HR総研では、「働き方改革」の実施状況についてアンケート調査を実施した。
その結果、93%の企業がなんらかの改革に取り組み中、または検討中であることが分かった。これは、1年前の調査を20ポイントも上回る数字である。
本調査ではまず、「働き方改革全般」「労働時間」「休暇取得」の3つについて質問した。今回は、「働き方改革全般」についての調査結果を報告する。
●「働き方改革」に取り組み中の企業は71%、検討・予定中は22%。
「働き方改革」への取り組み状況としては、「積極的に取り組んでいる」(26%)、「一部、取り組んでいる」(45%)となり、合計で71%に達した。「取り組みを検討中・予定中」は22%であり、全体で93%の企業がなんらかの取り組みを実行または検討していることが分かる。
【図表1】「働き方改革」に取り組んでいるか?

●目的は「長時間労働の是正」(85%)が最多。
次に、「積極的に取り組んでいる」「一部、取り組んでいる」と回答した企業に、取り組みの目的について、当てはまるものを複数選択してもらった。その結果、「長時間労働の是正」(85%)、「生産性の向上/業務の効率化」(77%)がトップ2を占めた。この項目は、政府が提唱する「働き方改革」の目的にも合致するもので、多くの企業に共有されていることが分かる。
続いて、「従業員の健康増進」(48%)、「ダイバーシティの推進」(47%)、「従業員満足度の向上」(46%)が並んだ。これらは、「働き方改革」を「従業員視点」から眺めた意義・目的に適い、約半数の企業が取り組んでいる。
【図表2】働き方改革の目的

●効果の実感は約6割。2割は効果の実感なし。
取り組み全体の効果について質問したところ、「効果が出ている」(11%)、「やや効果が出ている」(50%)となり、6割以上が効果を実感していることが分かった。一方で、「あまり効果が出ていない」(20%)、「効果が出ていない」(2%)が全体の約2割を占め、「どちらともいえない」は17%だった。
【図表3】取り組みの効果は出ているか

●「長時間労働の是正」以外は、効果の実感が3割を下回る
「効果が出ている」「やや効果が出ている」と回答した企業に、どのテーマで効果が出たのか質問した。すると、「長時間労働の是正」が83%を占め、ダントツ1位となった。一方で、目的の2位にあがった「生産性の向上/業務の効率化」は31%にとどまった。「長時間労働の是正」は明確に数値で把握できるため、実行に移しやすく、成果も実感しやすい。対して、「生産性の向上/業務の効率化」は、より本質的な改革目標として8割近くが目的に掲げているものの、道のりはかなり険しいようだ。
他のテーマに関しても、効果の実感は30%を下回る結果となり、「長時間労働の是正」以外では、「あまり効果を実感していない」という現状が明らかとなった。
【図表4】効果が出たテーマ

●具体的な取り組みのトップは「残業時間の削減」(82%)
具体的な取り組みについて聞いてみたところ、「残業時間の削減」(82%)、「有給休暇の消化促進」(61%)、「多様な勤務時間の導入(テレワーク、時短勤務、フレックスタイム制など)」(46%)、「柔軟な勤務制度の導入(育児・介護・病気療養支援など)」(41%)、「女性活躍の推進」(40%)が上位5つを占めた。「その他」の取り組みでは、「業態転換、一部事業の撤退」(300名以下、サービス)という大胆な回答もあり、働き方改革が「経営戦略」にも影響を及ぼしている様子が窺われた。
【図表5】具体的な取り組み

●「高齢者雇用の促進」は効果の実感が高い
それぞれの取り組みについて、「うまくいっていると思われるもの」を複数回答してもらった。その結果、取り組みの割合同様、トップは「残業時間の削減」(66%)となったが、2位に「高齢者雇用の促進」(65%)、5位に「従業員の健康促進施策」(45%)、6位に「オフィスの環境整備」(44%)が躍進した。
「高齢者雇用の促進」は、実施している企業が全体の21%しかなかったが、その半数以上が効果を実感している。高齢者雇用に積極的な企業はまだまだ少ないが、取り組むべき意義は高いだろう。「長時間労働の是正」を目的とした施策に効果を実感している企業は多いが、今後は「労働環境の改善」や「業務の効率化」に関する施策でも、高い効果が出てくることが期待される。
「うまくいっている施策はない」とする企業が1割近くあるのが気になる。他社と同じやり方を実施すればうまくいくものでもないが、他社との情報交換は必ず何らかのヒントになるだろう。ぜひ情報収集に努めてほしい。
【図表6】取り組みのうち、うまくいっていると思われるもの

●「管理職、経営層のコミットメント」に期待大
人事担当者が「働き方改革」を推進する上で、どこに課題を感じているのだろうか。
アンケートの結果、1位は「管理職の強いコミットメント」(53%)、2位は「経営層の理解と強い推進力」(48%)となった。それと比べると、「一般社員の強いコミットメント」(31%)は、課題感がやや低い。組織改革には全社挙げての行動改革が不可欠だが、施策を推進する側からすると、管理職と経営層の強いコミットメントに期待する声が多いことが分かる。
続いて、「目指すゴール・方針・指標の明確化」(38%)、「業務量に対する適正要員の不足」(35%)、「企業風土の適合」(35%)が並んだ。
企業規模別に見ると、大企業では「目指すゴール・方針・指標の明確化」(49%)が高い数値を示していた。規模が大きくなるほど、コンセンサスを取るべき人数も増えてくる。適切なKGIやKPIをどこに定め、効果をどのように測定していくか。「働き方改革」を推進する人事部門にとっては、より本質的な課題であると言えるだろう。
【図表7】「働き方改革」を推進する上で、どこに課題を感じるか

【調査概要】
アンケート名称:【HR総研】働き方改革実施状況に関する調査
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2018年1月19日~1月25日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:上場及び非上場企業の人事担当者・働き方改革担当者
有効回答:266件
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