株式会社日本能率協会マネジメントセンター(以下、JMAM)は2022年12月16日、新入社員の意識と行動、指導者の指導と育成に関する調査報告書「イマドキ新入社員の仕事に対する意識調査2022」を発表した。調査時期は2022年6月で、2021~2022年に入社した新入社員671名、新入社員の育成に関わる上司・先輩社員1,629名の計2,300名から回答を得た。本記事では、新入社員側の回答結果を抜粋し、働き方(人事制度)の希望や上司との関わり方などの意識傾向について紹介する。
コロナ禍の新卒生の約6割は「挑戦より失敗を回避したい」と考える。育成のカギは「自己効力感」を高める支援から

新卒生の7割が「ジョブ型」を歓迎。「希望する部署・職種が叶うか」は入社に影響か

働き方や働くことへの価値観が多様化する昨今、入社後間もない若手社員は、どのような志向を持っているのだろうか。近年日本でも「ジョブ型雇用」への転換が進んでいることを踏まえ、JMAMははじめに、「企業があらかじめ定義した職務内容(ジョブ)にもとづいて採用・配置・処遇などが決まる制度への移行を歓迎するか」と22卒生に尋ねた。すると、「そう思う」が76.9%と過半数を占めた。また、「自分が希望する部署や職種で働けるかどうかが、入社意向に影響したか」と問うと、63.8%が「はい」と回答した。

新入社員の7割以上が「ジョブ型の採用・配置・処遇」を歓迎しているほか、「希望する部署・職種への配属」が6割以上の新入社員の入社意向に影響していることが判明した。
ジョブ型雇用への転換への若手の意識

「キャリアがイメージしづらい」が、配属後の課題や不安の上位に

続いてJMAMは、「配属1~3ヵ月後の課題・不安」について尋ねた結果について、2022年調査(22卒)の結果と直近3年間の回答結果を比べた。その結果、2021年調査(21卒)と比較して大きく順位が上昇した項目は「生活リズムがつかめない」(17.2%)で、10位から1位となっていた。2021年の順位が低かったことについて同社は、「配属後の時期が緊急事態宣言、まん延防止等重点措置期間にあたり、在宅勤務割合が高かったことが要因の一つ」と分析している。

また、新型コロナウイルス感染症の流行前(2019年/19卒)と比べて、21卒の順位が上昇していた項目は「仕事が自分にあっているか」(16.8%)、「担当する業務の知識・手順がわからない」(14.9%)、「何がわからないのかわからない」(14.2%)だった。この結果から、新卒生は「コロナ禍前よりも仕事内容や業務手順が把握できていないため、業務を通じたキャリア形成、課題認識がしづらい状況」にあることが推測できる。
入社直後の不安
また、「配属から6~12ヵ月の時期の不安」について、過去の結果と比較している。コロナ禍前(2019年/19卒)と比較すると、「わからないことを聞けない」(14.9%)が7位から4位へと上昇しており、関係性構築やキャリア形成に悩む姿がうかがえた。この点について、同社は「在宅勤務などで働き方の自由度が増し、新入社員の成長過程で重要な『学び』や『指導育成』の機会損失が生じ、自社や組織への適応がうまくいっていないのではないか」との見解を述べている。
配属から6~12ヵ月の時期の不安

Z世代は「挑戦よりも失敗を回避したい傾向」が強まっている

さらに同社は、「若手社員の成長意欲」に関して分析を行っている。まず、「『失敗すること』に関してどう考えるか」では、2020年以降どの年の新入社員も、70%以上が「失敗から学ぶことは多いので、恐れずに取り組むことが大切である」と回答した。その一方で、「仕事を一人で担当していけるようになったら、どのような仕事を任されたいか」の質問に対しては、どの年度も5割超が「失敗したくないので、責任ある大きな仕事は任されたくない」と回答している。

また、「自分自身が成長することについてどのように考えるか」という質問では、「無理のない範囲で業務に取り組みたい」が54.5%で過半数となった。「一時的に業務の負荷や労働時間が増えても挑戦したい」との回答を上回り、「挑戦よりも失敗を回避したい」と考えている傾向が見られた。同社は「Z世代の入社が本格化し始めた2020年以降から回避したいと考える層の割合が優位になっている」との見解を示している。
自己の成長に関する意欲や傾向

約6割が「考えが合わない上司とは距離をとる」と答える

最後に、「新入社員における上司・先輩との関わり方」について同社が結果を経年でまとめたものを紹介する。「上司・先輩から叱られたら、その後、どのような関係を持とうと思うか」について、約6割が「こちらから関わりを持ち、必死で食らいつこうと思う」と回答。その一方で、「価値観が合わない上司・先輩にどのように関わっていこうと思うか」に対しては、約6割が「自分から歩み寄ろうとは思わない」と回答した。

また、「仕事に行き詰ったとき、どのように感じるか」には、「その状況を上司・先輩に察してもらい、話しかけてほしい」を選択した人の割合が55.6%と半数を上回った。「他者に働きかけるか」を尋ねたところ、「はい」と答えたZ世代は61.6%となり、他世代(ミレニアル・氷河期・バブル期)を下回っていた。どちらかというと、“指導者側への期待”が大きい世代のようだ。
上司・先輩との関わり方の傾向
コロナ禍以降の新入社員の傾向として、オンライン環境の活用も進んだためか「仕事全般について把握しづらく、キャリア形成に苦手意識を感じている人」が増えているようだ。また、「失敗せずにできる範囲の仕事をしたい」という守りの姿勢や、先輩や上司からの働きかけを待つ姿勢もうかがえる。本調査結果の傾向を踏まえつつ、自社のマネジメント層が実際に関わった感触などの情報をまとめてみてもいいかもしれない。

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