HR総研:「タレントマネジメントシステム」に関するアンケート調査 結果報告〜「タレントマネジメントシステム」の導入企業は7割、うち6割が「2年未満」〜

今回は、「タレントマネジメントシステム」に関する調査結果を報告する。
労働力人口の急速な減少とともに、価値観の多様化が進む日本社会において、経営方針に基づく戦略的な人材配置や人材育成が、企業の発展に不可欠となっている。そこで、従業員が持つタレントやスキル、経験値などの情報を一元管理することによって、組織横断的に戦略的な人材配置や人材開発するための人材マネジメント手法である「タレントマネジメント」と、その運用ツールである「タレントマネジメントシステム」について、日本企業の動向を調査した。
企業におけるタレントマネジメントの推進の重要性の認識や、タレントマネジメントシステムの「導入目的」「選定基準」「直面した課題」等、様々な実態について、フリーコメントによる具体的な意見も含めて検証した結果を、以下に紹介する。

<概要>
●「タレントマネジメント」という概念を「知っている」企業は7割
●「タレントマネジメントの推進」を過半数が重要視、特に「次世代リーダーの育成」に課題感ある企業が推進
●「タレントマネジメント運用」の割合は大企業で4割近く、企業規模に比例
●「タレントマネジメント運用」の最も重要な目的は「人材の適正配置」がトップ
●「タレントマネジメントシステム」の導入企業は7割、最優先の選定基準は「コスト」
●導入中の「タレントマネジメントシステムの利用期間」は6割以上が「2年未満」
●「タレントマネジメントシステム」導入効果の「実感ない」企業が4割、利用期間の浅さが影響か
●「タレントマネジメントシステム」の導入前は、導入決定までの工程に不安感を持ち、導入後は「必要データの収集」が課題

現在認識している人事課題は「採用力の強化」「次世代リーダーの育成」がトップ

まず、企業において現在認識されている人事課題の傾向を把握するため、「現在認識している人事課題」について聞いてみた。すると、「採用力の強化」及び「次世代リーダーの育成」がともに60%で最多であり、次いで「マネジメントスキルの向上」が44%、「新入社員や若手社員の早期戦力化」が40%などとなっている(図表1)。これを見ると、企業にとって喫緊の課題である人材の確保及び育成に関わる課題が、上位に挙がっていることが分かる。
一方、「ダイバーシティマネジメントの推進」や「健康経営」といった長期的視点で対策が必要となる課題については、未だ認識が低い傾向にある。また、「タレントマネジメントの推進」は全体では31%にとどまるが、従業員規模別でみると1001名以上の大企業では53%と半数を超えているのに対して、301〜1000名の中堅企業や300名以下の中小企業において、それぞれ27%、20%にとどまることに起因する。中堅・中小企業では、人事課題としての認識はまだ高くないことがうかがえる。

【図表1】現在認識している人事課題

「タレントマネジメント」という概念を「知っている」企業は7割

次に、「タレントマネジメントの認知度」については、全体では「知っている」が66%で最多であり、次いで「聞いたことがある」が26%、「知らない」が8%となっている(図表2)。「知っている」と「聞いたことがある」を合計すると92%であり、「タレントマネジメント」という概念について、認知レベルに差はあれども、9割以上の企業で認知されていることが分かる。
従業員規模別にみると、「知っている」企業の割合は、1001名以上の大企業では73%、301〜1000名の中堅企業では78%となっており、ともに7割以上の企業が「タレントマネジメント」という概念を知っていることが分かる。一方、300名以下の中小企業においては、「知っている」企業の割合は57%であり、比較的認知度が低い状況にある。
ただし、「タレントマネジメント」は、人の記憶力には頼れないほどの多くの人材情報をデータベース化し、多くの人材の中から戦略的に人材配置・育成するものであることから、従業員が少ない中小企業では、「タレントマネジメント」を必要としない企業が多いことも推測される。

