第71回学校推薦について〜その2〜

大学の就職支援室からみた新卒採用

さて、前回は2000年頃までの学校推薦制度についてまとめてみました。その頃にはそれまで就職に絶対的な効力を持っていた推薦制度がおよそ変質していました。推薦制度は企業と大学との信頼関係に基づいて構築されており、明文化されたルールではありません。ですから、いつのまにか「推薦で受けたのに落とされた」といった、それまで聞かなかった話を学生から聞くようになり、私自身“何となく”時代の変化を感じ取っていきました。
ちなみに、2002年に私が転職した会社では、まだ「学校推薦を不採用は絶対NG」という不文律が色濃く残っていました。大学によってはそれを把握しており、最後の駆け込み寺的な感じで、遅い時期に学生を推薦してくるところもありました。そうした学生を不採用にする際に、その大学を担当している採用担当と大げんかしたのを記憶しています(笑)。

2000年代前半頃から徐々に、推薦と自由応募の境目がより明確になっていったような印象です。具体的には、地方企業は就活サイトを中心とした自由応募中心で採用を行うようになり、一方で大手企業はリクルータを使った活動で学校推薦を活用するという、二極化が進んでいきました。

推薦を得ると、必ず内定がもらえないまでも、内定をもらった場合には基本的には辞退できない、というルールは残っていたので、大学のOBOGリクルータが学生と個別に接触し、学校推薦で応募するよう口説く、という役割を担って活動していました。

2010年頃になると、これまで就活サイト重視の戦略をとってきた企業の姿勢に、変化が現れます。就活サイトで集まった優秀層は、当然、他の会社へも数多く応募しており、一人で重複内定を獲得しています。そのため合格した後に辞退されることも多いので、効率が悪いことに企業側が気づき始めたわけです。

就活サイトで大きな網をかけて選抜しても、結局辞退されてしまうなら、学校毎の母集団を作って、その母集団からOBOGが中心になって使えそうな学生を選んで口説き落とそう、というように、いわゆるキャンパスリクルーティング重視の採用手法が広まっていきました。

リクルータに一定の権限を与え、リクルータが推薦する学生は選考が短縮されたりするようなルールを運用する会社も増えてきます。そうしてナビ重視からキャンパスリクルーティング重視に企業の採用手法が変化するに伴い、リクルータと推薦方式をとる企業が増えてきました。かくして大手企業のリクルータが以前にも増して大学に訪れるようなったのです。

1〜2月になると本学の理系の食堂では、スーツを着た若者やおじさんの姿が、多く目につくようになりました。そして推薦方式にも、リクルータ推薦という仕組みをとる会社が増えてきました。これは、学校の就職担当に推薦依頼を行うのではなく、接触したリクルータが応募の意思を確認し、自社の人事にその学生を推薦するという方式です。

リクルータ推薦で応募すると、選考プロセスが省略されたり、交通費が支給されたりなどのメリットがあることを学生にアピールして囲いこみます。とはいえ、選考で落とされるリスクもあるので、場合によってはリクルータが面接練習に付き合ったり、ESの添削を手伝ったりする企業もあるようです。

推薦制度における最近の新しい動きが、「後出し推薦」です。これはもう推薦というより、入社の意思確認の同意書のようなものなのですが、流れとしては、選考試験に合格した後、入社誓約書と一緒に指導教官の推薦状を提出します。辞退すると推薦状を書いた先生に迷惑がかかるということで、会社側の辞退防止のための施策となっています。

これを厳密に“推薦制度”と言ってしまってよいのかどうか、議論の分かれるところですが、文系の学生の採用においても同様に、推薦状の提出を求める企業が増えています。しかし、推薦状のことを指導教官に相談したら、「そんなもの書けない」と拒絶されることがあるようで、私のところへ相談に来る学生が増えている状況です。

「推薦状を出さないと正式な内定にはしない」という会社は明らかに労働法違反です。口頭であれ、書面であれ、企業側が合格である旨の意思表示を行った時点で内定(労働契約の仮契約)の効力は発生するのですから。それなのに学生の無知に付け込み、推薦状を強要し、結果的に“オワハラ”につながるケースが増えているのは、好ましくない状況だと感じています。

加えて、最近困っているのは、そうした推薦制度をはじめとする自社の採用ルールが“当たり前”だと思い込んでいる若い採用担当者がいるのです。そうした担当者は、案の定、「推薦状持ってこないと内定取り消しです」といったようなオワハラっぽい言動を行っているようです。企業側が内定取り消しを行えるのは、経営環境の著しい悪化など、極めて限定的な理由のみですから、こうしたケースは労働法的には完全アウトとなり、ハローワークへの事前届け出が必要です。

最後は話が横道に逸れてしまいましたが、推薦制度という仕組み自体は、実は大学のキャリアセンターよりも歴史が長いものです。ですが最近は、日系の超大手企業が、グローバルな採用競争に勝ち抜くために、この仕組みをやめるような動きが出てきていると聞きます。せっかく企業と大学が長年培ってきた信頼関係の中で構築された機能ですので、何とか形を変えながらでも、この推薦制度が今後もうまく機能してくれることを願っています。
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著者プロフィール

金沢大学 就職支援室長 山本 均

1962年生、金沢大学法学部卒業後、株式会社ナナオに入社、採用教育に従事、その後株式会社アイオーデータ機器、沖電気工業株式会社にて人事採用業務に従事。2007年10月に帰省し、故郷金沢で人材紹介事業を中心とした人事コンサルティング会社、株式会社北陸人材ネットを設立、代表取締役に就任。2009年4月より金沢大学就職支援室長に就任(兼務)。学生の就職支援業務に従事する傍ら、大学の就業力向上プロジェクトに従事中。

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