ハローワークは、1日の利用件数17万人、年間就職件数162万人の規模を誇る求人媒体である(※1)。しかし、こんなに多くの人がハローワークから就職しているにもかかわらず、「うちには誰一人、応募してきてくれない」と悩む会社は多い。今回は、ハローワークで「求める人材」を採用でき会社は、なぜ獲得できるのかをデータにもとづいた科学的観点から解説していきたいと思う。

先入観にまどわされないことが採用の肝

ハローワークの利点は、日本トップクラスの規模を誇るうえ、インターネットでも求人を広く公開しており、多くの求職者が閲覧できることにある。また、求人広告掲載費は無料、雇用助成金の条件に合えば助成金を受給することもできる。

そして、多くの経営者や採用担当者が認識できていないことがまだある。それは、求職者の多くが「失業給付」を受けるために、ハローワークにおいて求職活動を行わなければならないということだ。これは、民間職業紹介事業者よりも有利な点である。

このような好条件なのに「ハローワークはダメだ、求める人を紹介してもらえない」という先入観からハローワークを利用しない会社が少なくないようだ。そのような企業に限って「お金をかければ、求める人を紹介してもらえるに違いない」という思い込みから、採用コストが高い民間職業紹介事業者へ採用業務を丸投げしている。ひたすら待ちの姿勢を貫き通し、応募が来なければ「紹介事業者の責任だ」として自主努力をしようとしないため、人手不足は解消しない場合が多いのだ。

上述とは反対に、ハローワークを積極的に活用し、自社が求める人を紹介してもらえている企業を紹介してみよう。それは、倒産寸前だった会社を25年連続黒字にまで成長させた株式会社日本レーザー。同社会長の近藤宣之さんは自著で次のように述べられている。

ハローワークでは、優秀な人は採用できないんじゃないか、と思う人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。英語によるコミュニケーション能力を検定するための試験であるTOEICで985点(満点は990点)を取る女性社員、財閥系の大手企業から転職してきた女性社員など、非常に多くの優秀な社員をハローワークを通して採用しています。
ハローワークには、かつて大手企業に勤めていた人たちが仕事を探しに訪れることも珍しくありません。なかには、パワハラ、セクハラ、マタハラといったハラスメントを受けて、退職した人もいます。「そうした人は、企業の規模や有名度合い、給与などより、考え方や価値観が合致するかどうかを重視する傾向があります。そして、そういう人は、入社後、本当に頑張ってくれます。

『社員に任せるから会社は進化する』より(※2)


このように、ハローワークを活用することで、求める人を獲得できている会社は現に存在する。また、ハローワーク採用を積極的に続けていれば、ハローワーク側も企業が求めている人材を把握してくれるようになるため、優先的に適した人を紹介してもらえるようになる。いわゆる相乗効果を得ることができるのである。

求める人を紹介してくれなかったらハローワークの責任だと決めつけるだけではなく、「どのようにすれば、求める人を紹介してもらえるのだろうか」と考え、企業側が主体的に行動することが大切なのである。


※1:厚生労働省 職業安定局「公共職業安定所(ハローワーク)の主な取組と実績」(2017年7月)
※2:近藤宣之『社員に任せるから会社は進化する』(2018年/PHP研究所・刊)
日本電子の子会社だった株式会社日本レーザーを倒産寸前から25年連続黒字にまで成長させた。中小企業庁長官賞やホワイト企業大賞などを受賞。社員を一番大切にする経営を実践し、離職率をほぼゼロにした。

求める人を紹介してもらえない理由は、創意工夫と熱意の不足

ここでは、求人票作成の際に注意したい点をお話ししたい。独自の工夫を凝らさず、何も考えずに記入すればいいものではない。

下図は、「アイトラッキング」という手法を用いて、ハローワーク求職者が求人検索一覧画面のどこを注視しているのか計測したものである。
出典:労働政策研究・研修機構「労働政策研究報告書2012 No.147」(※3)

青丸の集中している箇所が、求職者が注視しているところだ。「職種」にほとんど集中していることがよくわかる。この結果から、「職種で求職者は会社を選別している」ということが明らかだろう。

さらに詳しく述べれば、求職者の気を引く職種の記載になっていないと、求人票を開いて見てもらう段階へ進んでもらえないということだ。だから、職種で求職者の気を引けなければ、端から求人票を出していないことと等しいのである。

次に、職種で求職者の目に留まり求人票を参照してもらえた場合、求職者は求人票のどこを注視しているのかを見てみたい。
出典:労働政策研究・研修機構「労働政策研究報告書2012 No.147」(※3)

この図では、視線が長くとどまる箇所ほど赤色で示されており、左中央の「仕事の内容」欄がもっとも赤くなっており、求職者が「仕事の内容」にとても興味があることがわかる。この結果からわかることは、「自分にできる仕事かどうか?」、「自分に合う職場かどうか?」などを求職者は見ているということだ。

さらに詳しく述べれば、賃金や労働時間等の労働条件が他社に比べて良くても、自分に合った仕事内容でないと応募しないということである。それを裏付ける次の表を見ていただきたい。
出典:労働政策研究・研修機構「労働政策研究報告書2012 No.147」(※3)

この求人票における注視時間表からは、意外にも「賃金」は16位と下位であり、「仕事の内容」が群を抜いて1位であることがわかった。

※3:労働政策研究・研修機構「労働政策研究報告書2012 No.147」

まとめ

企業がハローワークで求める人を獲得できない大きな原因は、「職種」と「仕事の内容」の記載が不十分だからだ。ゆえに、求人検索のトリガーとなる「職種」に創意工夫をこらし、「仕事の内容」は求職者の応募熱を高めるために、求職者目線で、企業側も熱意を込めて、詳細に記載しなければならないのである。

次回は、職種と仕事内容をどのように考えればいいのかをお話しする。


佐野浩之
ひと・しくみ研究所
社会保険労務士
採用・定着・教育に強い ひと・しくみ研究所
https://www.hitoshikumi.com/