女性活躍推進法が成立した。今後、女性の活躍推進はマストの経営課題であるといえる。しかし、女性活躍推進に取り組む際に、女性ホルモンのバランス変化についても知っておく必要がある。今回は人事労務担当者が知っておきたい「女性ホルモン」の話について紹介する。
「女性の活躍推進」に取り組む際に知っておきたい「女性ホルモン」のお話。

女性活躍推進法の成立について

女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)が平成27年8月28日に成立した。
301人以上の労働者を雇用する事業主は、平成28年4月1日までに、①自社の女性の活躍状況の把握・課題分析、②行動計画の策定・届出、③情報公表 などを行う必要がある。
また、内閣に設置された「すべての女性が輝く社会づくり本部」が公表した「女性活躍加速のための重点方針2015」では、女性活躍のための環境整備の一環として「キャリアの断絶を防ぐための継続就業支援、非正規雇用への対応」を挙げている。

日本においては、いまだ「M字カーブ問題」が解消されておらず、出産や子育て、介護等の理由により就業を希望しながら就業できていない女性が約300万人在住するという。そのような女性のキャリア断絶を防ぐため、様々な取り組みを強化するという事である。
女性の活躍はアベノミクスの「成長戦略」の柱である。しかし、制度を整備しても、当の女性が活躍困難の場合もある。
働く女性の一員として人事労務の現場を支援してきた立場から、「女性の活躍推進」に取り組む人事労務担当者に知っておいて頂きたい「女性ホルモン」の話についてお伝えしたいと思う。

頑張りたいけど、頑張れない。その理由。

「女性の活躍推進」の一環として、育児や介護で一度退職した主婦の再就職を支援し、主婦の力を活用する動きも出ている。当職も主婦は段取り力があり、周囲への気遣いもできる人が多いので、主婦の力の活用には賛成であり、子育てがひと段落した主婦を数名採用してきた経験もある。また、クライアントの企業においても、人材獲得難によりそういった主婦の採用を強化しているところもある。しかし、採用したものの勤務継続が難しくなるケースもあり、本人の能力や、体力、ブランクの長さが原因かと思っていたが、最近、どうもそれだけではないのではないかと気付いたのである。

ここ数年での業務におけるITの活用は凄まじく、ブランクが長い主婦にとっては、再就職後は「浦島太郎状態」だと言う。新しく覚えることも多いが、子育ても落ち着き自分の時間もとれるので、最初は何とかやろうとやる気を持って取り組のだが、ある程度の期間を経てくると「疲れてしまって家に帰っても何もやる気が出ない」「いろいろと勉強したいけど、気力が追い付かない」と脱落してしまう、というケースが出てくるようだ。中には頭痛がしたり、不眠になったりと、身体に不調をきたす人もいる。年齢によるものかと思っていたが、どうやら女性ホルモンの変化が影響している可能性もあるということである。


図はホルモンケア推進プロジェクト提供の、「年齢によるエストロゲンの変化とその症状」である。40代に入り子育てが落ち着いてくる時期に女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が減っていくのが分かる。そうなると、ほてったり、頭痛がしたり、更年期障害の症状が出やすくなるそうだ。
久しぶりの再就職だと、どうしても緊張をし、ストレスがかかることになる。そういった要因で、ホルモンバランスが乱れ、身体に不調をきたすこともあるようだ。

また、国は女性管理職を増やすよう推進しているが、管理職になる年齢にエストロゲン分泌量が減少する時期が重なることで発生する身体の不調の為、昇進を辞退するケースも少なくはないようだ。
バイエル薬品株式会社が平成25年に日本人女性2万人を対象とした月経随伴症状に起因する日常生活への負担及び社会経済的負担に関する研究結果を発表したが、月経随伴症状に関連した社会への年間経済的負担額(通院費用/市販薬の費用/労働損失の推計値合計)は6,828億円と推計されるということである。働く女性への女性ホルモンの影響は、大きな個人的負担であると共に、社会にとっては労働生産性の損失を伴う経済的負担となっている。

妊娠しやすさと年齢の関係も最近になって認知されてきたような気がする。35歳を過ぎたら妊娠力は衰える、ということであるが、キャリアを積み重ねてきた女性にとっての30代は仕事においても重要な時期である。仕事を優先させたがゆえに、妊娠・出産の機会を逃してしまう女性も少なくはない。企業によっては、女性の「産みどき」も考慮し、ジョブローテーションをうまくつかって、若い時よりも様々な職務経験を体験させたり、不妊治療費用や卵子凍結費用を企業が負担したりする等、長期の雇用を見込んだ上で妊娠や出産がキャリアの断絶につながらないよう配慮する動きも出ている。
実際、自分の健康やライフプランと女性ホルモンが密接に結びついていることを知っている女性は少ないように感じる。ましてや男性は、その関係を知ることの重要性にすら気づいていないのかもしれない。
いくら制度を整え活躍しろ、とお尻を叩かれても、人間なので無理な時もある。女性である人事労務の専門家としては、今後、女性ホルモンの影響を踏まえたライフプランも考慮し、長い視野で女性の活躍を考える必要があるのだということを知っておいて頂ければありがたいと思う。

松田社労士事務所
特定社会保険労務士 松田 法子

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