「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(以下「女性活躍推進法」という)が2016年(平成28年)4月から全面施行されましたが、2025年度(令和7年度)末までの時限立法ということをご存じでしょうか。そして、全面施行からすでに7年が過ぎ、期限である2025年度末までに残り2年足らずとなりましたが、さらに「女性活躍推進」するためには、何が不足しているのでしょうか。
「女性活躍推進」をしている場合ではない。本当に必要なのは男性を含めた“日本全体の働き方改革”

「女性活躍」に対して“他人事”の男性

ここ数年で「女性活躍推進」に関するセミナーを開催する機会や講師をする機会が多くありましたが、その中で女性の私が個人的に感じたことがあります。参加者は多いのですが、圧倒的に女性の参加者が多いのです。セミナーによっては、2~3割くらい男性の参加者もいましたが、一部の男性からの「(女性の皆様は)頑張ってね」と他人事のような応援メッセージが気になっていました。

「女性活躍推進法」という名前の法律ですが、必要なのは女性だけが頑張ることではありません。女性活躍促進に必要なのは、女性も男性も含めた「日本全体の働き方改革」と、「家事・育児・介護などの見直し、分担または業務委託の検討」です。

厚生労働省所管の国立社会保障・人口問題研究所が2022年に実施した「全国家庭動向調査」によると、夫婦の家事分担に関し、妻が担う割合が80.6%を占めています。前回調査から2.6ポイント下がりましたが、平均の家事時間は、妻が平日247分(前回比16分減)、休日276分(同8分減)、夫は平日47分(同10分増)、休日81分(同15分増)と依然として高水準で、平日は妻が夫の約5倍の時間を家事に費やしているようです。

育児に関しても、妻は前回より1.6ポイント下がったものの78%を担い、平日は夫の約4倍となる524分(夫は117分)、休日は2倍近くの724分(夫は423分)を費やしているようです。

この結果を見てもわかるように、女性活躍促進をするためには、今まで妻が行っていた家事・育児を、夫か他の家族、または家事・育児サービスの業者にお願いする必要があります(※参考1)。

また、独立行政法人労働政策研究・研修機構「夫の就業時間数別、妻のフルタイム(FT)就業率と無職率(%)」によると、ふたり親世帯の場合、夫の週あたり就業時間が60時間を超えると、妻のフルタイム就業率が顕著に低下します。

夫の週あたり就業時間が60時間以下であれば「妻のフルタイム就業率がおおむね4割前後」で推移しているのに対して、60時間を超えると「妻のフルタイム就業率が3割に急落」していることが分かります(※図表1)。
図表1「夫の就業時間数別、妻のフルタイム(FT)就業率と無職率(%)」

図表1「夫の就業時間数別、妻のフルタイム(FT)就業率と無職率(%)」

以上のことから、妻のフルタイム就業率を上げるためには、夫の週あたりの就業時間数を60時間以下にすることがひとつのポイントとなります。週あたりの「就業時間数60時間」を、月あたりに換算すると240時間です。規定の労働時間が月あたり160時間(8時間/日×20日/月)の場合、残業時間は「月あたり80時間(240時間-160時間)」がひとつのラインになっています。

これからの「女性活躍」に必要なのは女性の「正規の社員」

第1子出産後も就業継続している女性の割合は、約7割と近年上昇傾向にありますが、「就業継続を希望していながら離職を余儀なくされた女性」も一定程度存在しています。これからは、企業は出産した女性社員を離職させるのではなく、育児休業給付金などの社会保険制度を活用し、正規の社員(「多様な正社員」を含む)で復帰できる体制を構築することです(※参考2)。

そして、総務省の「労働力調査」から分かるように、女性雇用者における非正規の職員・従業員の割合は約5割となっていますが、正規の社員としてのキャリアを最大限に活かす環境がなければ、人材不足の中で、企業が存続することはできなくなるでしょう。今後は、「女性活躍推進」は卒業し、男性女性問わず、さらなる「働き方改革」をすすめる中で、「多様な社員の活躍推進」を促進していく段階に来ているのではないでしょうか。
図表2「正規の職員・従業員、非正規の職員・従業員数の推移」

図表2「正規の職員・従業員、非正規の職員・従業員数の推移」

これからの「多様な社員の活躍推進」とは

もう、「女性活躍推進」と限定している状況ではありません。男性でも女性でも正規の社員でも非正規の社員でも、若い社員でも高齢の社員でも誰もが活躍できる社会にする必要があります。育児であったり、介護であったり、療養であったり、働きながら学ぶ時期であったとしても、誰もがその時期にあった働き方を“正規の社員”という地位にありながら選べるような「多様な社員の活躍推進」をする必要があるのではないでしょうか。
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