近年、新卒市場で需要が高まっている「理系学生」。急激なテクノロジーの発達によって、ITや数字に強い人材の確保が、各企業の重要な採用課題のひとつとなっている。しかし、「理系学生」の採用ニーズは年々増えているものの、理系学生の数は減少傾向にあり、採用の難しさを物語っている。本記事では、「理系学生」の特徴を明らかにし、採用を有利に進めるポイントを採用フェーズ別に紹介していく。
「理系学生」の特徴、採用フェーズ別のポイントを解説

「理系学生」が注目されている背景

「理系学生」が採用市場において注目を集めるようになった背景としては、第一に、急激なテクノロジーの発達があげられる。学生のうちから「テクノロジー関連に対して最も強い(親和性が高い)」、「専門分野で研究をおこなっているため一定の知識を既に有している」という理由で、「理系学生」の需要が高まったといえるだろう。日本のIT化の流れは、今後さらに加速することは容易に予測される。特にIT業界といったテクノロジー分野での理系人材の需要は高まり続けるだろう。今のところ、需要に見合った人材数がいないことで、理系学生の獲得競争の激化が起こっている。

「理系学生」の特徴は数字や論理的思考力の強さ

近年、「理系学生」に注目が集まった理由としては、IT化という社会潮流の変化の他にも理由が考えられる。理系学生がもつ「特徴」にあるのではないだろうか。社会人として強みとなる特徴を3つあげてみよう。

(1)数字に強い

「理系学生」採用に積極的な業種の筆頭として、システム開発やテクノロジー分野が、まず想起される。「理系学生」は、取り組んでいる研究分野を鑑みても、学生時代から数字を扱う機会が非常に多い環境にいるといっていいだろう。

例えば、数字に親和性の高い人材であれば、財務の管理が適しているかもしれない。また、作業効率を可視化する数値分析に長けていれば、人事や労務、経営企画といった職種で活躍できる可能性がある。「理系学生」を採用する際は、ある分野に限定するのではなく、数字を扱うあらゆる職種を検討するのがいいだろう。

(2)論理的思考力がついている

理系分野の研究では、常に「問題提起」、「仮説を立てる」、「実験・検証」、「結果分析」、「改善」という行動を繰り返している。実験・研究の結果が思ったようにいかないときにも、フローのどの段階に問題があったのか、データを読み違えていないかを仮定し、一つひとつの要因を検証しながら前進する。つまり、学生時代から、日常的に「PDCAサイクル」を回すための思考力を鍛えている。そのため、理系学生たちは、日ごろから、複雑な課題に対しても論理的に考察する姿勢が身についているといえるだろう。

(3)メンタルが強い

「理系学生」という言葉から、「物静かで穏やか」、「消極的」といった人物像をイメージする人も多いのではないだろうか。しかし、彼らの大半は、所属する研究室やゼミで夜遅くまで自身の研究課題と向き合い、「最後までやりとげる」といった強い精神力、忍耐力を備えている場合も多い。

また、個を好み、コミュニケーションが苦手なイメージもあるかもしれないが、結果が出るまで、ひとりでもミッションを遂行する集中力の高さがあると言い換えることもできる。

「メンタルの強さ」というと、先輩・後輩間での絶対的ヒエラルキーの中で学生生活を過ごした体育会系の学生を想起するかもしれない。「理系学生」は体育会系の学生とは違った意味での「強さ」を秘めているとみていいだろう。

「理系学生」採用の難しさ

「理系学生」を採用するのは容易ではない。大きく分けて3つその要因がある。

(1)理系学生の数が少ない

「理系学生」の採用を困難にしている理由として、まず筆頭にあがるのは、理系学生は文系の学生に比べて「人数自体が圧倒的に少ない」ということだ。そのうえ、大学卒業後は大学院への進学を志したり、大学やゼミの教授からの推薦で進路を決めたりする学生も多い。そのため、採用市場においては常に「需要超過」の状態に陥ってしまっているのが実情だ。人材数の少なさ。これが、理系学生の採用を非常に困難にしている理由といえるだろう。

(2)新卒採用に進む理系学生が少ない

文部科学省が実施した「平成28年度学校基本調査」では、「理系学生」の約35%が大学院進学、卒業後に就職するのは58%という結果が発表された。新卒採用の市場に理系学生が少ないことがわかる。

また、先述のとおり、就職希望の理系学生でも、一般的な就活をおこなわず、大学やゼミの教授のつながりによって就職先を決める学生も多い。これも新卒採用市場で、企業が理系学生と出会う機会を逸している理由である。

(3)大手志向が強い

大学卒業後に就職を目指す「理系学生」たちを見てみると、近年、顕著に表れているのが、「大手志向が強い」という傾向である。就職先として日系大手メーカーを志望するのも「理系学生」の特徴だ。大手思考でない場合でも、大学とのつながりや教授のコネクションを利用し、推薦で就職先を決めることが多くなっている。

