多元的人事制度で必要になる社員格付け制度の再編・強化

日本の人事管理を作り直す
多元的人事管理では処遇をどのように考えれば良いのでしょうか。まず必要なのは「普遍的な公平性尺度」を構築し、均衡基準を明確にすることです。伝統的人事制度では、年功制度、職能資格制度、職務分類制度などの社員格付け制度によって公平性を担保していました。年功であれ、職能であれ、職務であれ、正社員を計るモノサシが統一されていれば、それでよかったのです。
しかし制約社員に対してはこれらのモノサシは有効ではありません。社員の多様化が進めば進むほど均衡実現は困難であり、年功的制度に「制約社員」を組み込むことは不可能です。
均衡実現の仕組み、すなわち社員格付け制度の再編・強化が多元的人事制度では必要になります。そのように考えると、総合職と一般職、正社員とパート、高齢者と現役正社員で起こっている均衡問題は改革のフロンティアと評価できるのです。
さて講演の時間が尽きようとしております。多元型人事制度についてもっと詳しく知りたい方は拙著「正社員消滅時代の人事改革─制約社員を戦力化する仕組みづくり」(日本経済新聞出版社)をお読みください。

講演者 紹介

今野 浩一郎氏
学習院大学 経済学部経営学科教授。
71年3月東京工業大学理工学部工学科卒業、73年東京工業大学大学院理工学研究科(経営工学専攻)修士課程修了。73年神奈川大学工学部工業経営学科助手、80年東京学芸大学教育学部講師、助教授。92年学習院大学経済学部経営学科教授(現在に至る)。現在、日本労使関係研究教会会員、中央最低賃金審議会会長、労働政策審議会委員を務める。主な著書に、「正社員消滅時代の人事改革─制約社員を戦力化する仕組みづくり」(日本経済新聞出版社)、「マネジメントテキスト―人事管理入門」(日本経済新聞出版社)など多数。

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