冬の賞与が減額、あるいは支給されないという会社員の方々も今年はいるのではないでしょうか。そして今までと違うのは「次回もどうなるのかわからない」ということです。賞与の支給額を業績連動で決める会社も多いと思いますが、その業績見通しが新型コロナウイルスの状況に依存せざるを得ない会社や業界が多く、経営陣や総務人事の方達もどのように給与や賞与の予算を今後立てつけるべきか悩みどころでしょう。また雇われている社員の方達も、「賞与がこのまま元に戻らないのなら、今の会社にいてもいいのだろうか」と年末年始の期間に考える方もいると思います。
社内副業制度は、生産性やコスト面で企業側にも効果あり

社員に不信感を与えないために、お金の話はすぐ明確に回答する

「人はお金だけで生きるのではない」と私も思います。ただ、「考えるきっかけ」というのは多くの場合、私はお金、特に給与が減額された場合ではないかと思います。その証拠に、多くの人は給料が定性昇給で3,000円増えたとしても、総務人事に問い合わせる人はまずいないでしょう。しかし3,000円減額となった場合には違います。「なぜ減額をしたのか」、「どういう試算で3,000円なのか」、「役員ももちろん減額しているんだよね」などと総務人事に聞くはずです。

以前、知人が年末調整の業務をしていた時の話です。多くの社員の場合、12月の給与で源泉所得税を調整した結果、還付になることが多いのですが、社員数十人のうち、数人だけは転職による年俸の変動など諸事情で還付されずに、通常通りの天引きになったそうです。12月の給与明細を配布した後、年末調整について数人が質問に来たそうなのですが、その数人というのは、全員、還付がなかった人達で、質問の内容も「この金額で合っていますか」、「普通は還付されるんじゃないですか」という質問だったそうです。「年俸の変動などでそういったこともあるんですよ」とお話して皆さん納得されたそうですが、その話を聞いて私は「やっぱり人間って、お金なんだなあ」と思いました。

私も給与計算を担当したことがある時、社員の人達から「この残業代の端数は、切り上げですか、切り捨てですか、四捨五入ですか」と聞かれたことが何回もあります。「上がる」ということに対して人は鈍感ですが、「下がる」ときには、人は敏感になります。金額はもちろんのこと、計算根拠や端数処理方法なども、もし質問があったらすぐ理由を答えられる準備をするくらいでもやり過ぎではないと思います。お金のことで明確に会社側がすぐ答えられないと、雇用されるほうは不信感を抱き、その話をすぐ他の社員にもしてしまうからです。特に今後、賞与や給与などを減額したり、手当などを廃止したりせざるを得ない会社も増えてくると思いますが、減額、廃止などの「受け取るお金が1円でも減る」という場合には、社員から数多くの質問がきます。社員に不要な不安や不信感を広げないために、今一度、社内の給与や賞与に関する規程や計算根拠などはあいまいな点がないかを事前に確認しておいたほうが良いと思います。

社員と企業にWin-Winをもたらす社内副業

このような状況下で社員の人達の中には、今の状況を危惧して転職や副業などを考える人達もいることでしょう。ただ、転職に関しては転職先でうまくやっていけるかどうかというリスクもあります。かといって副業に関しては、やはり経営者の立場からすると「他の会社に使うエネルギーがあるのならうちの会社で使って欲しい」というのが本音でしょう。

そこで、これからの時代に両者の課題を解決する手段として「社内副業制度」という概念を私は提案しています。どのような職種でも繁忙期とそうでない時期があると思います。例えば、総務人事であれば新卒採用業務を社内で手伝ってくれる人を公募し、働いてもらった分を手当として支給します。経理であれば経費精算の精査を公募してもいいかもしれません。内部統制や個人情報などの漏洩にも配慮しながら、繁忙期にその部が残業していた作業を社内公募して「社内副業」としてまかなうのです。

特に今年は残業代が減った方も多いと思います。社員の中で「もう少し稼ぎたい」という人は社内副業制度に応募して収入を増やすことができますし、手伝ってもらえる人は反対に残業時間が減り、早く帰れます。また経営者も社内副業であれば不満はないでしょう。むしろ部をまたいで社員が協力をして作業をしてくれることは嬉しいはず。

社内で起こる繁忙期の各部署の仕事、新しい仕事、突発的な仕事に、効率良く時間の空いている社員を社内公募して配置することで、限られた人材でより多くの作業がまかなえる生産性の高い組織になるのではないかと思います。会社側は今まで繁忙期や臨時作業、新規事業のために人を雇っていた給与分を、手当分程度でコストを節約することができます。そして社員自身も、こっそり慣れない生産性の低い副業をするよりも、お互い顔を知っているメンバーの元で堂々と副業が出来、手当がもらえるほうが有難いはずです。

いま厳しい環境下ではありますが、このような時だからこそ思い切った施策もできるはずです。皆さんもこれまでの常識や慣例にとらわれない斬新な施策や働き方を考えてみてはいかがでしょうか。
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