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中小企業に影響を与える本当の労基法改正案はこれだ!!

HRプロ編集部
2015/08/26

 労働基準法改正案の目玉であった「高度プロフェッショナル制度」の今国会成立について政府・与党が断念したと報道ベースで発表された。しかし、依然として立ち消えとなった訳ではなく、持ち越されたに過ぎない。ご存知の通り、この制度の対象は年収1,075万円以上の社員であることや、高度な職業能力を有する必要があり、厳格な要件が設定されている。制度を利用するには非常にハードルが高い。今後、同制度が成立した場合でも、この制度を検討するのはごく限られた一部の大企業のみであろう。

1か月あたりの残業時間が60時間を超えると・・・?

 一方、中小企業にとって影響大の改正がある。「高度プロフェッショナル制度」が「残業ゼロ法案だ!」云々と大々的に各種メディアで取り上げられたため、やや存在感に欠けるが、あわせて改正の柱となっている。それは、1か月あたりの残業時間が60時間を超えた社員に対し、5割増しの割増給与を支払うことを義務化するものである。既に大企業では、2010年4月の労働基準法改正によって、1か月の残業時間が60時間を超えると、5割増の割増給与を支払うか、あるいは割増給与の支払いに代えて休暇を与えるかの措置を講ずべきことが先行して義務化されている。だが、中小企業はこの適用が猶予されてきた。いよいよこの猶予措置が解除されようとしている。
 そこで今回は、猶予措置が廃止されたときに慌てぬよう今から検討すべき点を考えてみたい。
 改正案の計画通り平成31年4月に猶予措置が廃止されると仮定すると、残された時間はあと3年と数か月ということになる。自社で残業時間が60時間を超える社員がいる場合、今から対策を打たなければ間に合わない。すぐに解決できる問題ではないからだ。もっとも、すぐに解決できる問題であれば、現時点で既に60時間超の時間外労働をしている社員はいないだろう。現行のまま放置すると、割増給与部分が重く会社に圧し掛かり人件費を圧迫する。単純に現在の割増給与分に係る人件費の25%増だと考えればイメージしやすいかもしれない。
 まず検討すべきは、社員の時間管理自体が曖昧となっている場合は、労働時間の把握をしていく必要がある。既に60時間を超える残業の事実があるのであれば、その社員をピックアップした上で、日々の仕事の遂行状況を把握し、担当している仕事の洗い出しが必要である。ムダな作業はないか、担当職務が一人に偏ってしまっていないかという点も確認したい。これらを検討しても、残業時間の削減ができないとしたら、人不足という可能性が高い。職務過多ということだ。しかし、ほとんどの場合、担当させる職務が複雑に絡み合っており整理されていないことの方が多いというのが筆者の感じるところである。職務の洗い出しと、職務範囲を設定し直すことで削減できるケースが多い。

課長職以上の社員の場合は?

 そしてもう一つ注意すべき点は、「管理又は監督の地位にある者」の扱いだ。労働基準法41条で適用除外とされているという一点を根拠に、一般的に課長職以上の社員について割増給与を支払っていない中小企業が多く見受けられる。悪質な場合は、これを逆手にとり何らかの役職をつけて割増給与の支払いを免れるケースすらある。しかし、この運用は非常に危険であることを指摘しておきたい。監督官庁の調査が入った場合、是正指導の対象となるからだ。遡って2年分の割増給与に係る未払分を支払わなければならなくなるだろう。また、退職した社員から訴えられた場合も司法の場で未払分の支払い命令が下される可能性がある。
 あくまで「管理又は監督の地位にある者」とは、名称等ではなく、実態に即して判断される。大枠としては、一般労働者のような勤務時間の規制は受けず、採用権限や人事考課権があり、給与面においても他の一般労働者と比較して優遇措置がされているような者をいう。中小企業の場合、このような項目すべてに当てはまるのは取締役等の一部の役員のみであるケースがほとんどだ。とすると、これまで「管理・監督者」であるという理由のみで割増給与を支払ってこなかったような会社は、これを機に、このような管理・監督者に対しての支払いを勘案した総額人件費の見直しを図ることも必要であろう。
 これらの検討や対策について平成31年を迎えてからするのでは遅い。国は労働時間を削減する方向へと舵をきっている。労働力人口が減少するなか、長時間労働が恒常化する中小企業は人の採用が困難となる日はそう遠くない。現時点において改正施行が決定している訳ではないが、であるからこそ、猶予措置が廃止されても影響を受けない勤務体制づくりを今のうちから整えておくことは急務である。

SRC・総合労務センター、株式会社エンブレス 
特定社会保険労務士 佐藤正欣

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