最近は、信じられない問題社員が増えてきたが、中には、社員だけでなく信じられない親もいる。父親が「息子に残業をさせるな」と会社に乗り込んできたことがある。
優秀な社員が会社を辞めても困らないようにするには?

 もちろん、きちんとした法律上の手続きを踏んでいる以上、そのような主張を聞き入れる必要はないのだが、そのようなことを主張してくる親がいること自体に驚く。もちろん決して過大な残業を強いているわけではない。
 やはり、どのようなことが起きても困らないように、就業規則をきちんと整備しておく必要があると実感する。しかし、当たり前のことではあるが、リスクに備えるのと同時に、会社には優秀な人材が必要である。優秀な人材の存在なくして会社の発展はない。
 「どうしても欲しい」と思うような光った人材が面接に来てくれないという悩みをよく相談される。また、仮に素晴らしいと思った人材を採用できたとしても、期待したような活躍をしてくれないことが少なくない。多額の出費をしたにもかかわらずだ。

 しかし、そもそも、優秀な人材は採用するものではなく、会社で育てるものである。仕事ができる社員を採用するのではなく、普通の社員を仕事のできる社員に変えていくことが大切なのだ。
 ただ、せっかく仕事のできる社員に育てても、仕事ができるようになった途端に会社を辞めてしまうことも珍しくない。仕事のできる社員には、どうしても多くの仕事を任せてしまいがちだが、そのような社員が会社を辞めていってしまったら大変なことになる。
 そこで、普通の社員を仕事のできる社員に変えていく仕組み作りが大切になってくる。仕組みができていれば再現が可能だからだ。ただ、この仕組みづくりができている会社は意外と少ない。わかりづらいと思うので、具体例をあげてみよう。

 私は、先日、大変素晴らしい経験をした。美容院で髪を切ってもらった際の出来事だ。入社3年目ぐらいの店員(Aさんとする)が、お客の前で先輩社員に厳しく注意をされていた。普段、厳しく注意をされている現場を見ると嫌な気分になることは少なくない。しかし、全くそのようこともなく、むしろ爽やかな気持ちになったのだ。
 そのあと、髪を洗ってもらっているときに、私がAさんに言われた言葉がとても印象的だった。
「注意をされると、場が気まずい雰囲気になりがちじゃないですか。お客様がいるところだとお客様まで気まずくなります。でも、気まずい雰囲気は、注意をした側ではなくて、注意をされた側の態度がつくりだしているんです。気まずい雰囲気になると、注意をされなくなって、結局自分が(成長しなくなり)困ることになるんです。だから、注意をされた側の態度がとても大切なんです。そのように先輩に教えてもらいました。」

 教育をした先輩も20代ながら、入社して誰かから教えられたわけではないようである。単に「素晴らしい考えをもった先輩を採用した」で済ませることはできる。また、Aさんの教育に成功して良かったと済ますこともできる。いくら素晴らしい人を採用したとしても、会社を辞めていってしまうことはある。Aさんもいつまでも会社にいるとは限らない。

 しかし、この先輩の発言を仕組みとして会社に導入することができれば、先輩やAさんが会社を辞めていってしまったとしても仕組みは残る。注意をした際に場が気まずくならない仕組み作りというわけだ。仕組みが残ればいつでも誰でも再現が可能になる。その仕組みで教育をすれば良いのである。


フェスティナレンテ社会保険労務士事務所 小嶋 裕司

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