先日(2月14日)、厚生労働省は、『平成26年度 高年齢者雇用開発コンテスト~生涯現役社会の実現に向けて~』という題名で報道関係者向けに発表を行った。内容としては、高年齢者がいきいきと働くことのできる職場づくりの事例を広く募集する、というものである。
継続雇用制度の構築について考える

 高年齢者雇用については、高年齢者雇用安定法の改正により平成25年4月から、65歳までの雇用確保措置が企業に義務付けられた。本稿では、多くの企業(85%以上)が65歳までの継続雇用制度を導入している中、その制度をどう構築していくかについてアドバイスしたい。

(1)就業ニーズの調査
 一口に高齢者雇用といっても、定年後をどう過ごすかということに関して、各人様々な考え方があるだろう。そこでまずは従業員の就業ニーズを調査することが大切である。具体的には、対象となる従業員(例えば55歳以上の従業員)に、継続雇用に関する就業希望の割合(何歳まで働きたいか、就業希望の理由等)や勤務形態(現役と同じ、短日勤務等)、生活の見通し(年金支給開始年齢までの空白期間の考え方等)といった従業員の意識・ニーズを把握する。

(2)高齢者にふさわしい勤務制度・賃金制度を考える
 例えば60歳定年でその後継続雇用制度をとっている場合、賃金を現役時代の6割程度に一律に減額しているパターンが多く見られる。雇用保険からの高年齢雇用継続基本給付金や在職老齢年金を加味した上での企業側の対応と思われるが、果たしてそれでよいのか。仕事内容や能力、成果を考慮せずに一律に減額することは、さきほどの高齢者の就業ニーズに応えていないことになる。企業も無駄な人件費を支払っているかもしれない。
 そこで、高年齢者の会社に対する貢献を基準にした新たな勤務制度・賃金制度を導入することが人件費の適正化を図る上でも必要である。賃金を一律に減額するケースでも、就いている業務の価値や成果を賞与に反映させる等の方法で、モチベーションの維持向上に向けた施策を講ずることが求められる。

(3)高年齢者雇用アドバイザーの活用
 上記の勤務制度等を導入するにあたり、専門家のアドバイスを受けることも有効である。高年齢者雇用アドバイザーは(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構に配置されている。高年齢者雇用確保措置の導入や拡大、雇用管理改善等について実際に企業訪問を行ったり、「企業診断システム」(高齢労働力の活用に向けて企業において取り組むべき課題と方向性を整理するために開発されたシステム)等を用いて、各企業の具体的な課題について専門的なアドバイスをもらえるので活用することをお勧めする。

(4)助成金の活用
 政府は、高齢者雇用に関して各種助成制度を設けている。下記に一例を挙げているが、詳細は助成金についての専門家である社会保険労務士や前述の高年齢者雇用アドバイザーに相談していただきたい。
 ・高年齢者雇用安定助成金(高齢者活用促進コース/高齢者労働移動支援コース)
 ・特定就職困難者雇用開発助成金
 ・高年齢者雇用開発特別奨励金

(参考:大滝岳光『エイジレスの雇用における現状と課題・好事例解説及び関係法令解説』)


三谷社会保険労務士事務所 三谷 文夫

この記事にリアクションをお願いします!