企業で管理職の方の悩みを聞いていると多く聞かれる悩みが、部下が心を開いてくれない、何を考えているのかわからないといった悩みである。そのような時によくお伝えするのであるが、まずは部下の話を聴いてくださいということである。
どういうことかというと、話の聞き方には、「聞く」と「聴く」があるのである。
どういうことかというと、話の聞き方には、「聞く」と「聴く」があるのである。
聞くと聴くの違い
「聞く」は通常の会話でいうところの聞くである。一方「聴く」は、相手の思っていることを理解しようとして聴くことであり、傾聴であったり、アクティブリスニングと言われるものである。「聞く」と比較してより深く相手を理解しようとする聴き方ともいえる。
仕事をしているときは、多くは「聞く」ことが多いとは思いが、例えば部下の方から相談を受ける際には「聴く」必要がある。この違いをきちんと把握していないと、例えば部下が相談をしたいのに聞いているだけでは、部下は次からは2度と心を開くことはないだろう。このことが前述の部下が心を開いていない、何を考えているのかわからないにつながるのである。
聴くためのポイント
では、聴くためには、何をすればよいか?実はコミュニケーションの成立要素は、アルバート・メラビアン博士の研究によると、
・顔の表情 55%
・声の質や大きさ 38%
・話す内容 7%
であるとされている。
実際には、言葉以外のノンバーバルコミュニケーションが93%を占めていることとなる。
よく傾聴といえば、相手のいうことを繰り返せばよいのでしょう? うんうんと頷いてさせすればよいのでしょう? と誤った理解をされている管理職の方がいるが、実際には例えば姿勢や腕くみをしているか、目はどこを見ているかといった態度のほうがコミュニケーションには大切になってくる。
あなたの職場で、部下を立たせたまま、腕を組んで話を聞いている方はいないだろうか?あるいは、部下が全く話しかけてこない、全く会話がなされずすべてメールでやり取りしているという職場はないだろうか?
そのような職場では、まず管理職のコミュニケーションスキル研修が大切である。
コミュニケーションスキル研修を実際にやってみると、自分は大丈夫と考えている管理職の方ほど案外うまくいかないものである。自分ではきちんと聴けているという人に実際に傾聴訓練をしてみると、意外と足の向きが違ったり、手が動いていたり、姿勢が悪かったりすることがあるのである。意外と自身の癖は他人から観察してもらわないとわからないのだ。
研修では座学だけではなく、実際に3人組になって話す人・聴く人・観察する人に分かれてロールプレイをすることで最大限効果を出すことができる。また相互に指摘しあうことで、例えば参加者が同じ会社の管理職である場合は、その後も相互に指摘しあうことのできる関係づくりにもつながるのである。
上司が相談しやすい雰囲気を作ることで、職場ではコミュニケーションが活発になる。部下も普段の業務をギリギリまで報告しないのではなく、率先して話しかけてくれるようになるだろう。またよく接することで、メンタルヘルス不調に気づくきっかけの大事なポイントである「いつもと違う」に、コミュニケーションの増加のおかげで気づくことができるようになるのである。上司がコミュニケーションスキルを獲得することで、実はメンタルヘルス対策になり休職者を予防するだけではなく、組織の風通しがよくなり業務の効率化にもつながる。職場は言うまでもなく人で構成されているため、コミュニケーションはとても大切なのである。
会社にとって管理職は組織の要である。経営者や管理職の方から率先してコミュニケーションスキルを獲得し、風通しのよい職場を自ら作っていくことが大切である。
Office CPSR(オフィス シーピーエスアール)臨床心理士・社労士事務所 植田健太