人財マネジメント〜あの上司のもとで働きたい第1回 優れたリーダーの条件とは | 採用、育成・研修、労務・人事に関する情報ならHRプロ

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人財マネジメント〜あの上司のもとで働きたい

第1回 優れたリーダーの条件とは

戦略人財コンサルタント 代表 鬼本昌樹
2016/09/14

部下を持つ管理職にはある共通した悩みがあります。
「どうすれば部下は動いてくれるのか」
「優れたリーダーになるためには、どのような能力が必要か」

これまで、人事部長として多くの管理職の悩みを聞き、支援し、育成してきました。
この著者の体験を通して、これらの悩みを持った管理職がどのように乗り越えていくことができたのかを、全6回で紹介したいと思います。
世の中には、上述のような悩みを解決する良本が数多くあります。
たとえば、「人を動かす」「人を活かす組織」(いずれもD.カーネギー著)、「指導者の条件」(松下幸之助著)、「上司の哲学」(江口克彦著)など。
そういった、リーダーに関する書籍を100冊以上読んでみて、多くの人が同じことを言っていることに気づきました。私が気づいたこの共通項目は、「優れたリーダー」になるための必須項目と言えるでしょう。ですから、この部分さえ理解し、押さえることができれば、優れたリーダーとしての第一歩を歩むことができると思いました。実際、この必須項目を社内研修に取り入れて管理職養成コースを開発し、多くのリーダーを育成してきました。

優れたリーダーになるための必須項目とは何か。
そして、どうすれば、優れたリーダーとして、部下を動かし、「あの上司のもとで働きたい」と言ってもらえるのかを説いていきたいと思います。

時代を超えたリーダーの本質とは

リーダーをテーマした書籍を次々と読んでいくうちに浮かんできた共通項目。この共通項目だけを無駄なく説いている書籍はないものかと探していたところ、出会ったのが、今から2500年以上も前に書かれた兵法書、「孫子の兵法」でした。優れたリーダーに必要な重要な教えが網羅されているのはもちろん、リーダーとしての5つの心構えとその能力、その重要性を説いていました。

2500年以上も前の話なので、社会環境も生活環境も今と同じではありません。しかしながら、同書の内容を今の企業のリーダーに想定して考えてみたとき、優れたリーダーとしての本質を的確に説いているだけでなく、現代で求められるリーダー像にそのまま当てはめることができたのです。

孫子の兵法からみえてきたこと

このコラムでは、孫子の兵法を理解するのが、目的ではありません。
しかしながら、孫子の兵法に沿って、優れたリーダーの条件について話しを進めていきますので、全体の概要と、さらに、リーダーの条件の記述に絞った理解をしておきたいと思います。

◆5つのチェック項目「五事」と7つの検討材料「七形」

孫子の兵法は、全13篇で構成されています。その最初の篇が「始計篇」です。始計篇では、計画を練る重要性について説いており、行動を起こす前の「5つのチェック項目」と「7つの検討材料」について記載されています。

「始計篇」に出てくる5つのチェック項目、すなわちこれが、「五事」です。
@道徳・モラルがあるか 
Aチャンスを最大限に利用しモノにすることができるか 
B現状分析とその対応が的確にできているか
C優れたリーダーの条件を満たしているか 
D優れた仕組みが備わっているか


そして競合に勝つための優位性を検討する7つの項目が、「七形」です。
@どちらが誠実で道徳・モラルがあるか 
Aどちらのリーダーが有能か 
Bどちらのマーケット分析が優れているか 
Cどちらが社内外のルール(コンプライアンスなど)に対して厳格にしているか 
Dどちらに有能な人財が多いか 
Eどちらのリーダーが熟練しているか 
Fどちらが公正な評価、賞罰を行っているか


これらの概要テーマを見ただけでも、興味をそそられるかと思います。

今回取り上げるテーマは、「優れたリーダーの条件とはなにか」です。
五事の「C優れたリーダーの条件を満たしているか」では、その条件を「智、信、仁、勇、厳」とであるとし、どんなものかを説いていますので、これに沿って考察したいと思います。

リーダーの部下育成の責任

リーダーは、自分の担当する組織の役割に応じて、成果目標を設定し、具現化するための実行計画を策定します。そして、この実行計画を実現するための、必要な能力を持った部下が必要となります。もし、必要な能力が不足していたら、できる人材を育成しなければなりません。単に人を集めた集団では、求める成果は得られないからです。

この当たり前のことが、実はできていない、ということがよくあります。特に、必要な能力開発が分かっていても、予算がないとか、「自己研鑽」と称し間違った使い方をして部下任せにしているといった風に。

