2016年卒の新卒採用時期の変更についていろいろな憶測が飛び交っています。3月に企業の採用広報開始がキックオフになるのは間違いなさそうですが、選考開始についてはどうもばらばらになるのではという雰囲気を感じております。ちょうど私たちが就職活動をしていたときのように、夏の選考開始というのが事実上の内定日みたいな位置づけになってしまうのではという印象ですね。そうだとすると、3月から8月までの期間が就活のピークになってしまいますので、4年の前期は学生がまったく学校に来ないという状況になってしまいます。これではもともと学業の妨げになるからという意見から就活時期を後ろ倒しにしたはずが、かえってマイナスになってしまいますよね? まだ時間があるのでこれから調整を進めていく中で、そうならないようなルール決めや配慮がなされていくことを期待したいと思います。
  さて、今回はこの一括採用についての個人的な提言を述べてみたいと思います。とは言うもののそんなに大したことではなく、インターンシップ型の採用選考方法を導入ということです。すでにワークスアプリケーションズやソニーでは、インターンシップに参加した学生の優秀層に内定パスのようなものを付与しているという取り組みを実施しているようですが、そうしたスキームを従来の面接選考方式に加えて導入、定着化できないかと考えております。

 導入の理由は二つあると考えています。ひとつは、今の面接重視の選考では一面的な判断でしか人材を見極められないこと、もうひとつは、大学の大衆化への対応ということです。
 自律的、自主的に行動でき、チャレンジ精神が旺盛でコミュニケーション能力の高い学生を選抜する上で、主に学生時代に取り組んできた様々な内容を中心に面接で確認するというのが今のトレンドだと思います。加えて、なぜこの会社で働きたいのか、入社して何をしたいのかを面接で確認することで入社への意欲を確認し、それで納得できる回答が得られれば内定という流れですよね。これはこれで有効だと思いますが、実際の就職支援の現場で学生を指導していると、すべての学生にこの内容を一定のレベルにまで引き上げることは困難であるように感じています。

 一方、「では企業は大卒者にはすべてこのレベルを求める必要があるのか」という視点ですが、これも無理があると考えています。この20年で大学生の数は倍になりましたが、新設された大学は少子化の影響で定員数の確保に苦労しており、その結果、希望すればかなりの確率で入学できる大学が増えています。極端な例ですが、中学高校と一度も受験勉強どころか全国模試を受けたことがない学生でも大学まで進学できてしまうという状況が実際に起きているように聞いています。自主性や自律性は自らが何かを成し遂げたいという動機に基づき、その達成に向けて行動を起こすという経験を通して養われるものだと考えていますが、望めば主体的な行動を起こさずとも大学進学まで手に入ってしまうという今の状況下では、すべての学生がそれを大学卒業までに身に着けることは難しいのではと感じています。
  加えて、企業側の人材ニーズについてもこの10年くらいで紆余曲折があったように思慮しています。個人的な感覚になりますが、10年くらい前には総合職=大卒、一般職=派遣みたいな流れが固まりつつあったように感じています。その後、リーマンショック前後に、熟練定型業務の技能継承の視点から一般職の採用が復活しつつあり、加えて派遣切りや派遣法改正の問題で一般職=派遣社員という考え方も変わってきているように感じております。一般職=高卒・短大というのが従来の枠でしたが、これも大学の大衆化でそうとも言えない状況になっており、一般職=大卒・短大卒・高卒というのが自然な流れになってきているように感じております。

 では、「一般職と総合職を採用の段階から分けて募集すればよいのでは」ということなのですが、人事処遇制度も含めてそのような階層化がされていないと難しいように思います。現実的には社員と職種による役割化があるレベル以上に行われている企業でないと難しいでしょう。また、採用のカテゴリーを分けて選考を実施しても、従来通りの面接重視の選考では、結局のところ志望動機や自己PRの内容を中心に判断するので、あまり意味がないようにも感じてしまいます。

 そこで提案したいのがインターンシップ型選考の導入です。具体的には数週間程度の作業実習(インターンシップ)を経て合否を判断するという選考方法です。採用に直結したインターンシップは望ましくないという議論がありますが、採用直結のインターンシップではなく、インターンシップ型の選考です。実際にその企業でしばらく働いてみたうえで、仕事の内容や社風とのマッチングを見極めて合否を判断するわけですから、面接よりもマッチングの精度が上がるはずです。さらに、仕事に取り組む姿勢や業務遂行の精度などは面接ではなかなか見えてこない部分ですが、これは実際に仕事についてもらう上で明らかになると思います。

 自発的・主体的に取り組むことは苦手でも、何かを粘り強く継続して取り組む姿勢は、それはそれで価値があるのではないでしょうか。企業がグローバル展開を推進していくうえで、自発性や主体性、創造性は確かに重要だと思います。しかし、一方で日本独自の強みという視点で考えた場合、自発性や主体性が日本人の強みであるとは言い切れないと思います。モノづくりやおもてなしの心に表れるような細やかな気配りや、陰日向なくひたむきに粘り強く物事に取り組むという部分をビジネスで発揮させることが、日本の産業の強化につながる部分もあるはずです。そうした部分の資質を重視した人材の採用・育成という視点も重視すべきではと思います。しかし、これは従来の面接重視の選考スキームではなかなか見極められないのではないでしょうか。

 2016年卒の選考の流れがまだまだ読み切れない部分も多いため、これ以上の具体的な提案は現時点では難しいのですが、これを機会にぜひインターンシップ型選考を浸透させることはできないかと個人的には考えております。
そういう視点で見た場合、今回私が立ち会った正課プレゼンは、受講した学生の潜在能力を短期間に大きく引き出すイベントとしては、とても有効に機能したと考えています。当初はこの単位をセルフマネジメントスキルの実践の場として設定しており、成果プレゼンはあまり重要視しておりませんでした。発表の内容をその場でフィードバックすることによって、授業全体の振り返りの場として活用することを主目的として設定したわけです。
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