開業以来、おかげさまで150社を超える多くの顧問先に恵まれた。そのおかげか、労働基準監督署の調査対応も多いのは、致し方ないところだろう。企業数にくらべて、労働基準監督署の調査を担当する労働基準監督官の数は不足していると言われているが、私個人でいえば常に、いずれかのお客様の労働基準監督署における調査を抱えている感じだ。
労働基準監督署の調査を起点に顧問先になっていただくお客様もいるので、不適切な言い方で恐縮だが、ある意味、労働基準監督署の方は、私の営業マン的要素があるのもあながち否定できない。お客様の規模は、大小だが業種によっては狙われやすいものもあるようだ。代表的な業界は、運輸、介護業界だ。要は、労働問題、労働災害の起こる確率の高い業界である。労働基準監督署としては、当然の処置ではある。調査を行うことを通じて経営者に労働法に関する意識を持たせ今後、同様の労働災害が今後起きないよう未然防止を図らせようということである。
労働基準監督署の調査を起点に顧問先になっていただくお客様もいるので、不適切な言い方で恐縮だが、ある意味、労働基準監督署の方は、私の営業マン的要素があるのもあながち否定できない。お客様の規模は、大小だが業種によっては狙われやすいものもあるようだ。代表的な業界は、運輸、介護業界だ。要は、労働問題、労働災害の起こる確率の高い業界である。労働基準監督署としては、当然の処置ではある。調査を行うことを通じて経営者に労働法に関する意識を持たせ今後、同様の労働災害が今後起きないよう未然防止を図らせようということである。
労働基準監督署の調査項目のトレンド
たとえば、最近の労働問題・労働災害といえば、うつ病等の精神疾患の問題だ。うつ病に罹患する方は、私の実務の感覚からしてもここ10年、いや5年くらいは、非常に増加傾向にある。また、その精神疾患が業務に起因して生じたものであるということで、労災請求を行う人が後を絶たないし、労災として認定される数も飛躍的に増加している。平成26年度の「精神障害に関する事案の労災補償状況」によると、精神障害にかかる労災請求件数は 1,456件で、前年度比47件増しとなり、過去最多になったという。そのうち、労災として認められ、支給決定された件数は 497件と、前年度比61件増しとなり、こちらも過去最多になったということだ。
精神疾患の要因は、いろいろあるとは思うが、厚生労働省労働基準局長が出している精神障害が労災になるかどうかの認定基準となる「心理的負荷による精神障害の認定基準について」の通達を見ると、長時間労働を行っていることが、精神障害における労災認定に大きな影響を及ぼすということが読み取れる。
そうすると、日々における現場の労働基準監督行政は、企業に長時間労働の抑制を求めてくる。それが、具体的な調査としては、36協定遵守を求めてきたり、あるいは割増賃金不払いに対して厳しい調査を行うということになる。当然、労働法の専門家である社会保険労務士としては、この労働基準監督署の調査トレンドである割増賃金を含む労働時間問題に対して専門家として企業に関わることになる。
労働基準監督署の調査をどう捉えるか
最近でこそ少なくなったと思うが、私が開業した10年ほど前の企業経営者の多くの考えは「労働法は、お金儲けしていくに当たっては、じゃまくさいものだな」「なぜ、うちみたいな大企業でもないところに労働基準監督署の調査があるんだろう」等、労働基準監督署調査をかなりネガティブに捉えていたものと思う。まあ、今でもその考えは心の奥底にはあるのかもしれないが、最近の社会の情勢を考えると労働問題は、見ずに済ませられる問題ではないと多くの経営者が認識していると私は感じる。たとえば、精神疾患により働けない人の数は、日に日に増加しており企業の労働生産性を脅かす状況だ。この問題を棚上げしておいて、今後も企業競争力を維持していくことは、難しいと会社はすでに気づいているはずだ。
私からの提案は、労働基準監督署の調査を前向きに、企業の改善活動の一環と捉えてはどうだろうか?彼らは、強権を持っているのでどのみち、その指導内容に従うことになる。ならば、会社を半歩でも良くしていくものとして前向きに捉えていくこと、これがコンプライアンスを求められる時代の企業のあり方のように思うが、如何だろうか?
社会保険労務士 糀谷 博和