HR総研では「人事系システム」についてアンケート調査を行った。今回はそのうち、「タレントマネジメントシステム」についての調査結果をレポートする。

調査結果では、タレントマネジメントシステムの導入は、301〜1000名の中堅企業で21%となり、昨年度より7ポイント増加した。これは1001名以上の大規模企業の13%を超える導入率である。

人事担当者は、タレントマネジメントシステムにどのような機能が必要だと考えているのか、タレントマネジメントシステムについての意見などを含め、詳細をご覧ください。

タレントマネジメントシステムの導入企業は13%、検討中も13%

タレントマネジメントシステムについては様々な定義があるが、ここでは「採用、育成・能力開発(研修管理、eラーニング、スキル管理)、目標管理、評価・パフォーマンス(360°調査、コンピテンシー評価)、報酬、後継者管理、キャリア開発、社員プロファイル等などの機能を有するシステム」として回答してもらった。

「導入済み」は全体では13%、「導入を検討している」も同率の13%である。規模別にみていくと、1001名以上の大規模では、「導入済み」が13%であるが、「導入を検討中」が29%と3割近くある。1001名以上に限って言えば、導入済みと検討中を合わせて4割になっており、タレントマネジメントシステムがようやく「普及してきた」と言えるかもしれない。

今回注目すべきは、301〜1000名の中堅規模の企業が21%導入済みである点だ。これは昨年度より7ポイント上昇している。導入時期に関する設問でも、2015年という回答が多くみられたことから、中堅規模の企業でのタレントマネジメントシステムの導入が進んだようである。

〔図表1〕タレントマネジメントシステムの導入・検討状況

タレントマネジメントシステムに必要な機能のトップは「社員プロファイル」

タレントマネジメントシステムで必要な機能は何だろうか? 回答で最も多かったのは、「社員プロファイル」(71%)だった。第2位は、「人事考課(パフォーマンス管理)」で61%、第3位は2つあり、「目標管理」と「キャリア開発」で50%である。

この順位を見ると、人事がシステムで行っていきたいことは何なのかがよくわかる。第1は、社員一人ひとりの状況を見える化することだ。人事給与システムなどで所属の履歴や保有資格、家族構成などを記録することが可能なものがあるが、たとえば、プロジェクトや業務経験、保有しているスキルなどを記録し、さらに検索したり分類したりすることまではできないものが多い。人事システムの場合、人事担当者だけが入力・編集できるもので、社員が自分で入力できるわけではない。人事が本当に使いたいデータは、社員の現状の姿なので、社員自らがデータにアクセスして入力できるものになるだろう。

「人事考課(パフォーマンス管理)」や「目標管理」についても、システム化を望む声が大きい。現状ではエクセルシートを使って評価を行い、最終の結果のランクや数字だけを人事に提出する、という方式の企業が多いからだろう。人事としては、最後に提出されたランク・数字だけが頼りとなるわけで、現場で実際に、各自の何がどのように評価されているのかは見ることができないわけだ。

「目標管理」では、本人―上司−上司の上司といったワークフローで書類を回しながら、戻して修正したり、複数の上司がレビューしたりといった作業を行わなければならない。書類の保管、更新作業中に紛失した、データが壊れたなどといったアクシデントも起こるし、最後の締め切り日までに実施してもらうためにフォローするにしても、どこまで進捗しているかが把握できない。システム化することで、こうしたアクシデントは回避できるし、進捗管理機能があれば、進捗が遅れている人をサポートすることも可能だ。タレントマネジメントシステムの導入を検討するなら、これらの機能が必要だというのはもっともなことである。

〔図表2〕タレントマネジメントシステムに必要だと考える機能

タレントマネジメントシステムを選定する基準は「費用」と「使いやすさ」

タレントマネジメントシステムを選定する基準を聞いたところ、第1位は「初期費用」で70%、第2位は「保守費用/利用料」で63%であり、費用面を重視する声が多かった。第3位は「使いやすさ」で62%である。第4位「設定の柔軟性」54%、第5位は「機能の充足度」46%と続く。

