日本企業に求められているのは、実行サイクルのスピードを上げ適材適所で勝てる組織をつくること

HRプロ編集部取材×注目人事トレンド

世界的なロングセラー『7つの習慣®』を世に送り出したフランクリン・コヴィー社がそのフィロソフィーに則り、目標と戦略を組織で実行するために15年の歳月をかけて研究し、開発したのが『実行の4つの規律(“The 4 Disciplines of Execution”)』だ。それをタイトルとした著書も2012年に出版された。昨今、日本の経営者や人事パーソンの多くが、企業として勝つための「戦略的人事」 の重要性を認識しているが、理想どおりに活動できている企業はほんのわずかだ。必要だとわかっている戦略や変革が組織として実行できないのはなぜなのか? その解を得るべく、今回は日本鋼管、NationalSteel、GEなどの人事責任者を経て、元LIXILグループ副社長を務めた人事のプロ、 八木洋介氏を招き、『実行の4つの規律』の共著者であり、フランクリン・コヴィー・ジャパン取締役副社長の竹村富士徳氏と「日本の人事の課題」「変革の必要性」「働き方改革の本質」「リーダーシップ」などをテーマに語ってもらった。

『実行の4つの規律』プロジェクトは著名コンサルタントの素朴な疑問から始まった

八木 『7つの習慣®』は今でもロングセラーとしてよく読まれていますが、出版されてからもう四半世紀以上経つのではありませんか。

竹村 1989年に原書が出版されてから29年、1996年に日本で翻訳本がでて22年になります。

八木 私は1996年か97年くらいに、著者のコヴィー博士本人からお話をうかがったことがあるんですよ。当時、私は日本鋼管からNational Steelに出向していて、人事にも携わっていたのですが、『7つの習慣®』の著者であるコヴィー博士の研修に多くの人事マネージャーたちと一緒に参加しました。

竹村 今日はその『7つの習慣®』を組織で実践するための『実行の4つの規律』に関してお話したいと思うのですが、『実行の4つの規律』の誕生は、八木さんのご経歴とも関係があるんですよ。世の中に戦略に関する本は山ほどありますが、実行に関する著書はそんなに多くありません。そのなかで代表作の1つである“Execution”、日本では『経営は「実行」』(日本経済新聞出版社)というタイトルで出版された本があります。

著者はGEのCEOジャック・ウェルチの右腕だったラリー・ボシディです。その本の共著者がコンサルタントのラム・チャランなのですが、彼は当社の社外取締役だったのです。そして15年ほど前、ラリーがフランクリン・コヴィー社の経営陣に対して発した質問が『実行の4つの規律』のプロジェクトを発足させるきっかけになりました。

八木 彼はどんな質問をしたのですか。

竹村 まず「皆さんの経験上、リーダーが苦労をしているのはどちらだと思いますか? 実行ですか、それとも戦略ですか?」と質問したのです。「実行だと思う」と私たちは答えました。2つ目の質問は、「リーダーは何を教育されていますか? 戦略ですか、実行ですか?」でした。私たちは、「戦略に関する教育だと思う」と答えました。

さらに彼は「リーダーの実行に本当に役立つものは何ですか? どんなに統制のとれた組織、有能な人材があふれる組織であっても、ときに、何年も戦略の実行に悪戦苦闘しているのはなぜですか?」と質問したのです。私たちは「わかりません。秘訣は何ですか?」と答えました。するとラム・チャランは、「私にもわからない。だから、あなたたちにやってほしい」と言ったのです。
八木 ほう、それは興味深いですね。

竹村 ラム・チャランはコンサルタントとして数多くの企業を見てきて、なぜ当たり前のことが当たり前にできないのかに疑問を抱いたのです。『経営は「実行」』のラリー・ボシディにしても、GEの外に出てみたら、戦略を実行できない方が世間では一般的だと気付くのですね。そこに「実行ギャップ」というテーマが生まれたというわけです。それでは、私たちはコンテンツメーカーとして、実行できる組織にするために何ができるのだろうと考えて10年以上研究し、開発されたのが『実行の4つの規律』です。

著者プロフィール

【対談】 株式会社people first 代表取締役 株式会社ICMG 取締役 八木 洋介
フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社 取締役副社長 竹村 富士徳



株式会社people first 代表取締役 株式会社ICMG 取締役 八木 洋介(左)
1955 年生まれ。株式会社people first 代表取締役/株式会社ICMG 取締役。1980 年京都大学経済学部卒業後、日本鋼管株式会社に入社。主に人事などを担当した後、National Steel に出向し、CEO を補佐。1999 年にGE に入社し、Healthcare Asia、Money Asia、GE Japan において人事責任者などを歴任。1992 年、MIT Sloan School にてMaster of Science 取得。2012 年に株式会社LIXIL グループ 執行役副社長 兼 株式会社LIXIL 取締役副社長 執行役員に就任。CHRO(最高人事責任者)を務め、同社の変革を実践。グローバル化、リーダーの育成、ダイバーシティの促進など、戦略的人事を推進した。
著書に『戦略人事のビジョン 制度で縛るな、ストーリーを語れ』(光文社新書、共著)がある。

フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社 取締役副社長 竹村 富士徳(右)
1969 年生まれ。フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社 取締役副社長、国立大学法人筑波大学 客員教授。1995 年、旧フランクリン・クエスト社の日本法人に入社。経営企画、経理全般、人事、プランナー関連商品の開発、販売、物流など多岐に渡って担当する。同社の売上高向上および利益改善に大きく貢献し、1998 年コヴィー・リーダーシップ・センターとの合併に伴い、フランクリン・コヴィー・ジャパンにて最年少で取締役に就任。米国本社との折衝はじめ、日本国内における同社事業の再構築の指揮を執り、2000 年取締役副社長に就任。「あらゆる人々と組織の大いなる力を解き放つ」というフランクリン・コヴィー社のミッションを現場で押し進め、経営に携わると同時に講師としても活躍。実践に裏打されたコンテンツへの深い理解が、ファシリテーションの強力なバックボーンとなっている。

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