DX人材
企業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を用いてビジネスモデルや市場に変革をもたらすことを指す。現在、国内企業の多くが事業規模にかかわらずDXの実現を望んでいる。新型コロナウイルスに対応する新たなビジネスの形が求められる中で、DXによってビジネスモデルの変革を実現し、経営改革につなげたい企業もあるだろう。企業がDXを実現するために、欠かせないのが「DX人材」だ。DX人材の需要は増すばかりだが、不足している現状がある。多くの企業が求める「DX人材」とは何か、DX人材と呼ばれる職種や必要なスキルについて解説する。

「DX人材」とは何か

「DX人材」とは、データを用いてビジネスモデルそのものを変革に導く人材を指す。DXには、大きく分けて「外向き」と「内向き」の2種類がある。

外向きのDXは、自社だけでなく市場そのものまで変革させるようなDXのことだ。例えば、レンタルビデオ店がサブスプリクション型の動画配信サービスに事業を切り替えるといったものが外部向きのDXといえる。

内向きのDXは社内を対象にしたもので、データやデジタルツールを用いて業務の効率化を実現することを指す。パッケージ型の会計ソフトをクラウド型の会計システムに変更し、経費精算や入金消込作業にかかるタスクを大幅に削減するといったものがこちらにあたる。

●「DX人材」が注目されている背景

「DX人材」が注目されている背景には、新たなビジネスチャンスを創出したい企業や、デジタル技術を用いた業務効率化の必要性を感じている企業が多いことが挙げられる。経済産業省が2018年に公表した「DXレポート」でも、「DXが行われなかった場合、2025年までに発生する経済損失は最大で12兆円/年に上る可能性がある」という提言があり、話題となった。

これまで使われていた技術はすでに過去のものとなりつつある。過去に構築された複雑なシステムを扱える人材がいなくなる未来も近い。企業は新たな技術を用いDXを実現して、将来かかる可能性が高い莫大なコストを削減し、新規ビジネスの創出による利益拡大を目指す必要があるのだ。

最近では、新型コロナウイルスの影響によってDXに着手しはじめた企業も少なくない。オフィスの解体、リモートワーク化を皮切りとして内向きのDXに取り組む企業もあるだろう。コロナ禍を新たなビジネスの機会ととらえて、市場にインパクトを与えられるビジネスの創出を狙う企業もある。

これらの企業が今何よりも求めているのが、「DX人材」だ。特にビジネスモデルの変革まで実現するDXを目指す場合、デジタルに関する知識とノウハウを持つ人材が社内にいない状態では話が進まないからだ。

DXを推進する6つの職種

では、「DX人材」とは具体的にどのような職種を指すのだろうか。具体的に見ていこう。

●プロデューサー

DXの実現を主導するリーダー格の人材がプロデューサーだ。顧客やパートナー、業務に当たるメンバーと良好な関係を構築・維持しながらイノベーションの創出と実現の舵取りを行う。

プロデューサーは、多くの人とかかわりながら業務を行うことから、高いコミュニケーションスキルとマネジメント力が求められる。意思決定を行う場面も多く、胆力も必要だ。内外の環境を把握しながら、ビジネスを実現するための潤滑油として活躍するのがプロデューサーなのだ。

●ビジネスデザイナー

ビジネスデザイナーは、DXの企画立案、および推進を行う職種だ。市場や顧客のニーズを把握し、くみ取り、新たな商品やサービスの企画を提案する。自分だけでなく、時にはチームメンバーや社外パートナー、パートナー企業と企画づくりを行う場面もある。

ビジネスデザイナーには、アイデア力とそれを企画として形にする力、プレゼンのスキル等が求められる。

●アーキテクト

DXを実現するためのシステムを設計するのがアーキテクトだ。アーキテクトはDXに不可欠なソリューションを設計し、さらにそれを標準化し再利用できるようにする部分まで求められる。

●データサイエンティスト、AIエンジニア

データサイエンティストまたはAIエンジニアは、デジタル技術やデータ解析に精通した人材のことだ。データサイエンティストは、各種システムが収集したビッグデータから、ビジネスに活用できる知見を引き出すことを役割とする。

AIが収集するビッグデータを扱うことから、AIに関する知見やスキルも必要とされる。AIが行う機械学習システムへの理解、統計学等の数学的知識、コンサルティング能力まで求められることが多い。

●UX、UIデザイナー

UX・UIデザイナーは、システムのデザインを担当する人材のことだ。UXとUIそれぞれ業務の詳細は異なるが、「ユーザーのためのデザイン」という点で共通している。

UX(ユーザーエクスペリエンス)デザイナーは、ユーザーの体験を高めることを目的として、使用時に楽しさや心地よさを感じられるデザインを行う。UI(ユーザーインターフェイス)デザイナーは、ユーザーが製品やサービスを円滑に利用できるよう、見やすいカラーリングやわかりやすい構図を意識してシステムをデザインする。どちらの職種にもデザインスキルが必要だ。

