前回から、『会社が、働きながら介護する社員にできること』を考えている。
 前回は、
・経営者・上司が『介護や高齢化社会』の現実を知る
・自社内で介護に関わるようになった社員に対しての時短勤務など制度の整備
・各社員について、介護に関わる可能性について知っておく
を提案した。
 今回は『会社が、生活面、精神面でできるサポート』について提案したい。
中小企業のための『仕事と介護』を提案します [10]

1)会社全体の取り組み

介護に関わる社員への一番身近な理解者になるのは、実際に介護をしたことがある介護経験者の社員だろう。
『介護者 社内サポーター』として、自身の経験を踏まえて、介護経験者が介護に関わるようになった社員の相談にのる。実際の対策が取れなくても、ただ、話しを聞くだけでも、介護者の心の支えになることができるのである。
会社は、相談者が心情を吐露しやすい職場環境を作ることが重要である。例えば、ちょっとした話ができるフリースペースを準備する、社内メールを整備するなど、公にならずに相談ができるような環境を整える。

『介護者 社内サポーター』は何人かいた方が相談者も相手を選びやすい。少なくとも男女それぞれ数名は居た方がいいだろう。
サポーターにはいくつかの注意事項をはじめに明確に示しておく必要がある。まず、『守秘義務』を徹底しておくことである。
会社も、信用のおける人物を選定する必要があるが、それでもついうっかりしゃべってしまった、ということはありうる。『守秘義務』は必ず徹底しておきたい。
また、サポーターの人たちには『傾聴』の知識を持ってもらう必要がある。サポーターたちが自分の経験ばかりを一方的に話し、介護者は心の悩みを打ち明けることができなかった、というのでは全く意味がない。
『話しを聞くこと』『相談者が相談したいことをくみ取ること』が最大の目的である、ということを『介護者 社内サポーター』には徹底しておきたい。

2)上司の役割

次に重要な役割を担うのは直属の上司である。
直属上司は、介護者の肉体的、精神的健康について、ほかの部下よりも注意を払う必要がある。

介護者は、不慣れな家事や介護作業によるストレス、認知症患者等の相手をすることによる精神的苦痛、被介護者の昼夜逆転行動による睡眠不足など、仕事とは全く異なる精神的負荷が加わっている。そのことを理解し、介護者が勤務をつつがなく行えるよう、不注意でけがなどしないよう、気を配る必要がある。
 また、介護者は自身の健康を後回しにして、介護する家族の健康や精神的安定を最優先するきらいがある。そのため、本人が健康を害する、精神的に不安定な状態に陥ることがあっても、何もせず、そのままにしておく人が多い。それが病気の重症化や介護うつを招くことになる。
介護者のちょっとした変化を見逃すことなく、さりげなく、でも細やかに、上司は介護している部下を見守ってほしい。
 
 そして一番重要な役割を担うのは、やはり経営者自身である。経営者自身が介護に対する深い理解と、介護者に対して『決して介護離職させない』という強い意志をもってほしい。それが後々に会社自身を守ることにつながっていく、と筆者は思う。

 次回からは実践編、『介護が始まった社員が出てきたらどうするか』、『介護している社員が会社を辞めて介護に専念したいと言って来たらどうするか』、について二回にわたって考える。


ふくすけサポート社会保険労務士事務所 
社会保険労務士 産業カウンセラー 仕事と介護コンサルタント 
森大輔

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