2020年6月12日、新型コロナウイルス感染症対策の一環で設けられた「小学校休業等対応助成金」の1日あたりの支給額の上限について、15,000円に引き上げ「令和2年度第2次補正予算」が成立した。そこで今回は、この助成金の基本的な仕組みと、補正予算成立による変更点を整理してみよう。

そもそも「小学校休業等対応助成金」とは

新型コロナウイルスの感染症のまん延にともない、仕事をしながら子育てをしている保護者の生活は一変した。学校が臨時休業となったり、放課後児童クラブや保育所などから利用を控えるように依頼されたりした結果、平日の昼間に子供が家にいることとなり、その面倒を見るため、保護者が仕事を休まざるを得ないケースが多発したからである。

このような状況で仕事を休んだ場合、「使用者の責に帰すべき事由による休業」ではないので、企業側から休業手当が支払われることはない。その結果、仕事を休んだ分、収入が減少することになる。

そこで、このような従業員を救済するために創設されたのが、「小学校休業等対応助成金」である。子供をもつ従業員が学校や保育所などの臨時休業で仕事を休むことになった場合に対応する制度だ。企業側が「労働基準法」上の「年次有給休暇」とは別に、賃金を全額支給して休暇を取得させたのであれば、休暇中に支払った賃金の100%分を助成しようという仕組みである。

ただし、この助成金には次のような条件が設けられていた。
(1)助成金の支給上限額:1人1日8,330円まで
(2)助成対象となる休暇の期間:2020年2月27日〜6月30日まで
(3)助成金の申請期間:2020年9月30日まで

上記3つの条件の中で、特に(1)は「小学校休業等対応助成金」の仕組み上の大きなポイントといえる。従業員の休暇中に支払った賃金の100%分が助成されるといっても、実際には従業員1人あたり1日8,330円という上限額設定があるからである。

1日8,330円を超えると“持ち出し”が発生する従前の制度

具体例で説明しよう。例えば「時給1,200円で、1日の所定労働時間が6時間」という条件で働いている従業員の場合、この従業員が子供の通う小学校の臨時休業を受けて仕事を休むとする。このケースでは、企業側がこの従業員に休暇中の賃金を全額支給するとなると、その額は1日あたり7,200円(=1,200円×6時間)になる。

さらに、2020年4月1日以降の休暇日数を20日間とする。企業側がこの間の賃金の全額にあたる144,000円(=1,200円×6時間×20日)を支払って従業員に休暇を取得させた場合、企業側は同額の144,000円を「小学校休業等対応助成金」として受け取れることになる。つまり、この例であれば、休暇中の従業員に支払った賃金の全額が助成金で賄えるわけである。

次に「時給1,400円で、1日の所定労働時間が8時間」という条件で働いている従業員について考えてみよう。このケースでは、企業側が休暇中の賃金を従業員に全額支給するとなると、その額は1日あたり11,200円(=1,400円×8時間)となる。「小学校休業等対応助成金」の支給上限額は1人あたり1日8,330円なので、この例では限度額を2,870円(=11,200円−8,330円)オーバーしてしまう。

休暇日数を20日間と仮定すると、企業側がこの間の賃金の全額にあたる224,000円(=1,400円×8時間×20日)を支払って従業員に休暇を取得させた場合、企業側は166,600円(=8,330円×20日)しか「小学校休業等対応助成金」として受け取れることができない。

つまり、このケースでは、休暇中の従業員に支払った賃金の一部しか助成金で賄えず、企業側に“持ち出し”が発生することになる。新型コロナウイルス感染症の影響で経営状況が悪化している企業にとって、“持ち出し”が発生する仕組みは採用が困難といえよう。

上限額を8割アップさせた「第2次補正予算」

2020年6月12日に成立した「令和2年度第2次補正予算」では、「小学校休業等対応助成金」について、以下の3点が変更された。
(1)助成金の支給上限額:2020年4月1日以降の休暇は、1人1日あたり15,000円まで(6,670円増額)
※2020年3月31日までの休暇は、1人1日あたり8,330円までで変更なし
(2)対象となる休暇の期間:2020年2月27日〜9月30日まで(3ヵ月延長)
(3)助成金の申請期間:2020年12月28日まで(3ヵ月延長)

上記の中で最も大きな変更点は、令和2年4月1日以降の休暇に対して、助成金の支給上限額が「1人1日あたり8,330円」だった従前から「15,000円」へと、約8割増に変更された。

例えば、前述の「時給1,400円で、1日の所定労働時間8時間」という条件で働いている従業員のケースで考えてみよう。企業側がこの従業員に休暇中の賃金を全額支給する場合、1日あたり11,200円(=1,400円×8時間)という金額は、制度変更の結果、新しい上限額(1日あたり5,000円)を上回らない。

そのため、仮に休暇日数を20日間とすると、企業側がこの間の賃金の全額224,000円(=1,400円×8時間×20日)を従業員に支払って休暇を取得させた場合も、企業側は同額の224,000円を「小学校休業等対応助成金」として受け取れることになる。つまり、従前の助成金制度では、休暇中の従業員に支払う賃金の一部しか賄えなかったケースでも、制度変更により全額を助成金で賄えるようになる場合が増えるわけである。

「小学校休業等対応助成金」は、子育てをしながら働く従業員に働きやすい環境を提供するため、ぜひとも利用したい制度といえる。

ただし、申請の際には「申請書が一部漏れている」、「通帳、キャッシュカードの写しが添付されていない」などのトラブルが数多く発生しているようなので、提出書類の不備・不足などにはくれぐれも留意し、有効活用していただきたい。
【参考】
厚生労働省
「小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援のための新たな助成金を創設しました」



大須賀信敬
コンサルティングハウス プライオ 代表
組織人事コンサルタント・中小企業診断士・特定社会保険労務士
https://www.ch-plyo.net