採用フェーズ別「理系学生」を採用するポイント

「理系学生」は、就活の時期になっても研究が忙しい場合が多い。文系学生とくらべて十分な時間を就活に割けないといった実情がある。そのため、採用活動においても、選考フローの段階で、理系学生の置かれている状況に対応した工夫が必要だ。

理系学生の就活スケジュールは他の学生とは違うことを心得ておく

文系学生は3年生の秋~4年生の1年間、卒業論文執筆のためのゼミや卒業に必要な単位分の講座受講が中心となるため、出席しなければならない授業数が減少する。そのため、就活に十分な時間を費やすことができる。

一方、「理系学生」はというと、3年生の後半から研究室に所属して自身の研究に取り組み始めることが多い。採用開始時期や基本的な就活スケジュールは文系その他の学生たちと変わりはないが、就活開始後も研究と並行して活動しなければならず、時間の余裕がない。人事担当は、まずは「理系学生は文系学生とは異なったスケジュールで就活をおこなっている」という点を心得ておく必要があるだろう。

それでは次に、具体的な採用プロセスとして、「母集団形成」、「選考段階」、「内定後」の順に、それぞれのフェーズを見ていこう。

●フェーズ1:母集団形成

(1)大学と連携する
「理系学生」の特色として、大学や研究室、教授とのつながりから就職先を決めるケースが多くある。例えば、研究室の先輩が既に入社している企業には「専門知識を活かせるかもしれない」というポジティブなイメージを持ちやすくなるだろう。

企業の人事担当側としても、既存社員が所属していた研究室の学生ならば、既存社員と大学教授の関係が構築済みなので、信頼関係を築きやすい。新卒の理系学生が就職先を選ぶ際の安心材料にもなる。

(2)専門サイトを使う
「理系学生」は他の学生と比べて、就活期間、志望先の選び方、企業とつながる方法などが少し異なっている。そのため、理系学生に向けた「専用のナビサイト」や「合同説明会」がある。

多くの理系学生が登録している専門就職サイトや、地方大学の理系学生に特化したサイトなど、理系学生と接点が持てるサイトを利用するのも有効な手段である。

こういった手法を駆使することで、最初から採用ターゲットを「理系学生」に絞った状態で、企業のニーズに合致した人材と出会う可能性が高くなる。

●フェーズ2:選考段階

(1)企業情報を具体的に知らせる
「理系学生」の多くが、自身が取り組んできた研究分野と関連している就職先を希望するだろう。しかし、実際には、どのような職種が自分の研究を活かせる就職先なのかを理解していなかったり、就職先でどのような形で自身の能力を活かしたいのか具体的にイメージできていなかったりする場合が多い。

企業側は、自社が「どのような会社か」、「仕事内容はどのようなものか」、「学んできた知識がどの職種に活かせるのか」といった内容を、理系学生に具体的に提示する必要がある。これによって、学生も企業に対するイメージや就業後のビジョンをもちやすくなるので、志望する動機につながるだろう。

(2)「新卒紹介」を使う
「新卒紹介」とは、企業が採用したい学生のターゲットを絞り、企業のニーズに合致した学生を紹介してもらい、面接しながら採用を決めるという手法だ。つまり、就職希望者の母集団から一人ひとり精査するといった工数をかけずに、短期的に、求める知識・技術を備えた学生を採用することが可能となる。

「理系学生」は専門的な知識を有していることがほとんどだ。企業側として、具体的に「こういった知識・技術をもった学生を募集している」という明確なビジョンを決めて提示できれば、ぐっと採用成功の確率は高まる。

●フェーズ3:内定後

適切なフォローで不安解消
「理系学生」は、文系学生にくらべて就活にあてられる時間が少ないため、短期間で、少ない選択肢の中から就職先を決ることになる。そのため、企業から内定を受けた後にも「本当に、ここに決めてよかったのだろうか……」と不安を感じる学生が多いという。

また、無事に内定を獲得して就活を終えた後も、ゆっくり構えている暇はない。自身の研究に戻り、多忙な日々を過ごす「理系学生」は、時間的な余裕がない状態が続く。そのため、企業が主催する「内定者懇談会」や「内定者研修」があっても、参加できないことがある。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響により、同期や同僚となる人たちとの対面できる機会自体が減少していることも、不安を募らせる要因となっているだろう。

採用する企業側は、理系学生が自ら望んで対面の機会を拒否しているわけではないことをきちんと理解し、内定期間中に疎外感や入社後の不安が膨らまないよう、適切にフォローすることが必要になってくる。不安解消と同時に、アフターコロナを見据えたニューノーマルへの取り組みとして、対面ではないオンラインでの交流を取り入れるといった新しい対応策も考慮すべきだろう。こういった気遣い・対応によって、「内定辞退」を減らすことにもつなげられる。
「理系学生」は、他の学生たちとは異なった方法・期間で就活にのぞんでいる。理系学生を着実に獲得していくためには、理系学生が置かれている状況、他の学生たちとの差異を理解することが企業側にまず求められる。そのうえで、専門サイトを活用したり、明確な企業ビジョン、キャリアイメージを提示したりといった、手法をとることが「理系学生」の採用を成功させる鍵となる。
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