前回(※)は「基本給連動型退職金制度」をご紹介しました。基本給が昇給すると退職金も自動的に増加しますので、「将来的に退職金がどれだけ必要か」を試算するのも大変であることをご説明しました。今回は、将来の退職金を「確実に支払うことができる制度」について詳しくお話いたします。
※ 「退職金制度」について(1)〜「基本給連動型退職金制度」とは〜

退職金額を先に決めてしまう「定額制退職金制度」

「定額制退職金制度」とは、「勤続年数○年で○万円」という具合に、最初に退職金額を決めるタイプの退職金制度です。中小企業においては、この仕組みが一番適していると考えていいでしょう。たとえば、「採用」から「定年」までの最大勤続年数を40年とします。公表されている退職金の指標を参考に、勤続40年での退職金額はどれぐらいで、自社にとってどれぐらいなら支払うことができるかを決定します。そして、そこから30年、20年、10年、5年など、ある一定間隔で退職金額をそれぞれ決定していきます。「3年未満は支給しない」という方法も良いでしょう。

このように設計すれば、現在の社員の勤続年数から「定年退職までの退職金額」が計算しやすくなり、準備もスムーズです。この制度だと「勤続年数に応じた一律の退職金額」となりますが、勤続年数だけでは貢献度を反映できないため、「役職」や「その役職で勤務した年数」などの金額も決めて退職金額に加算するなど、勤続中の貢献を反映させる場合もあります。

「中小企業退職金共済制度」について

また、「中小企業退職金共済制度」も多くの中小企業で利用されている退職金制度のひとつです。退職金の外部積み立てとして、昭和34年に国の中小企業対策の一環として制定された「中小企業退職金共済法」に基づき設立された制度となります。事業主が「勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部(以下、機構・中退共)」と共済契約を結び、毎月の掛金を口座振替によって納付します。従業員が退職したときは、その従業員に機構・中退共から退職金が直接支払われます。

対象は、「中小企業者に該当し、そこで雇用されているすべての従業員」です。掛金は税法上、損金または必要経費として全額非課税となり、従業員の給与所得にもなりません。しかも国の制度として安全に管理運用されており、掛金は月額5,000円から任意選択して決めることができます。前述の「定額制退職金制度」と基本的な考え方は同じで、掛け金を支払うことで自動的に退職金額が決まります。

「中小企業退職金共済制度」のメリットと注意点

メリットは、「企業側が退職金の準備をしなくても良い」ということです。掛金を支払うことで積み立てられますので、退職者が発生した際も、退職金の支払いの心配はありません。しかし、社内で退職金規程に「就業規則に定める懲戒規定に基づき懲戒解雇された者には退職金は支給しない」などの条文を作成している場合、注意しなければならないことがあります。「中小企業退職金共済制度」は積み立て型となるため、前述のように加入していると機構・中退共から退職者に退職金が直接支払われることになり、懲戒解雇の場合でも支給をやめることはできません。企業側としては少し複雑な気持ちになります。

また、自社の退職金規程で計算した退職金の支給額が、「中小企業退職金共済制度」から支給される退職金額よりも多い場合は、企業側でその不足分を用意し、支給しなければなりません。そうならないために、「中小企業退職金共済制度」を利用される場合は、退職金規程と支給額を合わせておくことが必要です。


2回にわたって、「基本」から「応用」までさまざまな退職金制度をご紹介しました。退職金制度は雇用の定着を目的として導入された要素が多く、勤続年数が長いほど退職金額が多くなる仕組みです。多様な働き方に変化しているこの時代に、雇用の定着を目的とする手法が退職金制度なのか? を、企業側は検討する時期ではないでしょうか。