平成30年4月23日厚生労働省は、平成29年度「過重労働解消キャンペーン」における重点監督の実施結果を公表した。今回の重点監督は、長時間の過重労働による過労死等に関する労災請求のあった事業場や若者の「使い捨て」が疑われる事業場などを含め、労働基準関係法令の違反が疑われる7,635事業所に対して集中的に実施されたものである。そのうち65.9%にあたる5,029の事業所に、何らかの違反が認められる結果となった。
厚生労働省、平成29年度実施の「過重労働キャンペーン」結果を公表

主な法令違反の内容を見てみると、違法な時間外労働が認められたものが2,848事業場(37.3%)と圧倒的に多く、うち1,694事業場で1カ月80時間(59.5%)、1,102事業場で100時間(38.7%)、222事業場で150時間、45事業場で200時間を超えていた。さらに、賃金不払い残業があったものが536事業場(7.0%)、過重労働による健康障害防止措置が未実施のものが778事業(10.2%)となっている。

労働基準関係法令違反があった事業場の割合を業種別に比較すると、教育・研究業が81.4%と最も高く、次いで、運輸交通業が78.3%、接客娯楽業75.0%、製造業69.5%の順となった。

主な健康障害防止に係る指導の状況については、過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導したものは5,504事業場(72.1%)、労働時間の把握が不適正なため指導したものは1,232事業場(16.1%)にのぼっている。具体的には、医師による長時間労働者への面接指導等の実施や「労働時間適正把握ガイドライン」に則った労働時間の把握などの指導が行われている。

平成28年度の監督指導結果に比べると、おおむねパーセンテージが低くなっていることから、過重労働に対する意識が少しずつ高まり、労働環境が改善されつつあることがうかがえる。その一方で、違反の割合が大幅に増えているのが「労働時間の把握方法が不適正なため指導したもの」という項目だ。さらに「賃金不払い残業があったもの」の項目もわずかではあるが、違反率がアップしている。また、過重労働による健康障害防止措置が未実施もしくは不十分なものもほぼ横ばいで推移している。

こうした背景には、時間外に対する労使協定、いわゆる「36協定」の存在が考えられる。経営者側が36協定を意識しすぎるあまり、上限時間を超えて労働させているのにもかかわらず、適正な残業時間の申告を無言の圧力で抑制している可能性があるのではないだろうか。厚生労働省では今後も、長時間労働の是正に向けた取り組みを積極的に行っていくと銘打っており、労働時間効率化の在り方も含め、より一層の改善が求められる。

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