部分最適から全体最適へと向かう、これからの時代の組織マネジメント

成果を上げる組織づくりのプロが語る
————組織の中で考えると、そのサイクルに沿って事業が流れて、お互いを活かし合う形で業務が進むようにすればいいわけですね。

星山
:例えば、チームの中にいつも動き回って新しいことを考えていたい木の人ばかりいて、どっしり構えて実務をきちんとこなす土のエレメントの人が1人もいない場合、せっかくのアイデアが活かされず、納品や在庫管理で頻繁に問題が起きるといったことにもなりがちです。

————最近、海外ではインテル、グーグルといった大手IT企業が瞑想で意識をクリアな状態にするマインドフルネスを取り入れていますが、西洋の先進企業が東洋的なものに目を向けているというのは、何か背景があるのでしょうか。

星山
:高度成長期からこれまでは、部分最適ということが非常に重要視されてきたと思います。自社が勝ち残ればそれでよいといった考え方ですが、それだけではうまく行かない時代になり、全体最適へというパラダイムシフトが起きて、社会性、公益性を含め、もっと広い範囲で勝つ、結果を得るといったことが重要になってきていると感じます。企業が全体最適を考える際のツールとして、東洋の包括的なものの見方や考え方が注目されてきたのではないでしょうか。

————西洋、日本を問わず、今後の企業のあり方、マネジメントのあり方が全体最適の方に向かっていくよう求められているのかもしれません。組織改革においても、表面的、部分的に問題を捉えた場合、手を打っても成果が出にくい場合があります。根本的な問題を捉え、組織が全体として自然にうまく回り出すようにするというタレントフォーカスには、今の時代のアプローチとしての可能性を感じます。

組織が生まれ変わり、半年、1年で劇的に業績が改善

————組織課題を解決した企業の事例を教えていただけますか。

星山
:中堅人材サービス会社のお客様のケースですが、ある分野のサービスがNo.1に成長したものの、それ以外のサービスが育っていない、ほかの事業部を強化して全体の業績を上げたいとのご要望でした。そこで、職場に入らせていただいて、まず社員の方々のエレメントの特定を行い、結果をもとにマネージャーと私が一緒に課員と面談し、このチームではどの業務を誰が担うのが一番よいかというベストフォーメーションを各課ごとに再構築しました。マネージャーは自分の課員のエレメントを頭に入れているから、仕事の振り方を間違えない、課員の方々も自分とほかの人のエレメントを理解し、動き方がわかってきたという中で、業績が一気に上がり、半年で経常利益が約280%増えました。新サービスも立ち上げて、最初の四半期で黒字化に成功され、その後も社員数を倍増して業容を拡大されています。
また、エンタテイメント業界のあるお客様の場合、ご相談をいただいた当時、数億円規模の累損を抱え、大規模なリストラもやむなしという厳しい状況でした。それが、全員のフォーメーションを見て、業務の組み替え、人事異動を行い、社内の組織を刷新したところ、全部門の数字が一気に立ち上がり、1年後には累損が数億円減りました。リストラも実施せずに済み、それ以降も高業績を上げています。

————驚くべき成果ですね。

星山
:ほかにも、外資系生命保険会社のお客様からご相談いただいた事例があります。新規の保険商品を開発するにあたって保険のプロを中途採用しますが、手を動かす人がいないため、新卒人材を採用したい、でも新卒採用の経験がないとのことでした。そこで、この新規事業のマネージャーとなり得る方全員に面談させていただき、エレメントを特定して、その方々と相性が良く、育てて芽が出やすい関係のエレメントの人を、応募してきた学生の中から選び出しました。ミスマッチのない採用ができたため、配置後に人が辞めてしまうことがなく、新規事業は2年間脱落者なしで走っているとお聞きしています。

————経営が考えるビジネスの実現に人事が貢献するためには、組織課題の分析に終わらず、その課題を改善するプロセスが明確になるツールやメソッドが必要だと思います。そのときに、タレントフォーカスはきわめて実効的な手法のひとつだと感じました。今日はありがとうございました。

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