HR総研:「働き方改革」実施状況調査【3】有給休暇「休み方改革」進行中。「年休の計画的付与」は半数の企業が実施。

「働き方改革」実施状況調査の第3回目は、「有給休暇取得」についてレポートする。
政府は「第4次男女共同参画基本計画」において、「2020年までに有給休暇取得率を70%とする」という目標を掲げており、官民一体となって「休み方改革」が進行中だ。
政府の数値目標設定から3年が経とうとしている今、日本人の「休み方改革」は、どの程度進んだのだろう。
今回の調査によると、有給休暇取得率60%以下の企業が76%もあり、取得率81%以上の企業はわずか6%という残念な結果となった。有給休暇取得率向上のために、企業はどのような施策や取り組みを行っているのか、また、どのような課題を抱えているのか。詳細は以下をご覧いただきたい。

有給休暇取得推進に取り組む企業は65%

「年次有給休暇の取得推進のための取り組みはありますか?」という質問に対し、65%の企業が「ある」と回答した。
企業規模別で比較すると、規模が小さくなるにつれて、取り組みが「ある」と回答する企業数も減少している。前回レポートでお伝えした「労働時間短縮の取り組みがありますか?」という質問でも、同じ傾向が見られた。取り組みの有無に対して、実際の有休取得率はどのような傾向にあるのだろう。

【図表1】年次有給休暇取得推進の取り組みはあるか

年次有給休暇取得率の最多は「41〜60%」

年次有給休暇取得率について質問した結果、取得率「41〜60%」が全体の32%で最多となった。2位は取得率「21〜40%」(23%)、3位は「20%以下」(21%)である。
企業規模別で見ると、従業員数300名以下の中小企業では、有給休暇取得率60%以下の企業が8割以上を占めており、従業員数301〜1000名の中堅企業や、1001名以上の大企業と比較して、取得率が低いことが分かる。
業務消化がマンパワーに頼らざるを得ない仕組みだとしたら、やはり業務量との兼ね合いで有休を取りづらいケースも少なくないだろう。

【図表2】年次有給休暇取得率

最も多い制度は「時間単位や半日単位での年次有給休暇制度」

年次有給休暇の取得推進のために、企業はどのような制度・施策を実施しているのだろうか。最も多い制度・取組は、「時間単位や半日単位での年次有給休暇制度」(72%)であった。続いて、「誕生日等の決まった日や申告した日を年次有給とする休暇制度」(23%)、「ブリッジホリデー等による、連続休暇の計画的付与制度」(21%)、「業務繁閑に対応した休業日の設定」(17%)、「班やチーム別での交代制付与方式(シフト制など)」(10%)と続く。
時間単位や半日単位での有休消化は、管理側としては処理がやや煩雑となるが、従業員にとっては身体の負担を軽減し、突発的な家庭の事情にも対応でき、他の従業員への配慮も損なわないため、比較的受け入れられやすい制度であると言える。なお、企業規模別に見ると、中小企業での導入率(77%)が大企業での導入率(67%)よりも10ポイントも高いことに注目したい。一般的に各種施策においては、大企業のほうが導入率が高いことが多くみられるが、こちらに限っては異なっている。
「その他」を選択した企業からは、「取得日数の義務化」(サービス)、「年間15日間の有給休暇取得推進日を設置」(メーカー)、「プレミアムフライデーの推進」(情報・通信)などの制度が報告された。

【図表3】年次有給休暇取得推進のための制度

半数の企業が「計画的取得」を推進中

年次有給休暇取得推進のため、取り組んでいる活動について質問した。
第1位は「年次有給休暇の計画的取得」(51%)であり、第2位は「年次有給休暇取得率の目標設定」(22%)となった。
厚生労働省は、「年次有給休暇の計画的付与制度」を推奨している。これは「年次有給休暇のうち、5日を超える分については、労使協定を結べば、計画的に休暇取得日を割り振ることができる」という制度だ。昨年のHR総研調査と比較すると、計画的取得に取り組む企業の割合は16ポイント増えており、少しずつではあるが浸透しているものと思われる。
一方で、「業務の標準化/プロセスの改善」(8%)、「適正な人員配置による一人当たり業務量の削減」(4%)、「サポート体制の整備(代替要員の確保、チームでの業務体制等)」(3%)、「アウトソーシングやICT導入による業務量の削減」(3%)など、業務の効率化、労働生産性の向上に関する取り組みはポイントが低い。有給休暇が取りやすい「業務体制の改革」は、まだまだハードルが高いようだ。

【図表4】年次有給休暇取得推進の取り組み・活動

課題は「業務量が多く、人員が不足している」「休んだ人の業務をカバーする体制がない」

続いて、有給休暇取得推進における課題について聞いてみた。
トップは「業務量が多く、人員が不足している」(65%)で、2位は「休んだ人の業務をカバーする体制がない」(43%)であった。
3位以下には、「従業員の計画的な年休取得に対する意識が薄い」(38%)、「職場に取得しにくい雰囲気がある(上司や同僚も取っていないなど)」(32%)、「突発的な業務が生じやすく、計画的な休暇を取得しにくい」(29%)が続く。
業務過多、人員不足、業務の非効率性が上位を占めるものの、一方で、企業文化・風土に起因する課題もあることが分かる。
「休み方改革」は、「労働生産性の向上」と表裏一体であるだけでなく、休めるのに休めない「企業風土改革」を推し進める必要がある。

