HRサミット・経営プロサミット2015講演レポート。「経営再生の現場と自らの経営から得た学び」をテーマに株式会社リヴァンプ 代表取締役社長 兼 CEO 澤田 貴司氏による講演の模様をお届けする。
経営再生の現場と自らの経営から得た学び
株式会社リヴァンプ 代表取締役社長 兼 CEO
澤田 貴司 氏
981年上智大学卒業後、伊藤忠商事株式会社に入社。化学品営業、流通プロジェクトを担当。イトーヨーカ堂とセブン-イレブン・ジャパンプロジェクトに参画、米国セブンイレブンの買収に携わる。1997年株式会社ファーストリテイリング入社。半年後には常務商品本部長に、翌98年に副社長に就任。営業部署の責任者としてユニクロの急成長に貢献。2003年株式会社キアコン設立、代表取締役就任。2005年10月、株式会社リヴァンプを設立し代表取締役就任、現在に至る。

商社マン時代、米国セブン-イレブン買収案件に携わったことが転機

今日は、私がこれまでさまざまな経験をさせていただいた中で学んだこと、考えていることをお話ししたいと思います。
 まず、大学を出て、入社して16年間過ごしたのが伊藤忠です。ここで化学品ビジネスを11年間経験して、商売のイロハ、外国為替、貿易業務など、商社のビジネスの根本を叩き込んでもらいました。その私の仕事観を大きく変えたきっかけが、12年目、米国セブン-イレブンを買収するという社長直下プロジェクトの一員に突然抜擢されたことでした。イトーヨーカ堂、セブン-イレブン・ジャパンとの共同プロジェクトでしたが、買収後も、5年間、現地に乗り込んで、どうやって米国セブン-イレブンを再生させていくかという過程を目の当たりにしました。
 それまで私がやってきたのは船1隻の商いで数億円の売上を上げる化学品のトレーディングでしたが、小売業の魅力を知り、セブン-イレブン・ジャパンの考え方、仕組みに感動し、小売業で起業したいという思いが強くなって、チャレンジしたのが伊藤忠での企業内起業です。
 日本の小売市場は140兆円ほどと規模が大きいのに、きちんと仕組みができていて、近代化された経営をしている会社は、当時からセブン-イレブン・ジャパンがダントツで、そのほかには多くない。だから、そういう仕組みと経営でやれば必ず面白いビジネスができると考えたんですが、残念ながら挫折し、外に出てチャレンジしようと決意して伊藤忠を飛び出しました。

 そのときに出会ったのがユニクロの柳井社長です。まだ売上高は400億円ほどだったころですが、当時から柳井さんはすごいことをおっしゃるんです。日本の小売市場140兆円のうち衣料は15兆円くらいある。その中でいいものをちゃんとつくって最高のサービスで販売すれば、10%必ず取れるはずだ。力を貸してほしいと。柳井さんの話に感銘を受け、その日のうちに「お世話になります」と握手しました。

フリースキャンペーンを仕掛け、ユニクロの爆発的成長を目の当たりに

経営再生の現場と自らの経営から得た学び
小売業の業務を実際に経験したことがありませんでしたから、お願いして、店長候補として店舗で業務をスタートしましたが、柳井さんから聞いた理想と現場で起こっている現実には大きな差がありました。たとえば、商品開発に問題があるせいで、店舗スタッフが自社商品に愛着を持っていなかったり、本部への不満は「言えない」という空気があったり。「おかしいんじゃないか」と思うことがいろいろあるので、毎週のようにレポートを書いて柳井さんにFAXしていたら、ある日、柳井さんから「現場にそういう負担をかけているのは本部のせいだから、今日から経営企画部長になってくれ」と。それで本部に戻って改革をしていきました。
 本部に戻って2カ月後に商品本部長になり、その2カ月後には取締役、その翌年には副社長兼営業本部長に就任して、5年間、柳井さんとガチンコで仕事をさせていただきましたが、本当に大きな経験でした。学んだことはたくさんありますが、ひとつは現実、現場を知ることの重要性です。なぜ同じ商品なのに売れている店と売れていない店があるのかなど、店舗に行かないとわからなかったことがたくさんありました。
 また、ツボの重要性です。私が入って1年半は既存店の売上が全く上がらなかったのが、原宿のフリースキャンペーンをやって一気に全部変わりました。東京都心にまだ1店舗もなかった当時、原宿に新店舗をオープンする。どうやったら都心のクールな若者にユニクロを伝えられるんだと任されて、「フリースに自信あり」というポスターをつくり、電車ジャック、バスラッピングもやって、ユニクロのフリースで原宿を埋め尽くしたんです。
 そうしたら爆発しました。既存店の売り上げが200%ずつ上がる驚異的な成長をして、400億だった売上高が2年で一気に1000億まで行きました。爆発によって会社は変わります。課題も、それまでは在庫の消化だったのが、今度は追加の生産体制をどうつくるか。課題の解決だけじゃ会社は変わらない、課題を変えることが大事な仕事なんだなと学びました。
 結局、4年間で売上高は400億円から4000億円に、利益は20億円から1040億円に伸び、株価も上がって、時価総額は200億円から1.3兆円になりました。ご存じのように現在は5兆円強です。すごいことだと思います。