【図表2】従業員規模別 「タレントマネジメント」という概念の認知度

「タレントマネジメントの推進」を重要視する企業は過半数、次世代リーダー育成に課題感

「タレントマネジメントの推進の重要度」については、全体では、「重要な人事課題の一つである」が42%で最多であり、次いで「他の人事課題より重要ではない」が31%、「特に重要な人事課題である」が15%などとなっている(図表3-1)。これより、「重要な人事課題である」(「特に重要な人事課題」と「重要な人事課題の一つ」の合計)は57%であり、半数以上が「タレントマネジメント」を重要な人事課題と捉えていることが分かる。
従業員規模別にみると、「重要な人事課題である」と認識する企業の割合は、大企業では73%、中堅企業では56%、中小企業では49%となっており、企業規模に比例して重要視する企業の割合も高くなる傾向がうかがえる。この傾向には、前述したとおり、中小企業においては、「タレントマネジメント」の必要性が低く、「タレントマネジメント」が人事課題として認識されていないことが影響していると推測される。
では、「認識している人事課題」と「タレントマネジメントの推進の重要度」の間にはどのような関係性があるのだろうか。

【図表3-1】従業員規模別 「タレントマネジメントの推進」の重要度
「タレントマネジメントの推進」を「特に重要な人事課題」もしくは「重要な人事課題の1つ」であると認識する企業においては、現在認識している人事課題として「次世代リーダーの育成」を挙げる割合が最多であり、それぞれ71%、68%となっている(図表3-2)。一方、「他の人事課題より重要でない」と認識する企業においては、現在認識している人事課題として「採用力の強化」が64%であり、「次世代リーダーの育成」を上回り最多となっている。
これらより、「タレントマネジメントの推進」は、単なる人材配置のみのためではなく、企業の将来を見据えた、戦略的な人材育成を必要とする企業において重要視される傾向にあることがうかがえる。

【図表3-2】「タレントマネジメントの推進」の重要度別 認識している人事課題

「タレントマネジメント」運用の割合は大企業で4割近く、企業規模に比例

実際の「タレントマネジメントの運用状況」については、「関心はあるが、運用していない」が52%で最多であり、次いで「既に自社で運用している」が21%、「関心はなく、運用していない」が18%などとなっている(図表4-1)。
従業員規模別にみると、「既に自社で運用している」企業の割合は、大企業では36%、中堅企業では27%、中小企業では9%となっており、「タレントマネジメントの推進の重要度」と同様に、企業規模に比例して運用している割合も高くなっていることが分かる。
「タレントマネジメントを運用していない理由」としては、「人事戦略が明確でないから」「効果的な活用ができる人材が不足しているから」「運用に際する人的負担が大きいから」が上位になっており、人事戦略と連動したタレントマネジメントの効果的な活用の難しさがあると考えられる(図表4-2)。一方、「運用のメリットを感じていないから」という理由は17%にとどまった。

【図表4-1】従業員規模別 「タレントマネジメント」の運用状況
【図表4-2】「タレントマネジメント」を運用していない理由

「タレントマネジメント」におけるマネジメント対象者は「全社員」が最多

実際に「タレントマネジメント」を運用している企業について、そのマネジメント対象者は、「全社員」が53%で最多であり、次いで「経営幹部候補者」が27%、「管理職候補者」が24%などとなっている(図表5-1)。
従業員規模別にみると、すべての規模の企業において「全社員」が最多であり、特に、中堅企業では64%が「全社員」を対象としている。次いで、大企業では「経営幹部候補者」が36%、中堅企業では「管理職候補者」が36%となっている(図表5-2)。これらをみると、大企業では、「タレントマネジメント」の対象者を少数に絞り込み、経営層の育成に特化したより戦略的な運用があることも分かる。

【図表5-1】「タレントマネジメント」におけるマネジメント対象者
【図表5-2】従業員規模別 「タレントマネジメント」におけるマネジメント対象者

「タレントマネジメント」導入の最も重要な目的は「人材の適正配置」がトップで4割

「タレントマネジメント」を運用している企業について、その「最も重要な目的・用途」は、「人材の適正配置」が39%で最多であり、次いで「戦略的な人材育成」が32%、「後継者(リーダー候補者)管理」が13%などとなっている(図表6-1)。
また、従業員規模別にみると、大企業では「戦略的な人材育成」が最多で47%と約半数を占めている(図表6-2)。この結果より、前述のとおり、大企業ではマネジメント対象者を少数に絞り込んだ上で、自社の経営戦略や事業等の推進に対するより効果的な活用が、タレントマネジメントの導入目的の根底にあることがうかがえる。

