前回に引き続き、「働き方改革関連法」に対する国会(参議院)の附帯決議の枢要な項目について解説を加えよう。
働き方改革関連法に対する国会の附帯決議から読み取れること(後編)

「年次有給休暇の付与義務」に関する事項

「十四、 年次有給休暇の取得促進に関する使用者の付与義務に関して、使用者は、時季指定を行うに当たっては、年休権を有する労働者から時季に関する意見を聴くこと、その際には時季に関する労働者の意思を尊重し、不当に権利を制限しないことを省令に規定すること。また、労働基準監督署は、違反に対して適切に指導監督を行うこと。」

本項は、来年4月から施行される「使用者による年次有給休暇の付与義務」に関するものである。使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について時季を指定して与えなければならないことになった。これは年休の取得を促進する趣旨である。

すでに労働者の時季指定や計画的付与により取得された年次有給休暇の日数分については、指定の必要はないが、例えば、有給の特別休暇として付与している休暇を今回の年次有給休暇指定に振り替えるようなことは、不利益変更となる可能性が高く、注意が必要だろう。

「高度プロフェッショナル」に関する事項

「二十三、 高度プロフェッショナル制度を導入する全ての事業場に対して、労働基準監督署は立入り調査を行い、法の趣旨に基づき、適用可否をきめ細かく確認し、必要な監督指導を行うこと。」

本項は、「裁量労働制の拡大」が立ち消えとなって以降の主役をつとめた「高度プロフェッショナル制度」に関するものである。対象業務については、高度の専門的知識を必要とし、業務に従事した時間とその成果に関連性が高くないと認められる一定の業務とされている。

特徴的なのは、「労働時間」という概念がこの制度にはないこと、そして新たに「健康管理時間」、つまり「事業場内にいた時間」+「事業場外において労働した時間」を把握すること及び特定の措置をとることが求められている点である。

さらに、労働基準法第41条に規定する「管理監督者」よりも労働時間の規制が緩和されており、36協定の締結や時間外・休日・深夜労働への割増賃金の支払いは対象外とされている。

そして、「高度プロフェッショナル制度」を導入した場合、全ての事業場に労働基準監督署の監督が細やかに行われることとされている。そうなると、多くの企業では導入に躊躇することになりそうだ。ただでさえ、過労死問題等で世間の注目を浴びている制度である。本項は、浸透に時間をかけ、慎重な導入を企図した予防的規制に他ならない。

「同一労働同一賃金」に関する事項

「三十二、 パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の三法改正による同一労働同一賃金は、非正規雇用労働者の待遇改善によって実現すべきであり、各社の労使による合意なき通常の労働者の待遇引下げは、基本的に三法改正の趣旨に反するとともに、労働条件の不利益変更法理にも抵触する可能性がある旨を指針等において明らかにし、その内容を労使に対して丁寧に周知・説明を行うことについて、労働政策審議会において検討を行うこと。」

本項は、三法改正による正規雇用労働者と非正規雇用労働者との待遇改善、いわゆる「同一労働同一賃金」を、非正規雇用労働者の待遇改善によって行うべきであり、正規雇用労働者の待遇引下げによって行うことは、法の趣旨に反するものであり、不利益変更法理に抵触する可能性もある、という旨を謳っている。裏返すと、労使合意があれば正規雇用労働者の待遇引下げによる「同一労働同一賃金」も認められそうだが、それは恐らく極めて危ない橋を渡ることになるだろう。

「三十三、 低処遇の通常の労働者に関する雇用管理区分を新設したり職務分離等を行ったりした場合でも、非正規雇用労働者と通常の労働者との不合理な待遇の禁止規定や差別的取扱いの禁止規定を回避することはできないものである旨を、指針等において明らかにすることについて、労働政策審議会において検討を行うこと。」

本項では、新たに低処遇の正規雇用労働者の雇用管理区分を作り、これと非正規雇用労働者との均衡・均等待遇を図っても、法違反は免れない旨を謳っている。従って、前項同様に正攻法で「同一労働同一賃金」を実現していかないと、厳しい行政指導が待ち受けていることだろう。

「三十七、 労働契約法第十八条の無期転換を行使した労働者について、労働契約法による無期転換の状況等を踏まえ、必要な検討を加えること。」

有期労働契約の無期転換者については、3法改正の文理解釈からは「同一労働同一賃金」の適用対象からはずれる。筆者は、これに関しては従前から、法文を法的文脈を考慮して解釈する論理解釈をもって、法目的が実現されていくだろうと考えていた。(※3法=パートタイム労働法・労働契約法・労働者派遣法)

よって本項は、まさに無期転換制度の実質的無効化を防止するための附帯決議であり、今後、企業としては、無期転換者も実質的に「同一労働同一賃金」の適用対象者とみなし、雇用管理区分ごとの均衡・均等待遇が図れるような制度の整備が求められよう。

以上のとおり、働き方改革法に関する国会(参議院)の附帯決議を見てきたが、この決議の意思は“厚生労働省の意思”と考えなければならない。まだ、関連通達の発出や関連ガイドラインの公表はなされていないが、企業としては、「働き方改革」という言葉に惑わされず、踊らされず、まずはベースとなる関連法改正事項に忠実に対応することから始めよう。


株式会社WiseBrainsConsultant&アソシエイツ
社会保険労務士・CFP(R) 大曲義典

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