GEは、企業買収を成長戦略に組み込んでおり、頻繁にM&Aを行う企業です。
私は、GEに勤務している時に「変革のリーダー」、すなわち「チェンジ・リーダー」を務めてPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)を担当していました。買収した企業を、GEウェイで一日も早くビジネスが軌道に乗るようにし、従業員の意識、組織や人事制度、システムも一新させて1年以内に成果を出すプロジェクトを行うのです。

買収した企業の規模にもよりますが、通常は、チェンジ・リーダーひとりでは何もできません。統合を起こすための変革プロジェクトには、複数のメンバーの協力が必要です。たとえば、人事、情報システム、経理、経営企画、サービス部門といった要員から構成されます。単に、それぞれの制度を統合するだけではなく、その必要性、重要性、効果性などの目的や意図を、対人コミュニケーションを通して実現させなければなりません。
そのためには、やりたいことを説明する能力だけでは不十分です。相手のビジネスモデルを理解し、どこに大きな違いがあり、どこに大きな改革のポイントが存在するのかを見極める能力、相手の心理をも理解する能力、トップダウンとボトムアップのバランスを担保しながら推進する能力が求められます。

メンバーそれぞれがその分野のスペシャリストであることは最低条件ですが、さらに、彼らには人の心理を利用したコミュニケーションも求められます。しかしながら、この領域となると、さすがにメンバーに教育をしなければなりません。しかも、漠然とした心理を学ぶのではなく、信頼関係を構築するための心理的アプローチ、やる気にさせる心理的アプローチ、最後までやってみようとする諦めない心理的アプローチの3つに絞った教育を行い、プロジェクトを執行する必要があります。

リーダーは、部下に何を期待しているかを明文化し、プロジェクトの成功要因を一生懸命に部下に説明し、足りている能力・足らない能力を見極めなければなりません。さらに、部下の特性を見抜き、個性を活かした役割を与えなければプロジェクトは成功しません。

ですから、自分の好みの部下に育てるのではなく、自分の思いに沿って動いてくれる部下に育てる必要があります。

リーダーに求められる第一の役割とは部下の育成です。
そして、リーダーに必要な条件とは、「五徳」を備えていることです。

リーダーは“ぶれない軸”を持っているか

「孫子の兵法」では、優れたリーダーの条件とは「智、信、仁、勇、厳」であり、この5つをまとめて「五徳」と呼んでいます。五徳を身につけると、多くの部下から慕われ、「あの上司のもとで働きたい」と思われるリーダーになることができます。

では、部下から慕われる優れたリーダーと、部下から嫌われるリーダーとの違いは何でしょう。

それは、平時でも有事でもぶれない軸(思想・哲学・価値観・信念・責任・能力)を持っているかどうか、ではないでしょうか。
単に、誰かのマネをしたり、どこかの本や研修で学んだハウツーや、うわべのテクニック(伝える力、傾聴力、問題解決力、判断力など)で部下を動かそうとするリーダーでは、部下から慕われる、優れたリーダーであるとはいえないでしょう。

「ぶれない軸」を持つということは、特殊な能力ではありません。また、身に着けるにあたって、特殊な訓練も必要ではありません。私がこれまでGE(ゼネラル・エレクトリック)や大手企業の人事部長として、多くのリーダーを養成してきた経験や、効果のあった体験からも自信をもって言うことができます。必要なのは、五徳の心構えと能力を習得することだけです。これができれば、誰でも優れたリーダーになれるのです。

五徳を備えた真のリーダーとは

五徳からリーダー像を描いてみましょう。
「智」とは、知性・知略・判断力・理解力
「信」とは、部下との信頼関係、誠意
「仁」とは、部下への思いやり、リーダーの人間的魅力、包容力
「勇」とは、勇気、行動力、責任感、決断力
「厳」とは、厳格、規律、信賞必罰、法令とルールを厳しく順守する厳格さ

これらの全てが揃って、優れたリーダーと呼ばれ、組織を機能させ、部下を率いることができるのです。

次回は、五徳の最初の「智」に沿った「リーダー像」から、説いていきます。
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プロフィール

戦略人財コンサルタント 代表 鬼本昌樹

社会保険労務士
25年以上のIT、人事、経営の現場経験を通して独立。
オラクル、GEキャピタル、商社、大手通販などの米国企業、日本企業で人材開発部長、人事部長、役員、副社長を経験し、変革のリーダーとして、組織改革、制度改革、意識改革、人事部変革に貢献し、ベストマネジメント・アワードなどを受賞する。

現在、人事コンサルタントとして、
・タレントマネジメント
・パフォーマンスマネジメント
・デベロップマネジメント
と、米国で、行動心理学をマスターし、人が動く仕組み作り、マネジメント作り、そして、人作りに貢献している。日本企業、外資系企業、業界、規模を問わず、幅広くコンサルティング活動を行っている。

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