「上役の指示に従って地道な努力をするのは主体性のない行為である」という設問の回答傾向は、下記のようになっています。

そう思う   10.5%
分からない  17.3%
そう思わない 72.3%

「そう思わない」という答えの割合は、この10年、2009年が77.4%で一番高く、その後2012年の69.6%まで下がりそこから若干上下しながら横ばいの傾向にあります。
この設問、「人の指示のもとに、仕事を地道にやる」ことを選択するかどうかを問うているわけですが、考えてみれば、新入社員に仕事を選ぶ権利や権限、知見があるわけではありませんので、与えられた仕事に黙々と取り組むことしかできません。
だいたい、企業内で「仕事を選ぶ」というのは割に難しいことで、ほとんどの人は指示を受けて、次々やってくる業務をこなしているはずです。
それでも実績を積んでいくことで、企業の中で徐々に仕事を選べるようにはなってきます。
自らの実力を顧みず、仕事を選ぼうとするそのような人を弊社では
「選択重点主義の虜(とりこ)」と呼んでいます。
これは、「選ばれないものは選べない」ということを知らず、「自分が選べないのは不自由」だと考えることです。
80年代前半にはこの言葉を使っていますので、昔からこの手の人はいたようです。

また、弊社では自分の能力や資質、置かれた立場を無視して理屈をこね、ろくに仕事しない人を「観念性の強い社員」と呼んでいますが、この観念性の特性も、「選択重点主義」の人は持っていると思われます。
最近では、常見陽平さんが「意識高い系」と名付けた人たちがいますが、これもおそらくこの「観念性の強い」部類に入ると思われます。
上記の設問で「そう思う」と答える10.5%の人は、このような選択重点
主義であったり、観念性が強かったりすると思われます。

最近の新入社員にこのような観念性の強いタイプが増えてきたと感じる方も多いと思います。
「意味の分からないことはやらない」、「自分に取っての損得を判断してから行動する」というような指摘も聞きます。
ただ、多くの人は「意味の分からないことはしたくない」、「損なことはしたくない」と考えます。
そういう意味では、新入社員を責めても仕方ないかもしれません。
「新入社員時代は下積みで、まず、言われたことをきちんとやるもの」という観念が一般的にあるかと思いますが、このような観念を変えないといけない時代かもしれません。
それでもなお、「人の指示のもとに、仕事を地道にやる」ということを納得させようとするには、別の観点からの理解が必要だと考えます。

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