「トランスファラブルスキル(Transferable Skill)」とは、「移転することができるスキル」という意味で、ビジネスパーソンが別の職場への異動や転職をした場合、そこで転用・応用できるスキルを指す言葉です。

仕事をするための基礎的スキルといえます。ビジネスパーソンがある仕事において能力を発揮し、成果を出すためには、その仕事に特有の専門的な知識や技能が必要ですが、それらのレベルがどれほど高くても、基礎となるトランスファラブルスキルが足りなければ、能力を活かし、高い成果を上げることは難しくなります。

トランスファラブルスキルには、大きく分けて3つがあるとされています。1つ目は、多様な情報の中から課題を捉え、仕事の段取りを組み立てて実行する「対課題スキル」。2つ目は、課題に対して主体的に取り組み、成果を上げるために自らをコントロールする「対自己スキル」。3つ目は、チームでのコミュニケーション力や交渉力など、仕事で成果を出すための人間関係を構築する「対人スキル」です。

また、トランスファラブルスキルは、近年、イギリスの各大学が博士課程学生やポスドクを対象に、これらの人材が大学のみならず社会で広く活躍するために必要なスキルとして位置付け、スキル開発トレーニングを推進してきたことでも知られています。トランスファラブルスキル・トレーニングと呼ばれるこの取り組みは諸外国で高く評価され、日本の大学でも、社会にとってより魅力ある博士人材育成・輩出のための有効なプログラムとして注目されています。

例えば、大阪大学では、博士課程学生やポスドクなどを対象としたトランスファラブル・スキルズ・ワークショップとして、研究や仕事で自分が伝えたいことを相手に正しく効果的に伝えるプレゼンテーション技法、専門外の人に自分の研究の内容と意義をわかりやすく説明する方法、チームワークやメンタリングに関する知識やスキルなどを学ぶセミナーを実施しています。

イノベーション創出力が高い海外企業と、高いとはいえない日本企業の違いのひとつは、博士人材の採用数の差だと指摘する声もあります。今後、各大学がトランスファラブルスキル・トレーニングを推進し、研究分野の高度な専門能力と企業で活躍できる能力を兼ね備えた博士人材が輩出されるようになれば、イノベーション創出力の強化をめざす企業にとって、大きな力になりそうです。