企業再生ファンドを立ち上げ、苦闘する日々の中で進むべき道を見出す

経営再生の現場と自らの経営から得た学び
 5年目にユニクロを退社し、立ち上げたのが、企業再生ファンドの株式会社キアコンです。当時、アメリカで活発化していた流通業の再編統合が日本でも起こるといわれていて、小売流通業に特化した企業再生ビジネスに大きな可能性を感じました。
 一番大きな経験だったのは、そのころ、産業再生機構によるダイエー経営再建のスポンサー募集があり、こんな面白いチャレンジはないと立候補したことです。
 ただ、私自身は純粋にダイエーをよくしたいと思って、昼は店舗に行きヒアリングをして、プランを練り、ダイエーのみなさんにこうすればよくなると話すんですが、夜はファンド会社の人たちと連日デューデリジェンスで、ひたすら利益追求の観点から厳しく言われる。ファンドビジネスですから当たり前ですが、自分は何をやっているのかわからなくなりました。
 最後の3社に残り、敗れましたが、その中でもがきながら、自分がやりたいことはお金ではなく純粋に企業再建に向き合うビジネスだと見出し、ファンドと決別して株式会社リヴァンプを創業しました。
 ミッションとして掲げたのは、とにかく企業を芯から元気にすること、これまでの経験を活かして企業再生に挑戦しながら経営者として成長していくこと、その結果として大きく社会に貢献しようということです。リヴァンプに集結した人材がいろいろな会社にチームとして派遣され、そこで格闘して成長し、経験や知恵を得て帰ってくる。そんな「経営者プラットフォーム構想」を実現していけたらいいなと考えました。

ロッテリアの経営改革を支援。現場を巻き込み、新商品が空前のヒット

経営再生の現場と自らの経営から得た学び
リヴァンプで経営改革のお手伝いをさせていただいた会社のひとつが、ロッテリアです。どういうアプローチで進めていったかというと、まず、「社内の活性化」。お客様、そして現場で働いているアルバイト、パートの方々へのヒアリングを行い、経営陣が自らお話を聞くことからスタートしました。そうやって自分たちの現状を認識し、組織の壁を壊しながら課題解決を進めると同時に、店舗で働いている人たちに焦点を当てた構造改革をしようと、現場主役体制をつくっていきました。
 業務改革とコスト削減の結果が出てきて利益が上がり、社内が回り始めたら、いよいよ次のステップは「成長への挑戦」です。ユニクロで経営改革をして、いろんな課題を解決しながらフリースで爆発させていったように、ロッテリアでも新商品を投入して爆発させようと考えました。そこで、市場性とインパクトある商品を模索してつくったのが「絶品チーズバーガー」です。
 次に考えたのは、この商品を全社員を巻き込んで売っていこうということ。全国で試食会などを開き、スタッフの友人や家族を店舗に招いて発売前に試食していただいたり、店舗周辺の地域でも商品を配付したり。その中で店長さんたちが「売るぞ」と盛り上がってくれました。さらにメディアも巻き込みました。ロッテリアが面白いことをやっているといろんな方がテレビで取り上げてくれて、結果は大爆発です。絶品チーズバーガーは100万食売れに売れて、本当に大ヒット商品になりました。

100億円企業を100社つくり、多くの雇用を創出して社会に貢献したい

経営再生の現場と自らの経営から得た学び
私はこれまで数限りなく失敗をしてきました。いまでも失敗していますが、そうならないように、仕事をする上で大事にしていることがいくつかあります。そのひとつは、いろいろな会社でいろいろな仕事をしていて、どうやったらうまく回るんだというとき、自分のやっていることが本当にお客様の満足につながっているかを考えることです。
 キャッシュフローも大事です。私は会社を2つつぶしました。在庫がキャッシュに変わらない恐怖を味わいました。会社は本当に一瞬でつぶれます。そして、リーダーが未来をつくるということ。会社、組織は99.9%リーダー次第です。ただし、計画をつくって実行するんですが、計画なんて5%くらいで、あとは実行あるのみ。95%は実行にかかっています。そうして、出てきた結果に対しては謙虚に受け止め、さらなる高みをめざしてチャレンジする。1人でやれることの限界を理解して、全社員を巻き込んで経営していく。そんなことを大事にしてやっているつもりです。
 リヴァンプの夢は100億円企業を100社つくることです。100人の社長を生み、グループ売上1兆円。そして多くの雇用を創出する。これが私たちのゴールだとみんなに言って仕事をしています。クリスピー・クリーム・ドーナツといった飲食や、アパレル、カプセルホテル、教育、広告など幅広い業種で25社つくっていますが、唯一、ミネラルウォーター宅配事業のウォーターダイレクトという会社は売上100億円を突破し、マザーズに上場しました。
 最後に、私の心に刻まれている2人の経営者の言葉をご紹介します。ひとつはユニクロの柳井さんがおっしゃった、「企業は3倍売上が変わるごとに組織をぶっ壊して新しく生まれ変わる必要がある」。私が一緒に経営をさせていただいたときは、ちょうど300億から1000億に成長する途中でもがき苦しみ、一気に組織をぶっ壊して成長したように思います。また、スターバックスのCEO、ハワード・シュルツさんと食事をしたときにお聞きした言葉も衝撃的でした。「素晴らしいリーダーの最も重要な仕事は、自分より優秀な人間を採用し、その人たちが幸せに働ける環境をつくり続けること」。これをベースにして、今後も頑張って仕事をしていきたいと思っています。
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