さえていこう。5つのステップを紹介したい。

(1)事前に情報を集める

最初のステップは事前に情報を収集することだ。集めるべき情報は、シチュエーション(どんな状況か、どんな状態のときに)と行動(どんな言葉が、どんな行動が)、影響(どんな影響がもたらされたか)の3つ。それぞれの英語の頭文字を並べてSBI情報と呼ばれている。例えば、以下のような流れになる。

S(シチュエーション)「この半年の営業状況だが」
B(行動)「新規の訪問件数が1日3件未満の日が全体の半分以上を占めているようだね」
I(影響)「契約件数が前期と比べて3割ほど落ち込んでいるよ」

これらの情報が不確かであったり、具体性を欠けていたりすると、効果的なフィードバックはできないということを覚えておこう。

(2)実際にフィードバックする

次は、相手に「フィードバック」を行ってみよう。その際に、覚えておきたい点が二つある。一つが、冒頭で「フィードバック」の目的を相手にしっかりと伝えること。例えば、「最近の君の仕事を見ていると、気になることがある。今日はそれについて話そう」と切り出してみる。目的を伝えたら、事前に集めておいたSBI情報を事実として相手に伝えていく。もう一つが、相手に対して自分が何をしたいのかを述べることだ。具体的には、「問題点を一緒に改善していこう」とか「改善策がないか一緒に考えてみないか」などと呼びかけてみると良いだろう。

(3)問題点や改善点をはっきりさせる

ここでは、相手に伝えたSBI情報をもとに認識のすり合わせを行う。相手にも何か理由や事情があるかもしれない。しっかりと相手の話を聞いた上で自分なりの見解を示す必要がある。

(4)短期的な目標を設定する

相手と問題点や改善点の共通認識ができたら、短期的な目標を設定しよう。ただ、一方的な設定は良くない。相手が自ら設定することが大切になってくる。例えば、提出期限をなかなか守らない部下がいたとしよう。そんな部下には、「どうしたらスケジュールを守れるかな。何案か考えてもらえないか」と依頼するだけでなく、どの案にするかという判断も相手に委ねてみてはどうだろうか。最後に「よしわかった。その方法でいこう。期待しているよ」といったメッセージを添えて送り出してみるとより効果的だ。部下は気持ち良くアクションを起こしていけるだろう。

(5)フォローアップを実施する

「フィードバック」は、フォローアップまで行うことで初めて完結する。フォローアップとは、「フィードバック」で相手に指摘したことが行動の改善につながっているかを定期的に確認し、もし上手くいっていないようであればフォローしたり、軌道修正したりすることを指す。本当は一度ですべてが改善できれば良いが、実際にはそう簡単にはいかない。しばらくの期間は、フォローアップを続けていく必要があるだろう。

「フィードバック」のNG例

「フィードバック」では、これはやらないようにというNG例が幾つかある。ここでは8つ紹介したい。

追い詰めるような言動や態度

相手を追い詰めるような伝え方は、NGだ。特に相手が、「何度言っても効果がない」「やる気が全く感じられない」といったタイプだと、誰しもイライラが募ってしまうだろう。しかし、そのまま感情をぶつけられたら相手がパワハラと受け取ってしまう恐れがある。またメンタルの不調をきたす可能性もある。何を伝えるかだけでなく、どう伝えるかも十分注意する必要がある。

主観で伝える

相手に対して個人的な意見ばかり並べても良くない。もともと、「フィードバック」とは相手に客観的な事実を伝える場である。客観的なデータや情報を踏まえた上で、自分の意見を伝えていくように心がけてほしい。

大勢いる場で伝える

大勢の目の前で「フィードバック」するのも避けたい。特にネガティブな内容を伝えなければいけない場合には1対1で行うのが絶対だ。言われた相手は、精神的に大きなショックを受けてしまうし、パワハラと受け止められかねない。「恥をかかされた」という恨みすら持たれてしまうので注意が必要だ。

