長時間労働による過労死・過労自殺。企業の本音。社員の本音(前編)。|採用、育成・研修、労務・人事に関する情報ならHRプロ

人事にプロのサポートを―新卒採用、中途採用、人材育成、研修、人材マネジメント、労務、人事システム、適性検査ならHRプロ

  • 11/21開催:キャンリクフォーラム 大学と企業の合同相談会2017

長時間労働による過労死・過労自殺。企業の本音。社員の本音(前編)。


2016/11/28

大手広告代理店の過労自殺労災認定事案により、長時間労働の問題が一層注目されている。過労死・過労自殺はなくせるのか?本当に長時間労働はなくせるのか?社員の本音、会社の本音を踏まえて考えてみたい。

「なぜ過労死・過労自殺が起きるのか?なぜ防げないのか?」 『死ぬぐらいならば、会社を辞めれば良かったのに』

「なぜ過労死・過労自殺が起きるのか?なぜ防げないのか?」
この問いに対しては、メディアやネット上では様々な回答や意見が出ている。
それらについて、いくつか考えてみる。

『死ぬぐらいならば、会社を辞めれば良かったのに』
そこまで自分が追い詰められるのならば、会社を辞めれば良い。死ななくても、生きていれば、次の働く場所を探すことはいくらでもできる。若ければなおさらできるはずだ。

確かに正論である。
ただ、本人がそのような冷静な判断ができる状態であったかどうか、が問題だろう。
まず、鬱などの状態や精神疾患にかかっている場合は、冷静な判断ができないことも多い。
それに加え、若ければ、まして新入社員ならば、他の会社のことも未だあまりわからない。長時間労働をしていれば、なおさら他会社のことに触れる時間は少ないだろう。

私の個人的な経験(約20年前)であるが、私も大学卒業後新卒で入社した会社は、長時間労働が当たり前であった。入社する際に、「ウチの労働時間は、最低12時間だから」と言われた。まだ長時間労働が大きな社会的な問題になっていない時代だったし、それが社会では普通なのだと思った。

実際の勤務状況は、1日12〜18時間、昼休みは「15分で飯を食え」と言われた。残業時間は1ヶ月で120〜200時間以上はあったであろう。
仕事で失敗をすれば、上司から「幼稚園からやり直すか?」「いつ辞めてもいいよ。代わりはいくらでもいるんやで!」等と罵られた。
当然ながら「辛い」「会社に行きたくない」「早く辞めたい」という気持ちも、あった。
でも「これを耐えなければ社会人として生きていけないんだな」と思っていた。
逆に言えば「この状態から逃げたら、本当に人間として失格なんじゃないか?」という不安とか、恐怖心もあった。

私の新入社員時代と比べて、今はネット等により様々な情報も得やすい。しかし、様々な要因により若い人が自己肯定感を得られにくい時代だとも考える。
「この状態から逃げたら、人間として失格なんじゃないか?」、そう思いながらも過酷な労働条件に耐えている若い人は今も多いのかもしれない。

様々な感情の葛藤、打ち砕かれる自己肯定感。そして「メンター」の重要性。

今回、自殺という悲しい選択をしてしまった彼女が、どのような感情の変遷を経て、そのような結果になってしまったのか。これは、いくら考えたとしても推論にしかならない。

よって、あくまで一般論でしか語れないが、過労自殺という問題を考えるとき、長時間労働やパワハラという環境要因を見るだけで十分ではないはずだ。長時間労働やパワハラという環境要因が、悲しい選択につながったのは事実であろうし、それは当然ながら改善されるべき問題である。
ただ、それに加え、本人の心の葛藤も見なければ、問題の本質を捉えられないのではないだろうか。

「辛い」「会社に行きたくない」「早く辞めたい」という気持ちと、「これを耐えなければ社会人として生きていけないんだな」というジレンマ。さらにネームバリューもある会社であれば、「この会社の社員であるというプライド」や「本当はこういう仕事をしたいという夢や希望」・・・。そういった、様々な感情の葛藤に追い詰められる時、「どれが本当の自分なのか」分からなくなる。

また、キャリア教育が充実している昨今では、ある程度、「自己肯定感」を得た上で、就職するケースが多い。現在の就活では、学生時代の活動等において、「自己肯定感」を成熟させる経験を経なければ、希望通りの会社に就職することは難しいだろう。
しかし、実際に就職したとたん、それまで培ってきた「自己肯定感」が、ことごとく打ち砕かれるのである。

つまり「自己肯定感」が打ち砕かれ、葛藤する様々な自分自身の感情に追い詰められたとき、「死」という選択肢しか残らないのかもしれない。

繰り返しになるが、長時間労働やパワハラという環境要因は改善されなければならない。しかし、それを改善するだけでは、問題の本質を捉えることはできない。
葛藤する様々な感情、それら全てを受け止めることにより、冷静に自分自身を見つめ、打ち砕かれた「自己肯定感」を再び築き上げていく術を得ることができたならば、死という悲しい結果にならなかったかもしれない。