業務をシステム化するとき採算可能性を検証するが、一般的にはシステム化することでどれだけのコスト削減ができるのか、もしくは業務効率や売上・利益がどれくらい向上するかといったことが問われる。しかしタレントマネジメントシステムは、それ自体でコスト削減をもたらしたり、直接売上・利益向上につながるものではない。人材マネジメントをより効率的に行うことで、個人の力量や組織力を向上させ、企業の付加価値向上をもたらすものである。結果として売上・利益向上につながるが、その結びつきは間接的であり、数値評価がしにくい。そうした点からも、コストをかけるのが難しい状況がでてくるのだろう。

〔図表3〕タレントマネジメントシステムを選定する際の基準

タレントマネジメントシステムを導入・検討しない理由は「予算」と「適したシステムがわからない」

タレントマネジメントシステムを導入していない、または導入を検討していない場合、その理由を聞いた。「予算」という回答が最多で36%、次いで「自社に適したシステムがわかならい」と「システムがなくても管理できる」が同率の22%だった。

「自社に適したシステムがわからない」のは、自社の要件を詰める切れていないか、もしくは様々あるタレントマネジメントシステムの特徴や自社への適合度合がわからないということであろう。

「システムがなくても管理できる」という回答は、規模別にみると1001名以上の大規模ではわずか5%であり、中堅と中小がそれぞれ30%、27%で全体として22%となっている。

〔図表4〕タレントマネジメントシステムを導入・検討しない理由

「使いこなせるか?」という不安の声が多いが、システムの発展に期待

タレントマネジメントを行うことやタレントマネジメントシステムについて、自由な意見を募った。回答のなかから代表的なものをご紹介しよう。

肯定的な意見としては、
「統合的に人材の透明化を図りたい」(1001名以上、メーカー)
「人事の役割を考えた場合、今後その必要性は大きくなっていく。経営に対して迅速・的確な提案を実行するのに不可欠」(サービス、301〜1000名)
といった声があった。

一方、有効性を認めながらも不安や疑問の声としては、以下があがった。
「非常に有効だと思う反面、本当に使いこなせるのかという不安も払しょくできない。人事ではなく、現場の管理職が活用できるようなスペックで作られているものが非常に少なく、あくまでも人事の活用するツールとして想定されているものが多かった。弊社のような労働集約型ビジネスにおいては、人事のツールとして位置付けるのは非現実的だと感じた」(1001名以上、サービス)
「教科書的には必要性は理解できるが、自社で具体的にどのような活用ができるのかイメージできない」(1001名以上、メーカー)
「管理する項目が多すぎるとメンテナンスする際に負担になるので、形骸化してしまわないか不安」(1001名以上、メーカー)

これらの声を見る限り、タレントマネジメントの必要性・有効性と、コストや業務負荷を天秤にかけ、そのどこに落としどころを見つけていくか、というところが現状としては多数であるようだ。

しかしここ数年で、低価格で導入できるクラウド製品がベンチャー企業などからでてきており、一方でビッグデータアナリティクスやAIを活用した製品が、メガベンダーから提供されはじめている。
「人事担当者側の使い方や意識の持ち方次第では、タレントマネジメントシステムを有効に活用できていないことが多いと聞くが、システム側の機能発展(AI導入等)により解決できるようになると良い」という声もあったが、そうした期待が実現してきているのだ。

テクノロジーの進歩によって、人事がやりたいことが簡単にできるようになってきている。「まだ、いずれは・・」ではなく、今すぐに取り組めば、それだけ効果が出るのも早い。タレントマネジメントは、人事が経営に最も貢献できる取り組みである。そろそろ様子見を脱却して、本格的に導入を検討してみてはどうだろうか。
【調査概要】
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査対象:上場および非上場企業の人事責任者・担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2016年5月25日〜6月2日
有効回答:106件 (1001名以上:32件、301〜1000名:24件、300名以下:50件)