育児休業法改正 ― 見落とされがちな復職後の話

2017年1月の大きな改正に引き続き、2017年10月1日付で育児休業法が改正され、最長2歳まで育児休業が可能となった。まだまだ不十分という声もあるが、「一億総活躍社会」「待機児童問題」などが社会的に注目されていることもあって、着々と産休・育休の取得、その後の職場復帰がしやすい環境が整ってきている。
今回の改正により、2年以上会社から離れたのちに復職する人も出てくる。育休からの復帰は、復帰する本人だけでなく、同じ職場で働く他の社員にとっても大きな転機となる。離れていた期間が長いほどギャップは大きいのかもしれない。また、法改正に現場の認識が追いつかず、トラブルになるケースも多いようだ。このような問題に対しては法整備ばかりに目が行きがちだが、こうした復帰後のトラブルや復帰社員の働き方については、あまり注目されていないのが実情である。

株式会社キッズラインが弁護士ドットコムニュースと共同で行った「復職後のトラブル」に関するアンケート調査によると、産休または育休から復職した際に、育児に起因するトラブルがあったと回答した人は、全体の31.2%だったそうだ。具体的なトラブルの内容で最も多かったのは「仕事の範囲を狭められる、仕事が任されにくい状況におかれる」で、全体の36.3%を占める。次いで、「希望しない仕事内容、職種、部署への異動」が26.3%、「同僚との関係が悪化」が22.5%だった。

まさに、3人に1人が育休明けに職場トラブルを経験している。2017年1月の改正によって、マタハラ防止措置の義務化も始まったが、産休・育休に対する職場の理解が至らずにトラブルになってしまうことは、企業にとって大きな問題の一つだろう。一方、「仕事の範囲を狭められる、仕事が任されにくい状況におかれる」状態については、組織からするとよかれ(復職社員の負担を軽減してあげよう)と思って配置した結果かもしれない。

いずれにせよ、このようなトラブルやギャップをなくすためには、以下の点に留意した組織側の意識改革、復帰社員とのコミュニケーションがポイントである。

・全社的にマタハラについての研修などを実施し周知させる
・復帰前に話し合いを持ち、希望する働き方を共有する
・育休中から職場の状況を共有し、復帰後のイメージが持てるようにする
・仕事を任せないのではなく、フォロー体制を整備する

復帰した直後は、子育てしながら働くという、本人にとって新しい経験をする時期であり、同時に仕事と育児の両立ができるのかという不安でいっぱいの時期である。しかし、以前の自分のイメージや、キャリアの遅れを取り戻したい、同僚に迷惑をかけたくない、と頑張りすぎてしまう人も珍しくない。復帰社員が、無理をしすぎず、安心して、十分に能力を発揮できる環境を整えてあげることも重要である。

現在の出産平均年齢が30〜31歳だとすると、総合職の出産平均年齢は33〜35歳ほどになる。10年強働いている者としての経験や知識は、組織にとっては貴重な資産である。また、時短社員は限られた時間の中で職務をこなすため、残業しがちな社員よりも、実は生産性が高い、とも聞く。ある会社では、これまで男性社員の方がアウトプットを出すと考えられていた。しかしながら、人事評価に労働時間を入れたところ、時間当たりの生産性は、時短社員の方が高かったと判明した例もある。

産休・育休からの復帰社員の能力を、引き続き活かすことができる環境を整えることは、会社の「生産性や収益の向上」のためにも必要不可欠なことであると言えよう。


Office CPSR 臨床心理士・社会保険労務士事務所 代 表
一般社団法人 ウエルフルジャパン 理 事
産業能率大学兼任講師
植田 健太

著者プロフィール

HRプロ編集部

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