森ビル株式会社(以下、森ビル)は2021年12月23日、オフィスマーケットの需要動向把握を目的に2003年より継続的に実施している「東京23区オフィスニーズ調査」の、2021年調査の結果を発表した。調査期間は2021年10月6日~29日で、主に東京23区に本社が立地する企業1,611社から回答を得た。これにより、新型コロナウイルス感染症がオフィス需要に与える影響などが明らかとなった。
コロナ禍で「オフィス需要」が増加か。新規賃借予定は前年比で増加、「オフィス面積」も拡大傾向に

「新規賃借予定あり」は2020年調査に比べて増加、オフィス面積は拡大傾向か

新型コロナウイルスの影響により働き方やオフィスのあり方を再定義する企業が増えているが、「オフィスニーズ」はどのように変化しているのだろうか。

緊急事態宣言解除後に実施した今回の調査で、まず森ビルが「新規賃借予定の有無」を尋ねると、「ある」が26%となり、2020年調査の24%を上回る結果だった。

また、「新規賃借予定面積の拡大縮小割合」では、「拡大予定」とした企業が40%となり、「縮小予定」の35%を上回った。2020年調査では「縮小予定」(42%)が「拡大予定」(33%)を上回っていたことからすると、オフィス面積は、“縮小”から“拡大”の動きに転じていることがうかがえる。
コロナ禍で「オフィス需要」が増加か。新規賃借予定は前年比で増加、「オフィス面積」も拡大傾向に

新規貸借の理由は「働き方の変更への対応」が1位。「賃料削減」や「立地」なども

続いて同社は、新規賃借予定のある企業に「その理由」を聞いている。その結果、新設項目の「働き方の変化に応じたワークプレイスの変更のため」が30%で1位となり、以下、「賃料の安いビルに移りたい」が29%、「立地の良いビルに移りたい」が26%などとなった。

2020年調査に比べると、「新部署設置、業容・人員拡大」の回答割合が14%から16%に増加した一方、「賃料の安いビルに移りたい」が37%から29%に減少したことから、同社は、「経済活動正常化への動きを背景とする、企業心理改善の兆しが見られる。」との見解を示した。
コロナ禍で「オフィス需要」が増加か。新規賃借予定は前年比で増加、「オフィス面積」も拡大傾向に

オフィスづくりの課題では「エンゲージメント向上」や「コミュニケーション」などが増加

同社が「オフィス環境づくりにおける課題」を尋ねた質問で、前年と回答を比較すると、「従業員のエンゲージメント向上」(25%→31%)、「社内コミュニケーション」(33%→35%)、「人材能力開発の強化」(20%→22%)などの項目で増加が見られた。一方で、「効果的レイアウトによるコストダウン」(39%→35%)や「従業員への健康配慮」(36%→33%)は、前年調査に比べて減少した。
コロナ禍で「オフィス需要」が増加か。新規賃借予定は前年比で増加、「オフィス面積」も拡大傾向に

従業員向けの施設・サービス需要は、「飲食・健康関連」のほか、執務環境を向上させたいニーズも

さらに、「従業員が利用すると思われるオフィスビルの共用施設」では、「社員食堂・カフェテリア・ラウンジ」が68%と最も多く、「リフレッシュスペース」が60%、「会議室」が54%などと続いた。また、「従業員が利用すると思われるワーカー向けサービス」については、「昼食・喫茶・朝食に関する優遇サービス」や「社員親睦会向けの飲食店優待サービス」、「スポーツジム・マッサージ施設の利用優待」など、「飲食関連」や「健康維持」に関連するサービスのニーズが高いことがわかった。
コロナ禍で「オフィス需要」が増加か。新規賃借予定は前年比で増加、「オフィス面積」も拡大傾向に
コロナ禍においては、「オフィスに求められるもの」も短期間で変化しているようだ。自社のオフィスに必要な機能を定義するなど、オフィスのあり方を改めて見直してみてはいかがだろうか。

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