組織人の職業観・仕事観は、社会に出て最初に経験した職場環境に大きな影響を受けるものである。“厳しい環境”で育った人材、“厳しい条件”の仕事をこなしてきた人材は「厳しいことが当たり前」と考えるようになり、“楽な環境”で育った人材、“楽な条件”の仕事しかしてこなかった人材は「楽なことが当たり前」と考える傾向にある。
「楽な環境」に慣れた社員をどう変える?

楽な環境・仕事に慣れてしまったら

もしも、“楽な環境”や“楽な条件”で仕事をすることに慣れてしまった社員が、その後に“厳しい環境”や“厳しい条件”で仕事をすることを求められると、精神的に非常に厳しい状態に追い込まれ、心に大きな抵抗感を持つことが多い。

たとえば配属以来、平易な仕事ばかり与えていた部下に対して、いきなり“難易度の高い仕事”“時間的余裕のない仕事”“責任の伴う仕事”などを行わせようとしたとする。このようなとき、指示を受けた部下が「私に難しい仕事をさせて、上司は楽をしようとしている」「上司が自分の仕事を私に押し付けてきた」など、上司の側から見れば“お門違いな不満”を持つことがあるのも、心に芽生えた抵抗感のなせる業といえる。

厳しい環境で仕事をさせるための6つの注意

それでは、部下に今までよりも“厳しい環境”で仕事をさせようとした場合には、どのようなことに注意をすればよいのだろうか。今までよりも“難易度の高い仕事”を任せるケースで考えてみる。

@ 事前に“理由”をよく説明する
今までは行わせていなかった“難易度の高い仕事”を任せる場合には、仕事を任せるのに先立って、部下に「今までの仕事のやり方、考え方を変えてほしいこと」や「なぜ、そのようにする必要があるのかという“理由”」をしっかりと説明することが大切である。このような事前の説明が十分に行われていない場合、上司が“難しい仕事”を行わせる意図を部下が誤解しやすくなる。

A 極力“段階的に”難易度を上げる
“難易度の高い仕事”を行わせる中でも、極力“段階的に”ステップを踏んで仕事の難度を上げることが大切である。本人の経歴から考えて“より取り組みやすそうな業務”を行わせる、“難しい仕事”を部分的に任せる、などの工夫をしたいものである。いきなり崖から突き落とすような仕事の与え方をすることがないよう注意したい。

B 「いつでもサポートする」という姿勢を示す
“難易度の高い仕事”を任せ放しにするのではなく、「困ったらいつでも相談にくるように」という点まで伝えておくことが必要になる。また、部下が相談をしやすい環境、雰囲気を自分自身が作れているかも確認することが大切である。

C 報告の頻度を増やす
任せた業務に関する部下からの“経過報告”を通常よりも頻繁に行わせることも一つの方法である。頻繁に報告することで部下は逐次、自分の仕事の適正性を確認でき、安心感と自信が醸成されやすくなる。また、仕事を任せた上司としても、頻繁な報告を受けられることで、任せた業務の軌道修正が行いやすくなる。

D “わずかな進歩”を見逃さない
“難易度の高い仕事”を行わせた部下が少しでもできるようになったことがあれば、しっかりと評価をすることが大切である。わずかな成功であっても決して見逃さず、小さな成功を誉め、本人の努力をねぎらうことがポイントである。“小さな成功”と“上司の評価”の積み重ねが、部下の仕事に対する考え方を少しずつ変える原動力になる。

E すぐにできなくても当然と考える
今まで行っていなかったことをできるようにするのは、決して簡単なことではない。とくに、“楽な環境”や“楽な条件”で仕事をすることに慣れてしまっている場合にはなおさらである。従って、任せたことを部下がなかなかできるようにならなくても、それを当たり前と考え辛抱強く、繰り返し指導し続けることが必要である。

一旦、身に付いた職業観を変えることは非常に困難である。そのため、「楽なことが当たり前」になった人材が多い組織は、厳しい経営環境を乗り切ることが容易ではない。しかしながら、“楽な環境”で仕事をすることに慣れてしまったのは、必ずしも本人の責任ではない。そもそも、社員の成長を見据えた、良い意味での“厳しい環境”が以前から提供できていれば、社員が“楽な環境”に馴染んでしまうことはなかったかもしれない。自分自身が所属する職場はどのような職場環境か、振り返ってみたいものである。


コンサルティングハウス プライオ 
代表 大須賀信敬 (中小企業診断士・特定社会保険労務士)

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