●エンジニア、プログラマ

エンジニアやプログラマは、システムの構築と実装を担う職種だ。プログラミングに関するさまざまな知識とスキルを持つスペシャリストといえるだろう。職人的な職種で、エンジニアやプログラマを求める企業は多い。

「DX人材」にはどのようなスキルが求められるのか

「DX人材」には、職種にかかわらず次の知識やスキルが求められている。

●ITに関わる基本的な知識

DXはデジタルを用いるものであるため、どの職種においても最低限のIT知識が必要になる。具体的には、Webやアプリケーションの基礎知識や仕組みへの理解、新たな技術に関する知識が必要になる。

常に最先端の技術を理解し取り入れていかなければならないため、ITリテラシーと応用力は必要不可欠なスキルといえる。

●先進技術の知見

AIやIoTなどの先進技術に関する知見も必須となる。DXは、何らかのシステムを作りリリースして終了するものではない。イノベーションを起こすためには、これまでに得たノウハウと先進技術を組み合わせて「これまでにないもの」を創造する必要がある。会社のビジネスに変革をもたらし続けるためには、常に最新の技術に関する知識が必要だ。

●データの取り扱い、活用の仕方

データの取り扱い方や活用の方法について、データサイエンティストに任せっぱなしにすることはできない。例えば、データの活用方法を知らないプロデューサーでは、データサイエンティストが作成した資料を読み取ることができないだろう。近年では、データサイエンスを専攻する学部や学科を設ける大学も増えている。

●UIやUXに関する知識・スキル

DXは会社の利益を拡大することだけを目的として行うものではない。顧客に提供する価値を、デジタル技術をもって最大化し、その結果として利益を生むのがDXなのだ。よって、各種ソリューションには顧客価値を高めるUIやUXが必須となる。

ユーザーが使いやすく、興味を持って楽しめる仕組みをどう作るのかを考えるにあたり、UIやUXに対する知識とスキルは不可欠なものである。長期間利用してもらえる商品やサービスを生むために、また商品やサービスを生むまでの過程で議論を深められるように、職種にかかわらずUI・UXに対する知識を持っておく必要がある。

●プロジェクトマネジメント

「DX人材」には、新たなサービスを開発するための予算や納期、必要な人材の管理、内外とのコミュニケーションを取りながらプロジェクトを進めていくスキルも求められる。

DXの実現には、会社の課題を把握・理解し、それをどうやってデジタルで解決していくのかを検討する工程が必要だ。そのため、DX人材には担当する部署だけでなく、広い視野を持って社内のさまざまな人材を巻き込みプロジェクトを推進する、プロジェクトマネジメントスキルが求められる。

「DX人材」に必要な4つのマインドセット

企業のDXを推進し実現するためには、次の4つのマインドセットが必要とされている。

(1)チャレンジ精神を持つ

これまでにないものを生み出すのがDXだ。DXの実現に向けての取り組みすべてが新たな挑戦であり、時には誰も経験したことがない部分に足を踏み入れることがある。このような時、しり込みするのではなく「挑戦したい」と思えるマインドを持てる人材はDXに適した人材といえるだろう。新たな着想を得た時に、行動につなげるチャレンジ精神が必要なのだ。

(2)課題を設定する

DX実現までの過程で、まず行われるのが課題の可視化だ。ユーザーの立場に立って、会社やサービスの課題を発見する力が必要になる。

例えば、会社にとっては当たり前のことでも、ユーザーからすると「もっと便利にならないものか」と感じているサービスやシステムは多々ある。現状で満足するのではなく、よりよいサービスを作るためにどうしたらよいのかを考え、課題を探すマインドが重要になる。

(3)周囲を巻き込んでいく

自社のビジネスにかかわるユーザーを含むステークホルダーを、巻き込んでいくマインドも必要だ。何でも自分で解決しようとせず、他人の意見を聞いて尊重し、多様な考え方を調整する。そんなコミュニケーションが求められるだろう。

(4)絶えず探求する

「DX人材」には探求心も必要だ。「なぜ今のビジネスの形になったのか」「時代に求められているものはなにか」「自社の顧客の声は」「自社が望む未来は」など、さまざまな要素それぞれを深堀りしないことにはDX実現に向けた道筋も見えてこないだろう。

よりよいサービスを生むためには、プロジェクトを推進している最中でも、なぜこの事業に取り組むのか、このシステムで本当にDXを実現できるのかを常に自分やメンバーに問い続ける必要がある。
DXをうまく推進することで、社内の業務効率化や新規事業の創出を実現することができる。そのキーマンとなるのが「DX人材」だ。採用や配置を本格的に進めていく前に、いま一度本記事で紹介したDX人材に必要なスキルやマインドセットを整理してみてはいかがだろうか。
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