人事を変える集合知コミュニティ HRアゴラ

研修の効果測定

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2016年06月03日

「研修をやった後、どれくらい効果があるのかを測定できないか?」という質問を、経営者や研修担当者からときどきいただく。
会社からすると、お金をかけてやっている(=投資している)のだから、リターンがどれくらいあるか知りたいのは当然である。

これについて、コンサルタント同士のある勉強会でテーマとなり、たまたま私が報告者であったことから整理してみたことがある。厳密な測定はともかく、ある程度の測定は、どの企業でも可能というのがそのときの結論だ。

勉強会では、やみくもに「測定できるかどうか」「どのような方法があるか」といった話し合いをすると、各々が自分の経験を述べ、漠然とした議論に終始するおそれがあったので、整理の枠組みとして4W1Hを使った。すなわち、What(何を=どういう効果を)、When(いつ)、Who(誰が)、Where(どこで)、How(どのように)測定するかである。

まずWhatで、何をもって効果と認識するかを明確にする必要がある。研修の効果は大きく次の3つの段階に集約できると考えられる。

① 知識・スキルの獲得・向上
② 実践・行動の変化
③ 業績の向上

簡単にいえば、知識やスキルを高め、それをもとに行動を示し、これまで以上の成果を出すということだ。特に冒頭の質問での研修の効果とは、結局のところ③の「業績の向上」を意味するはずである。ただ、いきなり③を求めるのではなく、①②のステップを踏んで初めて③に到達できるわけだ。

①~③をそれぞれ4W1Hでまとめると次のようになる。

What(何を)…………… ①知識・スキルの獲得・向上
When(いつ)…………… 研修終了直後
Who(誰が)………………… 研修講師、研修責任者・担当者
Where(どこで)……… 研修の場
How(どのように)……… ペーパーテスト、実技テスト

What(何を)…………… ②実践・行動の変化
When(いつ)…………… 一定期間経過後
Who(誰が)………………  研修講師、研修担当者、職場の上司・同僚・部下
Where(どこで)……… フォロー研修、職場
How(どのように)……… リポート、ヒアリング、360度評価

What(何を)……………  ③業績の向上
When(いつ)……………  半年後、1年後
Who(誰が) ……………… 上司、研修責任者・担当者
Where(どこで)……… 職場
How(どのように)……… 業績データの比較、実績・成果物等の確認

以上のような整理をすることで、研修の効果測定をより具体的にイメージできるのではないだろうか。参考にしていただければと思う。

ところで、これらの前提として、「測定」の基点となるスタート位置、つまり現状レベルを明らかにしておくことも大切である。
これについては、研修開始時にテストをやるのも1案だが、受講者自身が事前に、知識レベルや行動レベルを振り返っておくとともに、研修後にこうなりたい、こういう成果を上げたいという目標を立てておくのが効果的である。研修への身の入り方も違ってくるはずだ。

ただ、単に指示しておくだけではやってこなかったり、ポイントがずれていたりする可能性があるので、研修部門がフォーマットをつくり、各自それを記述してもらうという方法がよいだろう。
研修後にアンケートをとるのはどの企業でもやっている。研修前の、こういうところに工夫をすることこそ研修部門の腕の見せ所であり、他社との差別化につながるものと思う。

 

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