時間が経ってから伝える

“鉄は熱いうちに打て”という格言があるが、「フィードバック」も同様だ。伝えるタイミングは早い方が良い。時間が経ってからだと、どうしても記憶もあいまいになる。また「あの場面で言ってくれたら良かったのに」と相手からの信頼を損ねてしまう可能性がある。スピード感をもって対応しよう。

責任逃れに見えるスタンスを取る

「部長に言われたから、仕方なく言おうと思うが」「僕の本心ではないが、会社の方針なので致し方ないんだよ」。このように、自分の責任を回避するようなスタンスで相手に伝えても行動改善にはつながらない。もし、会社や上層部の判断で決まったという場合には、どのような方針や背景、目的があるのかを自分の言葉として相手に伝える。その上で「行動を変える必要性」を納得させなければならない。

一度の「フィードバック」であれこれ指摘する

一度の「フィードバック」であれやこれやと指摘してしまうのも良くない。相手は聞く耳を持たなくなってしまう。基本的なルールは、一回の「フィードバック」で一つの指摘に留めること。さらに、問題なのは過去にさかのぼって複数を指摘すること。「どうして今さら言うのか」と不信感を持たれてしまうからだ。これも絶対にしてはいけない。

誰かと比較する

他の誰かと比較して指摘するのも良くない。これでは、本人の自信や意欲を削いでしまう。例えば、「彼は君の3倍仕事が速いよ。確か同期だったよね」と言われたら何と思うだろうか。精神的に大きなショックを受けるはずだ。「フィードバック」で重要になってくるのは、相手の成長・育成につなげること。それには相手が自分の課題や問題的に気づき、自主的に改善していかないといけない。比較対象となるのは、他の誰かではなく、過去の相手と現在の相手であることを留意しておこう。

無意味に褒める

最後のNG例は、無意味に褒めたり、フォローを入れたりしてしまうことだ。これは、相手に対して厳しい指摘をしてしまった時などにやりかねない。あまりにも自信を失っている姿を見ると、「少しくらいは元気づけしておかないといけないかな」と思いがちだ。ただ、これをしてしまうと「フィードバック」の効果は薄れてしまう。厳しく言われたことが記憶に残らず、褒められたことだけが余韻として残ってしまうからだ。

「フィードバック」の効果が現れないときは?

かなり気を遣って「フィードバック」を幾度と繰り返したものの、相手が思った通りの行動を取ってくれない。こうした時に、どう対応すればよいのか。その対処法を紹介する。

定期的に実施する

「フィードバック」は成果が見られるまで幾度となく行うのが原則だ。一回で良くなるということはほとんどない。定期的に「フィードバック」を繰り返していくと、以前は見えていなかった課題に気づくことができる。そのためにも継続化していくことが重要だ。

伝え方を変える

「フィードバック」をしても効果が見られなければ、伝え方を変えてみるのも良策。人によって性格も考え方も違うので、伝え方も相手に合わせる必要があるからだ。また、伝える内容に応じて伝え方を変えてみることもお勧めしたい。例えば、相手にネガティブな要素を伝えなければいけない場合に、それをポジティブな表現に置き換え、自発的に考える姿勢を促してみてはどうだろうか。さらには、「君ならやれるはずだ」「君に期待している」という言葉を最後に添えるのも効果がある。信頼してもらえていると思うと、誰しも力がみなぎって来るからだ。

関係性の改善を図る

そもそも関係性に問題があると、「フィードバック」の効果は出にくい。伝えた内容が相手に聞き入れてもらえていないからだ。やはり、信頼関係が築けていてこそ、素直にフィードバック受け入れてもらえる。相手との関係性を見つめ直すことも必要だ。
「フィードバック」は相手としっかり向き合い、より良い人材へと成長してもらうためのコミュニケーション活動である。伝え方次第で、相手のモチベーションが上がることもあれば、下がることもある。本記事で紹介したやり方やNG例などをふまえ、適切な「フィードバック」を実行し、ぜひ組織活性化や従業員の成果につなげていただきたい。
  • 1