一般社団法人 日本経済団体連合会は、2018年7月17日、経団連会員企業ほか、非会員企業などを対象に実施した「2018年労働時間等実態調査」の結果を発表した。

調査は、400社の対象労働者1,876,341人に対して行われ、回答企業の業種別内訳は、「製造業」183社・45.8%、「非製造業」217社・54.3%。

なお、回答企業の従業員数別内訳は、「~100人未満」14社・3.5%、「100人~300人未満」43社・10.8%、「300人~1,000人未満」105社・26.3%、「1,000人~5,000人未満」150社・37.5%、「5,000人以上」88社・22.0%となっている。
経団連、「2018年労働時間等実態調査」結果発表。製造業は非製造業と比較し、労働時間が短い傾向

年間総実労働時間

調査によると、一般労働者の総実労働時間は、過去3年間、全体で1,996時間(2015年)、1,981時間(2016年)、1,972時間(2017年)と減少傾向にある。

従業員数別に比較すると、各年ともに従業員5,000人以上の企業において総実労働時間が短くなっている。300人未満の企業を除き、総労働時間は減少傾向にあると言える。

「経常利益が増えている企業」の年間平均総労働時間は、2016年、2017年において全体平均よりやや高めであるものの、2015年と比較すると、やはり減少傾向にある。経常利益を増やしながら総労働時間が減少傾向にあることは、生産性、業務効率性が向上している証左となり得る。

「人手不足感があると回答した企業」の年間平均総労働時間は、全体平均より高めであるものの、こちらも年々減少傾向。人手不足の中にあっても総労働時間が減っていることは、生産性、業務効率性が向上している証左となり得る。

なお、女性比率の高い上位100社の総実労働時間は、全体平均より短く、減少傾向にある。

労働時間等に関する「KPIを導入している」と回答した企業の年間平均総労働時間は、全体平均とさほど変わりない。しかも、「KPIを導入しているがPDCAを回していない」企業の労働時間はむしろ全体平均よりも長い。

他方、「KPIを導入し、PDCAをまわしている」企業の労働時間は、全体平均より顕著に短く、また、年々減少傾向にある。このように、KPIは設定するだけでなく、PDCAを回すことで初めて効果を発揮することが裏付けられる。

平均年間総実労働時間の分布を見ると、全労働者の約50%の年間平均総労働時間は2,000時間未満。1,800時間未満の労働者も15%程度を占める。他方、「非製造業」においては、2,400時間以上の労働者が8%程度とやや高めである。

管理監督者の年間総実労働時間

管理監督者の総実労働時間も、過去3年間で、2,081時間(2015年)、2,059時間(2016年)、
2,050時間(2017年)と減少傾向にある。こちらも一般労働者同様に、「製造業」は「非製造業」と比較し、総実労働時間が短い傾向である。

管理監督者の総実労働時間は、一般労働者よりも長い傾向にあり、全管理監督者の約48%の年間平均総労働時間は2,000時間未満。1,800時間未満の者も24%程度を占める。やはり「非製造業」においては、2,400時間以上の者が17%程度とやや高めである。

平均時間外労働時間

全労働者の約50%の年間平均総労働時間は2,000時間未満であった。1,800時間未満の労働者も15%程度を占める。他方、「非製造業」においては、2,400時間以上の労働者が8%程度とやや高めとなった。

平均時間外労働時間(年間)も、全体的に減少傾向にある。2017年において平均時間外労働時間は、製造業では239時間、非製造業では269時間となった。

「経常利益が増えている企業」の年間平均時間外労働時間は、2017年において全体平均よりやや高めであるものの、2015年と比較すると減少している。経常利益を増やしながら時間外労働時間が減少傾向にあることは、生産性、業務効率性が向上している証左となり得る。

「人手不足感があると回答した企業」の年間平均時間外労働時間は、全体平均より高めであるものの、こちらも年々減少傾向にある。人手不足の中で総労働時間が減っていることは、やはり、生産性、業務効率性が向上している証左となり得る。

長時間労働の是正と生産性向上にむけた取組み

労働時間削減、休暇取得促進に向けた数値目標(KPI)の導入状況を見ると、従業員数が大きい企業の方がKPIを設定している、もしくは成果を検証している割合が高い。

▼長時間労働の是正と生産性向上にむけた取組み事例(※一部抜粋)
  
【現業部門】
・全社を挙げたゼロベースの仕事の棚卸による時間創出(無駄な業務の洗出し)
・時間あたり労働生産性の評価を給与に反映
【管理部門】
・創意工夫して残業時間を短縮したなど、働き方改革に貢献が認められた作業所を表彰
・社内会議の削減・集約、打合せ資料の見直し(ペーパーレス化)
・変形労働時間制を活用し、決算など繁忙期への対応

▼過重労働防止対策の取組み事例(※一部抜粋)

・メンター制度を運用し相談しやすい環境を整備
・過重労働、各種ハラスメントについてe-ラーニングによる教育を実施
・時間外等動時間が一定値を超えた者に対して、特別休暇を付与

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