【図表5】年次有給休暇取得推進の課題
最後に、有給休暇取得推進についてフリーコメントで広く意見を求めたところ、94件もの回答が得られた。特筆すべきは、年休取得率の推進そのものに対する疑問が散見されたことだ。紙面の都合上、全てを紹介することはできないが、その一部を掲載する。今後の参考にしてほしい。

<大企業(従業員数1001名以上)>
・最終的には個人の意識を変えないとダメであり、そのためには社内の風土を変える必要がある(仕事が忙しくて取れないは言い訳)。(情報・通信)
・会社指定で日程を決めて取得させるのは反対。個人が自由に取得できる風土を醸成すべき。(メーカー)
・日本は旗日がそもそも多い上に有休を消化させようとするのは無理があると感じている。有休消化日数が義務化されるのであれば、現在の夏季・冬季休暇などを有休消化に当てないと現実的には消化できないと感じている。(メーカー)
・権利は正当に使用されるべきだが、取るに取れない人がおり、それを全く業務の異なる立場からすると見ているしかない、という状況が如何ともしがたい。結果、数字だけで「上手くいってます」、記録だけで「問題ありませんでした」ということになりかねない。(メーカー)
・取得を推進するのではなく、権利として「取っても良いものだ」という意識を会社全体で醸成していかなけばならないと思う。(メーカー)
・日本は海外に比べ生産性が低いといわれている。個別の問題以外に、そういう根本から変えていく必要があると思う。(メーカー)
・取得を推進していくことは必要だが、労働集約型産業では実施が困難。時間単位での取得を可能とするなど、根本的な見直しが必要。(サービス)
・現在の取得促進策では限界があり、新しい発想が必要と考えている。また、在宅勤務などが本格化してきた際に、年次有給休暇取得との兼ね合いが気になる。(メーカー)

<中堅企業(従業員数301〜1000名)>
・アウトソーシング、業務システム改善、人員整理(増減含む)等により、業務負荷を減らすことで休みを取れる運用を。(サービス)
・取得したい人は取得出来ているが、取得したくても(業務量のせいで)出来ない、そもそも取得したくない、といったように分類される。有給休暇の取得推進の陰で『有給休暇取得推進をやめて欲しい』という声もあり、二進も三進もいかない状況。(メーカー)
・オペレーションの担い手である中高年の意識が中々変わらない。休暇取得率が悪ければ賞与評価や通年評価を下げるとした、あまりやりたくない手法を取らないといけないのかも知れない。(情報・通信)
・取得率が70%を超えており、100%の取得は目指していない。完全週休二日制を実施している中、現状これ以上の取得は会社業績に影響が大きいと考えている。取得の推進は必要だが、厚生労働省の掲げる70%を達成している以上、現状制度の維持で進んでいく予定。(情報・通信)
・業界、会社規模による違いがあるので、官庁による目標設定は如何なものかとも思う。(情報・通信)
・日本ではそもそも祝日等が多いので、年休の取得により営業日数が少なくなると顧客への説明が難しくなる。もう少し「成果物の質・内容」を評価、納得してもらう方向にシフトしていかないと抜本的な解決にはつながらないと思われる。(情報・通信)
・会社としても有給休暇ありきの人員体制を整えるしかない。(運輸・不動産・エネルギー)

<中小企業(従業員数300名以下)>
・大変良いことだと思う。組織内での業務シェアを拡げ、管理職自らが先頭に立って取得推進する風土を作っていきたい。(サービス)
・まず仕事の改革が必要。「休みにくい」も単なる雰囲気ではなく、根底には組織に根付いている仕事のやり方の問題がある。残業と同じで、「もっと休め」というだけでは何も変わらない。しかし、自主的な改革任せでは時間がかかる。制度的枠組みをもって強制することによって、仕事を変えざるを得なくなり、風土改革の速度が上がるという期待も持ちうる。(メーカー)
・出勤日数が減ると個人の売上が下がり、会社の業績も下がる。休暇取得者のカバーが出来るような人員を確保することが困難。(商社・流通)
・国民の祝日を削減して、平日の数を増やしてほしい。休みだけ増やしても仕事が回らなくなる。(商社・流通)
・今後益々少子高齢化の影響を受け、労働力不足が懸念される。人材獲得競争が熾烈を極める中、生産性向上とともに企業価値向上、競争優位性を向上させる事は重要である。その為にも取得推進は是非とも行うべきである。(運輸・不動産・エネルギー)
・人員不足状態で、有休が取りづらい環境にある。職場間での温度差、特に、事務所と工場間での取得し易さに大きな差が出ている。離職が増加しないか心配。(メーカー)

【調査概要】

アンケート名称:【HR総研】働き方改革実施状況に関する調査
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2018年1月19日〜1月25日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:上場及び非上場企業の人事担当者・働き方改革担当者
有効回答:266件

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