歴史を動かす行動理論第28回 大山巌(おおやま いわお) | 採用、育成・研修、労務・人事に関する情報ならHRプロ

人事にプロのサポートを―新卒採用、中途採用、人材育成、研修、人材マネジメント、労務、人事システム、適性検査ならHRプロ

  • 大学と企業の合同相談会2018<2018.6.18開催>
歴史を動かす行動理論

第28回 大山巌(おおやま いわお)

株式会社ジェック 専務取締役 越膳哲哉
2018/02/07

西洋文化への憧憬と造詣が深かった。西洋かぶれと呼ばれた彼は「日本人最初のルイ・ヴィトンの顧客」であった。ヴィトンの顧客名簿に自筆のサインが残っているそうである。
同郷の東郷平八郎と並んで「陸の大山、海の東郷」といわれ、マッカーサーに英雄と心酔させた大山巌である。

大山の苦悩

大山は、維新後の1869年渡欧し、1870年から1873年の3年間、ジュネーヴに留学した。その彼のもとに驚くべき手紙が届く。
「西郷隆盛が鹿児島に帰参する。それにあわせて多くの薩摩藩士が同調し帰郷した」というのである。
明治政府にとっては吉井友実自らが大山の下を訪ね、解決のための帰国を嘆願させるほどの一大事であった。
帰国した彼を待っていた事態は、彼の予測以上に深刻なものであった。
1874年、西郷を政府に復帰させるという、当時の状況からするとほぼ解決不可能とも思える責任を背負って彼は薩摩に戻る。大山の必死の説得も西郷の決断を変えることは叶わず、ならばと大山は「自らが西郷と行動を同じくし運命を共にする」ことを申し出るのである。
しかしそれすらも叶わなかった。「お前は日本に役立つべき人材である。俺の役に立つ必要はない」と西郷に怒鳴りつけられ大山は黙して去ることになる。
大山には西郷の想いがわかっていた。「新しい日本を創るには新政府を守るしかない。しかし不平武士たちの存在はその根底を揺るがしかねない。生まれたばかりの政府を守るには、自分が彼らと運命を共にするしかない」というものである。
大山はその想いがわかるがゆえに、西郷のもとを去った。去るしかなかった。
そしてついに最悪の事態が起こる。西南戦争である。大山は鎮圧のために再び薩摩に向かうこととなる。半年以上にわたる激戦の末、籠城した西郷への砲撃命令が大山に下る。翌日早朝西郷は自刃。

信の雄、大山の行動理論

大山巌、1842年薩摩に生まれ、のちの陸軍軍人、政治家となる。西郷隆盛の従兄弟にあたる人物であった。

大山は、「信頼し任せ、責任は取る」ことで、配下の人間からの信が厚く、その統率力は群を抜いていた。また彼の胆力は際立っていたという。

騎兵第一旅団がロシア軍に包囲され、司令部が指揮混乱状態となった時、大山はとっさの機転で寝巻に着替え「さっきから大砲の音がしちょりますが今日は戦でもやってござるか?」と一同の気を抜く行動を選択する。これにより司令部は緊張感から解放され、状況把握が的確になり、指揮系統の機能が復活する。大山の胆力ゆえになしえた芸当であろう。

大山は6歳のころから薩摩藩の育成制度である郷(ご)中(じゅう)に入り、15歳年上である西郷隆盛から読み書きを教わった。
郷中での教えは「武士道の本義を実践せよ」「何事もよく相談の上処理すること」「無作法を避けよ」「嘘を言うな」「万事に質実剛健、忠孝の道に背かないこと」「弱いものいじめをするな」などがある。それらを学ぶ中で、薩摩武士の神髄である「卑怯を嫌い何事にも死を覚悟して臨む潔さと仲間を信じる精神」を大山は信念化していく。
彼の中にある「人とは本来弱い者である、と同時に信に応える者でもある(観)。ゆえに一度信じたならば信じぬくことで(因)、それに応える動きを取るようになる(果)。信を信じよ(心得モデル)」という行動理論が彼の言動を創り、周囲からの信頼を創り上げていく。