【図表6-1】「タレントマネジメント」の最も重要な目的・用途
【図表6-2】従業員規模別 「タレントマネジメント」の最も重要な目的・用途
2番目に重要な目的・用途は、「戦略的な人材育成」が36%で最多であり、次いで「人材の適正配置」が19%、「人材の適正評価」が14%などとなっている(図表6-3)。まずは、既存人材の適正配置を行った上で、経営目標を実現するための戦略的な組織づくりに向け、「戦略的な人材育成」が必要と考える企業が多いことがうかがえる。また、タレントマネジメントを運用する企業としては、人材を適正配置し、戦略的に育成するとともに、「人材の適正評価」まで連動した活用を想定していることがうかがえる。
さらに、3番目に重要な目的・用途については、「人材の適正配置」が19%で最多であり、次いで「人材の適正評価」「プロジェクト編成」「管理職候補管理」がともに14%などとなっている(図表6-4)。
これらの結果より、「人材の適正配置」及び「戦略的な人材育成」については、特に重要な目的や用途として多くの企業に認識され、その他の目的や用途の重要度については、各企業の経営戦略や方針等により、優先順位が分散していることがうかがえる。
「タレントマネジメント」という概念に関しては、一定規模の認知度があり、運用する企業の目的や用途に関する傾向が把握できた。では、タレントマネジメントの運用に必須となる膨大な社員データの一括管理は、どのように行われているのだろうか。

【図表6-3】「タレントマネジメント」の2番目に重要な目的・用途
【図表6-4】「タレントマネジメント」の3番目に重要な目的・用途

「タレントマネジメントシステム」の導入企業は7割、最優先の選定基準は「コスト」

タレントマネジメント運用を目的とした社員データの一括管理ツールである「タレントマネジメントシステム」の導入状況をみると、「システムを導入し、運用している」が49%で最多であり、「システムの導入準備中である」が19%、「システムを導入していない」が32%となっている(図表7-1)。この結果より、「システムを導入している(する予定である)企業」(「システムを導入し、運用している」と「システムの導入準備中である」の合計)は68%と、タレントマネジメントを運用する企業のうち約7割が、システムの活用が前提となっていることが分かる。
「タレントマネジメントシステム」については、あらゆる企業により様々な機能や特徴を持つ商品が提供されているが、システムを導入している(する予定である)企業は、どのような基準で導入するシステムを選定したのだろうか。

【図表7-1】「タレントマネジメントシステム」の導入状況
システムを導入している(準備中である)企業に対し、「導入するシステムの選定基準」について聞いたところ、「運用コスト」が65%で最多であり、次いで「初期コスト」が51%、「操作性」が40%などとなっている(図表7-2)。やはり、限られた予算の中で運用する必要があるため、コスト面の条件をクリアするのが最優先となるようであり、その次に、「操作性」や「機能の充足度」「組織構成への対応可能性」等の自社の状況において使いやすく、より目的に合った特徴を持つシステムを選択していることがうかがえる。一方、「導入実績」や「口コミ」等、他社の利用状況については選定基準としての優先順位は低くなっている。
また、導入する「タレントマネジメントシステムが搭載している機能」については、社員データの一括管理のために必須の機能「人材プロファイル」が88%で最多であり、次いで「目標管理」が79%、「多面的評価」と「スキル管理」がともに63%などとなっている(図表7-3)。

【図表7-2】「タレントマネジメントシステム」の選定基準
【図表7-3】導入する「タレントマネジメントシステム」が搭載している機能

導入中の「タレントマネジメントシステム」の利用期間は6割以上が「2年未満」

現在導入している「タレントマネジメントシステムの利用期間」については、「1年未満」及び「1〜2年未満」がともに31%で最多であり、次いで「2〜5年未満」が22%などとなっている(図表8)。この結果より、システムの利用期間が「2年未満」(「1年未満」「1〜2年未満」の合計)である企業の割合は62%であり、6割以上の企業が導入してまだ2年未満であることが分かる。

【図表8】導入中の「タレントマネジメントシステム」の利用期間

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HRプロとは

【調査概要】

アンケート名称:【HR総研】タレントマネジメントシステムに関するアンケート調査
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2019年10月4日〜10月11日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:企業の人事責任者、人材育成・タレントマネジメントシステムご担当者様
有効回答:186件

※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照をいただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
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