私が新入社員時代、私の様々な感情の葛藤を察して話しかけてくれ、さらに私の長所や努力を評価してくれるベテランのパートさんがいた。そのパートさんのお陰で、私は感情の葛藤を冷静に整理することが出来たし、新たな自己肯定感を持つことが出来た。

そういった人の存在は、新入社員にとって、若い社員にとって、とても重要だと考える。いわゆる「メンター」である。私にとっては、そのパートさんが「メンター」であった。

今は公式に「メンター制度」を設けている会社も増えている。「メンター制度」が、うまく機能しているのか、それを確認することも、過労死・過労自殺を防ぐ対策なのだと考えるのである。

オフィス・ライフワークコンサルティング
社会保険労務士・CDA 飯塚篤司
2019卒版 インターンシップ プログラム作成完全マニュアル申込受付中

関連リンク

  • 「働き方改革」・「健康経営」で重要性が増すモチベーション管理・メンタリティマネジメント

    従業員のメンタルヘルスやモチベーションを管理する「メンタリティマネジメント」に注目が集まっている。従来の対症療法的・受動的なメンタルヘルス対策ではなく、積極的に従業員のストレスをコントロールしていく点がポイントだ。 「働き方改革」や「健康経営」が謳われるようになって以降、特にその傾向は強まっており、企業における従業員のメンタルヘルスケア・モチベーション対策は急務である。

  • 労働基準法改正(予定)について

    昨今、働き方改革の気運がある中、労働基準法の大幅な改正が検討されている。厚生労働省では「長時間労働を抑制するとともに、労働者が、その健康を確保しつつ、創造的な能力を発揮しながら効率的に働くことができる環境を整備するため、労働時間制度の見直しを行う等所要の改正を行う」と、特に労働時間がクローズアップされている。 下記、主な改正予定内容を紹介したい。

  • 「長時間労働で高収入」より「ワーク・ライフ・バランス」 〜『連合』調べ、理想とする社会イメージに関する意識調査

    就業形態が多様化する現代社会において、人々はどのような働き方を望んでいるのだろうか。日本労働組合総連合会(略称:連合)が、働く人が持つ生活意識や社会の理想像を把握するため「日本の社会と労働組合に関する調査」を実施した。調査はインターネット上で行われ、全国の15〜64歳の勤労者(自営業・フリーランス、役員・経営者を除く)1,036名の有効サンプルを集計した。今回の調査結果から、働く人が抱く生活意識や社会の理想像を垣間見ることができる。

  • 「東急電鉄(連結)ダイバーシティマネジメント宣言」を制定。多様性を生かした付加価値創造を目指す

    東急電鉄は9月12日、従業員の多様性を生かす組織づくりの推進による企業の競争力強化を目指し「東急電鉄(連結)ダイバーシティマネジメント宣言」を制定した。 同社は、この宣言により、ダイバーシティマネジメントの推進を持続的な成長のための経営戦略の一環と位置付け、全従業員に浸透させることで、違いを生かした新しい価値を生み出せる企業体を目指すとしている。

  • 65歳以上シニアの再就職はハードル高く。働く場所はないと感じるシニアも

    エンジニアのためのキャリア応援マガジン「fabcross for エンジニア」は、65歳以上の男女2,000人を対象に「シニアの労働観・労働実態」に関する調査を実施した。同社が以前行った調査では、働く意欲があって働けているシニアは現在の生活の満足度は平均76.0点だったのに対し、働きたいが定期的に働けていないシニアの満足度は平均65.9点であった。これを受けて、今回は働きたいシニアがなぜ定期的な仕事に就けていないのか、その理由についてどう考えているのかについて調査した。(アンケート対象:「とても働きたい」「ある程度は働きたい」と考えているが「不定期に働いている」か「働いていない」と答えた65歳以上の男性131人、女性69人)

  • 従業員モチベーションアップのコツ、ボーナスよりも効果的なのは

    企業の中には、営業の仕事をしている部署にノルマを課しているところも多い。 そしてそのノルマをクリアすると賞与が多く支給され、逆にクリアできないと賞与がなくなる、または降格などのペナルティが課されるといったケースもよく耳にする。 一見シビアで、やればやるほど賞与が上がり業種によっては良い制度のように思われがちだが、このような制度を導入している企業の中には、うまくいっていないところも多い。場合によっては半期の賞与が数百万と支給されるにもかかわらず、人はどんどん辞めていく。 どうしてそのようなことが起きるのだろうか。