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目標管理でプロセスを評価してはならない

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2017年10月06日

目標管理を業績評価のツールとして用いる企業は多い。ちなみに公務員の業績評価は、「目標管理によることが適当」との通達が総務省から出ており、事実上、業績評価=目標管理となっている。

この目標管理の達成度を評価する際、達成に至るプロセスも含めて評価するものを見かける。

たとえば、ある季節商品について1,000万円の売上を目標としていたところ、暖冬の影響があって実績は950万円となった。S~Dの5段階評価のとき、本来は「未達」でC評価なのたが、環境変化の中で頑張ったことを酌量し、「達成」とみなしてB評価とするといったケースだ。

このような評価の仕方は、次の3つの点で問題がある。

① 原因究明があいまいになってしまうこと
そもそも何のために評価をするのか? 給与・賞与等の査定のためというのもあるが、これは副次的な目的にすぎない。評価は、目標到達度がどうであったかを判定し、なぜ未達となったのか、その原因を考え、明らかにして、今後に活かすことである。これを達成していないのに達成したことにすると、究明がおろそかになる可能性が高い。

② 今後の目標管理に悪影響を及ぼすこと
目標管理は、マネジメントサイクルの1つであり、1期間をもって終了するのではない。その結果を踏まえて新たな目標を立て、管理していくというサイクルを回すことで、業績を向上させるとともに本人が成長していくものである。もし、達成していないのに達成したということになれば、スタート段階で誤っていることとなり、適正なサイクルを回せなくなる。

評価者の主観が入り評価が不公平になること
たいていの社員は目標に向かって努力をするし、程度の差はあれ、何らかの逆風が吹く。このとき、ある上司はそれを認めて、評価の底上げをし、ある上司は認めずに結果だけを評価するという事態が発生する。評価の底上げが行われるのは、多くはC評価をB評価にする場合である。つまり、頑張ったのだから、せめて標準のB評価にしようという温情をかけるのだ。中には、そのような温情により、恩を売ったり、上司の権威を見せつけようとしたりする管理者もいるかもしれない。

こういった問題を防ぐには、目標管理の評価においては達成度そのものを評価するという原則に徹することである。では、達成に至るプロセスを無視するのかといえば、そうではない。その点は、次の2つで対応する。

① 努力そのものは、能力評価や行動評価等でフォローする
② 環境変化には、目標の修正や変更を行う

なお、どうしても業績評価の中でプロセスを評価したいのであれば、達成度評価とプロセス評価を別にすべきである。たとえば、次のような努力加点のルールを設けるのも一法である。

「達成度評価がCまたはDで、考えられる手段・方法は実行したにもかかわらず、外的要因で期待どおりの成果が得られなかった場合や、突発業務の発生等、当初に予見できなかった事態への対応のために目標達成できなかった場合は、1・2次評価者の合議により〇点を加点することができる」

ただし、「評価者の主観が入り評価が不公平になる」という問題が残る点には注意しなければならない。

最後に誤解のないように付け加えておくと、業績評価において、結果に至るプロセスがどうでもよいというわけではない。むしろ、なぜ達成できたか、なぜ未達だったのか、プロセスにも焦点を当て、しっかりと検証していくことは極めて重要である。だからこそ、達成度を正しく評価することが大切なのである。

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