プロフィール

株式会社ジェック 専務取締役 越膳哲哉

メーカー・医療業界を中心に、営業・製造・開発・技術部門へのお取り組み実績多数。「お客様企業の経営変革」をテーマに、「論理性」「分析力」「判断力」「人間力」で、深い気づきのコースを展開するとの評価が高い。慶應義塾大学では、ヒューマンリレーションズをメインテーマとして、組織内コミュニケーションスキル・人間関係構築スキル向上に焦点を当てた講義を担当。

企業情報はこちら
提供サービスはこちら
セミナー情報はこちら

関連リンク

  • 人材育成コラム-プロが教えるコツとポイント-

    せっかく立てた人材育成計画 - 「研修」の取り入れ方で達成までの道のりは変わる

    人材育成計画で掲げた目標を達成するに当たっては、「OJT(On-the-Job Training)」、「OFF-JT(Off-the-Job Training)」、「自己啓発」の3つを継続的に実践していくことが必要です。中でも、多くの企業が注目しているのが「OFF-JT」の1つ、「研修」です。本コラムでは、人材育成計画を効率的に進めていくための研修選びのコツをご紹介します。

  • 海外進出企業の「人と組織の活性化」〜インドネシアに架ける熱き想い〜

    第4話:緊張感あふれる海外で磨かれる組織マネジメント力

    組織マネジメント関連の書籍は、時代を問わず、いつも売れ筋ランキングの上位に入っており、書店には多くの本が並ぶ。昔からの名著もあれば、いまの時代に合わせた新著もあり、いつの時代もビジネスパーソンにとって、組織をマネジメントすることへの興味関心は高いようだ。

  • 94歳現役人事コンサルタント、梅島みよが行く

    第10回 米国でダグラス.W.ブレイ博士と出会う

    この米国訪問は、時期的にも非常に恵まれていました。ちょうどこの頃、米連邦政府の雇用差別撤廃法に各州が批准し、米企業は、特にマイノリティとされる女性社員の活用と管理職への登用推進を始めていました。

  • 特別読み切り

    ハラスメント防止の鍵は思いやり

    総務省の「労働力調査年報」によると、2016年の労働力人口は6,648万人。これに、翌2017年の厚労省による「将来推計人口」の結果を交えて勘案すると、2065年には2016年時点より、労働力人口が、約4割減少する見通しだ。
    労働市場が衰退していく中で、今後必要とされるのは、女性の活躍や、病気や介護者を抱えていても働ける就業環境であろう。多様な人々が、多様な働き方で、幸せに生きていける社会を目指す中、最近、巷で話題となっている、パワハラ・セクハラ事件。こうしたハラスメントは、多様性、生産性はおろか、仕事にも人生にも、何一ついいことはない。その防止対策は、日本社会において重大なテーマである。

  • 人材育成コラム-プロが教えるコツとポイント-

    働き方改革の担い手でもある「管理職」を「成果を出せるリーダー」へ

    明確なビジョンをもってリーダーシップを発揮し、個人ではなく組織として成果を出すことができる人材が管理職のあるべき姿。分かってはいても、なかなか思い通りの人材を確保できないのが実情です。今回は、組織の成果を担う管理職の育成に役立つ「管理職研修」についてご紹介します。

  • 94歳現役人事コンサルタント、梅島みよが行く

    第9回 日本企業の「女子教育」に失望、米国企業視察旅行を企画

    女性講師の有能な働きぶりを見て、機を見るに敏な社長が「ウメさん、女性講師をもっと増員しよう」と言い、早速、募集を始めました。女性教育コンサルタントは、会社での勤務経験や、社会人としての十分な良識が必要です。若過ぎても不相応なので、対象年齢は28歳以上としました。すると思いがけず素晴らしい人達から数多くの応募があり、その中からまず4名を採用し、講師として教育しました。